第24話 3人目の獲物①
俺は斉藤と学食にいた。
っていうか、珠凛、花鈴と夏美と沙也加もいる。沙也加は何故か俺の横にいるので、夏美と険悪にはなっていない。むしろ、珠凛といがみあっている。
今回のことで、珠凛も山口に認識されてしまった。リスク回避のために、櫻狼ファイブでのスパイ活動は終わりにさせるつもりだ。
夏美と沙也加は、2人とも思うところは有るのだろうが、夏美も沙也加にリベンジすることは望んでいないらしい。今の沙也加は、クラスで辛い立場だが、夏美にリベンジする気がないのなら、次第にその立場も改善されていくのだろう。
それにしても……リベンジしてるうちに、なんだか賑やかになったもんだ。
ウチの高校は、学食を居酒屋を営む会社にアウトソーシングしてるらしく、メニューが豊富だ。学食なのにバターコーンや、だし巻き玉子なんてのもある。
俺はスペシャルランチを頬張りながら言った。
「この前、斉藤が沙也加の仲裁に入ってくれて助かったよ。でも、よく分かったな」
「蒼空から作戦の話を聞いてたからな。それに珠凛と山口が歩いてるのを見かけて、イヤな予感がしてさ」
山口か。
アイツは何を考えてるか分からない。
特に恨まれる覚えもないんだが……。
「山口って、なんなの? おれ、嫌がらせされる覚えはないんだが」
斉藤は腕を組んだ。
「実はさ。蒼空の写真の件、山口の発案なんだよ」
「え、お前が珠凛に提案したんじゃないの?」
「そうなんだけど。細かく計画したのは山口だな」
なるほど。
たしかに、斉藤が計画したことには違和感があったのだ。斉藤は細かいことは得意じゃない。
「でも、なんで? 俺、山口に恨まれる心当たりないんだが」
「……分からんけど、嫉妬じゃないか?」
「嫉妬? ブタとか言われてた俺に?」
「俺もそうだったから分かるんだよ。お前が颯に意識されてるのが気に入らないんだろ」
斉藤の話では、俺を嵌めた時の具体的な指示は、山口がやったということだった。
斉藤は言葉を続けた。
「それとさ、実は」
「ん?」
「陽葵のことも写真を撮ったりっていう具体的な計画をたてたのは、山口なんだよ。そしたら颯も乗り気になってさ」
初耳だ。
どういうことだ?
「どういうこと?」
「実はさ。最初はお前のことをダシに使って、陽葵を呼び出したんだよ」
えっ……。
おれは陽葵が颯に一目惚れして付き合ったのかと思ってた。実は違うのか?
そこで話されたのは、思いもよらないことだった。颯は俺のことで相談があると言って陽葵を呼び出し、なかば強引に関係をもったらしい。
おれに嫌がらせをする為の駒にしたかったのだろう。そんなくだらないことのために陽葵は……。
バキッ
「おい。蒼空。大丈夫か? 箸……」
俺は無意識に持っていた箸をへし折っていた。
俺は勘違いしていた。
陽葵のことは、最初から仕組まれていたのだ。
スタートは陽葵の恋慕なのかと思っていた。
しかし違った。俺に嫌がらせをするために山口がたてた計画。陽葵は、その被害者だったのだ。
俺は、自分のはらわたが煮え繰り返るのを感じていた。
「山口 涼。……次のターゲットはお前だ」