第22話 2人目の獲物⑭
俺は、すぐにデータを自分のスマホに移動させた。
移動させた動画を見てみると、修正前で顔が映り込んでいるものもある。この子のプライバシー意識はどうなってるんだろう。
ん?
動画の下着、どこかで見た事が……。
カバンで見つけた下着じゃん!!
え?
この風景。どこかで見た事が……。
これ、うちの学校の女子トイレだ。
マジか……。
この人、学校のトイレで自慰行為に耽ってるよ。
「ひゃはは」
(これはとんだ拾い物だ。攻撃力は最強クラスのファイナルウェポン。むしろ、今回の騒動は、これ一発で終わりにできるのでは……ま、沙也加の人生も終わりそうだけど)
俺が笑っていると、視線を感じた。
振り返ると、珠凛がジト目で見ていた。
「蒼空くんっ」
「その動画……沙也加?」
「べ、別に……」
「蒼空くん!! パンツを脱いでそこに正座しなさいっ」
「は、はい……」
「座ったら、スマホの画面を自分に向けて肩の高さに構える!!」
「はい……」
な、何が起こるんだろう。
「さっきの動画を再生するっ!!」
沙也加の自慰動画を再生すると、珠凛は屈んでジーッと俺の下半身を凝視した。
10秒ほどすると、珠凛は声を上げた。
「蒼空くんのが膨らんだ!! この浮気者ぉぉ!!」
理不尽だ……。
年頃男子がクラスメイトのそんな動画みたら、普通、そうなるだろ。
「もう、お仕置きっ!!」
そういうと、珠凛は俺に跨りキスしてきた。
「なんかちょっと嫉妬で……興奮するかも……」
珠凛はそんなことを言いつつ、その後は大盛り上がりだった。
それにしても、こんなデータが入ったスマホをなくしたら生きた心地がしないよな。沙也加は、きっと今頃、必死になって探しているはずだ。
そして、出てこなければ、きっと、この前の仕返しに夏美が隠したと思うだろう。スマホを1秒でも早く回収したいはずだ。沙也加からのアクションがあるとしたら、明日の昼休み以降かと思っていたけれど……、もっと早いかも知れない。
……。
次の日、俺は朝から警戒していた。だが、2時間目が終わっても動きがなかった。3時間目は体育の授業だ。体育は男女に分かれて別々の場所で行う。
(ま、珠凛も花鈴も一緒だし、問題はないだろう)
体育の授業が終わり廊下で水を飲んでいると、足早に歩く山口と珠凛に遭遇した。珠凛は顔色が悪い。珠凛は俺の顔を見ると、目をまん丸にした。
「え。蒼空くん? ケガしたんじゃ……」
その様子を見ていた山口はニヤニヤして言った。
「あぁ、ごめーん。俺の勘違いだった」
「珠凛。どうしてここに?」
「いや、山口が来て、蒼空くんがケガをして運ばれたって。家の人に連絡とれないから、保健室まで来てくれって言われて……」
「おい。山口。これはどういうことだ?」
すると、山口は居なくなっていた。
(……やられた。珠凛を夏美から引き離された)
夏美が危険だ。