表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/17

00 不遇王女リリーベル

 豊かな水と緑に恵まれたグーテンベルグ王国の一角。こぢんまりとした離宮の庭園で第一王女のリリーベルは薬草の手入れに静かに集中していた。


「ふう……このくらいでいいかしら……?」


 薬草を摘み、籠に収めると、ふと遠くの泉に目を向ける。

 昔、母がやっていたことの見よう見まねで薬草の世話を始めた。


 小さい頃は手ずから教えを受けていた気がするが、今はもうその人もいない。


 残されたのは古い薬草の本が数冊と、幼子用の絵本のみだ。

 新しい書物を買い与えられることも、教えてくれる人もなく、リリーベルはこの離宮でひとり寂しく暮らしている。


 王女なのに、薬草を育てるくらいしかやることがない。


 ぼんやりと泉を眺めると、澄んだ水面が陽光を反射してきらめいている。

 涼を取るため、少しだけ水に触れようと近づいた、その瞬間だった。足元の石がぐらりと揺らぎ、体が前のめりに傾いた。


「きゃっ!」


 水面が目の前に迫る。冷たい衝撃が全身を包み込み、視界がぼやけていく。

 もがこうとするが体がうまく動かない。水が喉に流れ込み、意識が遠のいて──でも、もういいのかもしれない。


 心配してくれる人なんていない。このままリリーベルが死んでも、誰も困らない。

 力を抜いたリリーベルの身体は、誘われるようにゆっくりと泉に沈んでいく。


「──!」


 誰かが呼ぶ声も、彼女の耳にはもう届かない。


 それでも、おそらくその誰かによって運よく泉から助け出されたけれど、身体はすっかり冷え切ってしまって、リリーベルは重い風邪を引いてしまった。


 それから、生死の境をさまようような高熱が続いた。


 その間、ろくに看病する者もなく、王女リリーベルはひとりきりだった。

 そしてそれは、これまでずっとそうだった。

プロローグを挿入したため、この話が00になっております。ご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ