表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】転生モブ王女はナレ死の未来を回避したい! ~破滅フラグを折りまくっていたら、いつの間にか愛され王女になっていました~  作者: ミズメ
第二部 ナレ死は絶対お断り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/81

31 十八歳の誕生日④

区切る関係で短めです


 夜の離宮は、先ほどまでの賑わいが嘘のように静かだ。


 石畳を踏む音が小さく響き、ドレスの裾がかすかに揺れる。その一つ一つが現実の感触のはずなのに、どこか夢の続きを歩いているような心地がする。


(まだ、ふわふわするわ)


 頭が、まだ落ち着いていない。

 本当に、色々ありすぎたんだもの。

 ぐんと冷たくなった夜風が頬を撫で、それでも寒さを感じない。

 夜会の光景が、何度も脳裏に浮かぶ。お父様の言葉で、東部での功績が語られたこと。


(それに……まさかキース様が侯爵家の当主になっただなんて⁉︎)


 当主の身体の不調という理由で、代理を務めていたキース様がヴィンターハルター家の当主となると告げられた瞬間、広間にとんでもないざわめきが巻き起こった。


 原作で知っている展開とは、あまりにも違っていた。

 キース様はもっと影の立場にいて、危うい存在だったはずなのに。今夜の彼は、多くの視線を集めて当然のように祝福されていた。


 ルーク兄様とも微笑みあっていたし、エーファ様も幸せそうにしていた。みんなが光に包まれていて、本当に夢のような光景だった。


『リリーベル様。お手を』


 その流れでキース様から差し出された手を、わたしは迷いなく取った。

 音楽に導かれて踊った時間は、あまりにも自然で、気づけば緊張も忘れていた。

 視線が合うたびに胸が騒ぎ、距離が近づくたびに心臓の音がうるさくなる。それでも、不安よりも安心の方が大きかった。


 夜会が終わり、離宮まで送ってくれたのもキース様だった。

 夜風の中で交わした言葉はどれも静かで、落ち着いていて、それなのに不思議と心に残る。


『あなたが笑っていると、安心します』


 思い出すだけで、頬が熱くなる。


(……どうして、こんなふうに言われると落ち着かなくなるのかしら)


 別れ際に向けられた微笑みは、いつもより柔らかく見えた。その余韻を振り払うように、わたしはひとりで庭を歩き、泉のほとりへ向かった。

 月明かりを映した水面は穏やかで、波一つ立っていない。

 そっと手を伸ばすと、冷たい水が指先に触れ、思わず小さく息を吐いた。


「本当は、わかっているんだけどね……」


 自分に言い聞かせるように呟き、もう一度水面を見る。

 そこに映る顔は、少しだけ大人びて見えた。


 十八歳の誕生日には、何か取り返しのつかない出来事が起こるはずだと、ずっと思い込んでいた。

 けれど実際に迎えた夜は、死でも破滅でもなく、祝福と評価に満ちていた。

 それでも、泉の前に立つと、胸の内が静かに揺れる。


(わたしは、もう大丈夫なのかな)


 そう確かめるように、もう一度、水に触れた。

 昨日はバタバタしていて泉に来れなかったけれど、一昨日見た夢では向こうのリリーベルには、変わりはなかった。感染症の蔓延で城はピリピリとしていて、すごく嫌な空気だった。でも、リリーベルは生きていた。


 泉に触れると、冷たさが指先から伝わり、浮ついていた気持ちが少しずつ現実へ戻っていく。


(いつか、この夢でわたしは彼女の死の原因を知るのかな)


 その時が来るのがこわい。意を決して魔力を流すと、ちゃぷちゃぷと水面が揺れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i1050295
■ 『転生モブ王女はナレ死の未来を回避したい!① ~破滅フラグを折りまくっていたら、いつの間にか愛され王女になっていました~ 』
書籍になります!web版から加筆修正のうえ、ほっこりシーンやキースの番外編などなど加筆しておりますのでぜひ*ˊᵕˋ*
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ