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革職人のおじさん転生したらドワーフだったので最高の武具を作ります。  作者: 爆裂超新星ドリル


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予想外の問題

翌日、依頼主のゴブリン――名前はグリムという若い戦士――が工房を訪れた。

「できたか?」

「ああ、できたぞ」

コウジは完成した革鎧を見せた。

グリムは鎧を手に取り、じっくりと確認した。

「……おお、いいな。軽いし、動きやすそうだ」

「試着してみてくれ」

「おう」

グリムは鎧を装着した――

「……あれ?」

だが、表情が曇った。

「どうした?」

「いや、その……ちょっと、きついかも」

「きつい?」

コウジは驚いた。

設計図通りに作ったはずだ。

「ちょっと待て、確認させてくれ」

コウジはグリムの体を確認した。

「……あ」

問題がわかった。

グリムの体型が、コウジの想定より少し大きかったのだ。

「すまない、俺の計測ミスだ」

「いや、いいって。でも……これじゃ着られないな」

グリムは困った顔をした。

「作り直しになるのか?」

「……」

コウジは悩んだ。

作り直すには、時間がかかる。それに、素材も無駄になる。

「師匠……」

シルフィが小さく手を挙げた。

「もしかして……調整できませんか?」

「調整?」

「はい。この部分に、革の帯を足せば……サイズを調整できるかもしれません」

シルフィは鎧の脇部分を指差した。

「なるほど……!」

コウジは気づいた。

完全に作り直す必要はない。部分的に調整すればいい。

「グリム、一時間待ってくれるか?」

「おう、構わないぜ」

コウジとシルフィは、急いで調整作業を始めた。

革の帯を作り、鎧の脇部分に縫い付ける。

「よし、これで……」

一時間後、調整が完了した。

「試してみてくれ」

グリムが再び装着すると――

「おお!今度はぴったりだ!」

「良かった……」

コウジは安堵した。

「ありがとうな、コウジ。それと……」

グリムはシルフィを見た。

「お前も、ありがとう。いいアイデアだったぜ」

「え……あ、ありがとうございます……!」

シルフィは顔を赤らめた。

「じゃあ、代金だが……」

「ああ、銀貨十五枚で」

「了解。これ、大事に使わせてもらうぜ」

グリムは満足そうに工房を出ていった。

二人きりになった工房で、コウジはシルフィに言った。

「シルフィ、ありがとう」

「え……?」

「お前のおかげで、失敗を取り戻せた」

コウジは頭を下げた。

「俺の計測ミスだったのに……」

「いえ、そんな……!」

シルフィは慌てた。

「私、ただ思いついたことを言っただけで……」

「それが大事なんだ」

コウジは顔を上げた。

「失敗した時、どう対処するか。それが職人の腕の見せ所だ」

「師匠……」

「お前は、いい職人になれるぞ」

「……はい!」

シルフィは涙を浮かべながら、力強く頷いた。



それから、万族工房の日常が変わった。

朝、コウジとシルフィが工房を開ける。

「おはようございます、師匠」

「おう、おはよう」

二人で掃除をして、道具を準備する。

そして、依頼品の製作を始める。

「師匠、この革の裁断、これで合ってますか?」

「ああ、完璧だ」

「次は縫製ですね」

「頼んだぞ」

以前は一人で全てやっていたが、今は二人。

作業効率は格段に上がった。

「一人でやってた時の二倍は早いな」

「私、役に立ててますか……?」

「当たり前だろ。お前がいなきゃ、こんなに早く終わらない」

シルフィは嬉しそうに笑った。

昼休みには、二人で簡単な食事を取る。

「師匠、これどうぞ」

「おお、何だこれ?」

「私が作ったサンドイッチです」

「うまいな」

「本当ですか!?良かった……」

夕方、依頼品が完成する。

「よし、今日の分は終わりだ」

「お疲れ様です、師匠」

「お前もお疲れ」

工房を片付けて、明日の準備をする。

「じゃあ、また明日な」

「はい、また明日!」

シルフィが帰った後、コウジは一人工房に残る。

「……変わったな」

前は一人だった。

孤独で、寂しかった。

だが、今は違う。

弟子がいる。

一緒に働く仲間がいる。

「悪くないな、この生活」

コウジは満足そうに微笑んだ。



一ヶ月後、万族工房は順調に稼働していた。

依頼リストは相変わらず長いが、シルフィの助けで少しずつ消化できている。

「師匠、次の依頼は……ケンタウロスの騎士ですね」

「ああ、四足用の鎧か。これは難しいぞ」

「でも、やってみましょう!」

シルフィは前向きだった。

「そうだな。一緒なら、できる」

コウジは設計図を描き始めた。

その時、工房の扉がノックされた。

「失礼します」

入ってきたのは、若いドワーフだった。

赤毛で、筋肉質な体格。真面目そうな顔つき。

「初めまして。ボルドと申します」

「ボルド……?ああ、針を作ってくれた……」

「はい。それで、その……」

ボルドは少し緊張した様子で言った。

「俺も、弟子にしてもらえませんか?」

「え?」

コウジは驚いた。

「俺、鍛冶師なんですが……革と金属を組み合わせた装備とか、作ってみたくて」

「革と金属……」

「お願いします!」

ボルドは頭を下げた。

コウジはシルフィを見た。

シルフィは嬉しそうに頷いた。

「……わかった。試用期間として、まず一週間働いてみてくれ」

「本当ですか!ありがとうございます!」

ボルドは嬉しそうに笑った。

「これで、三人か……」

コウジは不思議な気持ちになった。

一人で始めた工房が、今では三人。

「これから、どうなるんだろうな」

コウジは窓の外を見た。

夕日が、山の向こうに沈んでいく。

新しい仲間。

新しい挑戦。

万族工房の物語は、まだ始まったばかりだった。


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