家族の絆
旦那と息子は果たして、どうやって私が拉致された事を知り、また、居場所を捜し出す事が出来たのだろうか?
沙織ちゃんの魂が私を救うために、旦那と息子を動かしたのだろうか?
実際は、そんなスピリチュアル的な話ではなかった。
答えは案外簡単だった。
ここからは後に、旦那と息子から聞いた話だ。
息子は学校から帰宅途中、自宅付近の通りを歩いていて、私が若い男に無理やり車に押し込められる場面を、遠くから目撃していたのだ。
息子はすぐさま、旦那に助けを求めて、電話をかけた。
息子から連絡を受けた時、旦那は外回りの営業を終えて会社へ戻る途中だった。
事情を聞いて、会社へは戻らずに、息子の元へと急行した。
旦那は息子と合流し、息子はスマホのGPS機能を使い、私の居場所を捜し、 旦那はスマホの通話をスピーカーに切り変えて、警察へ電話をする。
二人で役割を分担して私の捜索にあたった。
旦那は運転しながら警察へ事情を話し、息子からはGPSで位置情報を案内してもらった。
警察と情報を共有しながら私を捜しに走った。
GPSの位置情報では、山の中のどこかを示していた。何もない、山の中で位置を特定するのは難しい事だった。
GPSが示す位置へ近づいたと思ったら、また遠ざかったりと、GPSの差す場所 へ、どの道から入っていけば良いのかわからなくて苦戦していた。
その間も警察と電話は繋がったままだ。
何度も、道に入っては戻る事を繰り返した。
警察は「今、パトカーもそちらへ向かっていますので、このまま電話を切らずに状況の説明を続けて下さい」と言った。
二人は焦っていた。
息子は「お父さん、お母さんは無事かな?」と泣きそうな声で言い、「無事に決まってんだろっ」と旦那は自分にも言い聞かせるように言った。
スマホの画面を見つめていた息子が「お父さん、近くにお寺があるみたいだよ!」と、スマホのGPSの地図に出て来た寺の名前を言った。
少し走ると、寺が見えてきた。
旦那は「ここか?」と言って、寺の脇の道を左折して走った。
しばらく走ると右側へ入って行く道があったが、通りすぎて真っ直ぐ進んだ。
息子は「離れた!」と位置情報から外れた事を告げた。 旦那は車をUターンさせる。先程の道へ曲がってみようと思った。
通り過ぎた道へ、戻ると、はるか遠くに光が見えた。
旦那は(あれは街灯なんかじゃない!車のライトだ!)と確信して、光を目指して車を走らせた。
後ろからサイレンの音がする。
パトカーが合流してくれのだ。
段々と光に近づくと、やはり車のライトだった。
旦那は息子に 「 ここか?」と、息子にGPSが示す位置を確認する。
息子は「そう!」と返事をした。
ライトを煌々と付けた停車中の車の後ろに、旦那が自分の車を停めた。
停車している車のライトがまるでスポットライトのように私を照らしていたので、息子と旦那がすぐに私を見つける事が出来た。
息子は助手席から飛び出し「お母さんっ!お母さんっ!」と叫んだ。
旦那も運転席から降りて走ってくる。
息子も旦那も、私のあまりの無惨な姿に絶望を感じたと言う。
「お母さんっ!お母さんっ!死なないでっ!!」と息子は泣いた。
あの時、パーカーのポケットの中でブルブルとスマホが鳴っていたのは、誰かからの電話では無く、GPSで検索されている事を知らせる通知音だったのだ。
これが、彼らから聞いた、救出劇の真相だった。
私が暴行を受けている最中、裏で旦那と息子が動いていてくれていたとは。
彼らが助けに来てくれなかったら、私は絶命し、遺体は広本が掘った穴に埋められていた事であろう。
我が家のヒーロー達に心から感謝した。




