表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/25

悲しき対面

電話を切った後、私はしゃくり上げて泣いていた。

息子はすでに帰宅していて、私が大声で泣いてたので驚いて、リビングのドアを開け「お母さん?」と静かに心配そうに声をかけてきた。

私は何も答えたられず、ひたすら泣いた。

それでもなんとか立ち上がって、リビングへ入った。

「お母さんの……友達が……亡くなったんだ」と、途切れ途切れ息子に伝えた。

息子は、はっとした表情をして、すぐに悲しそうな顔になった。

私は「お母さん、これから友達の家に行って来るから。ご飯は、お父さんが帰って来たら、用意してもらって」と伝えた。

息子は(うなず)いた。


暗めの服装に着替え、タクシーを呼んだ。

しばらくして、タクシーが家の前に到着したようなので、玄関に向かった。

息子は玄関まで付いて来て、私を見送った。

「気を付けてね」と一言。


タクシーで移動中、これは現実ではなくて、私は()()()にでも来てしまったんじゃないか、なんて非現実的な感覚に(おちい)った。

いや、そうであってほしいと願ったのかもしれない。


沙織ちゃんの家に着いた。小さな一戸建て住宅だ。

沙織ちゃんの家には何回か来た事がある。

玄関へ、人が何人か入って行った。沙織ちゃんの訃報(ふほう)を聞き、()けつけて来た知人か親戚なのだろう。

タクシーから降りて、玄関へ向かう。

会いたいけど、会いたくない、複雑な感情で、なかなかインターホンを押せない。

中に入ったら沙織ちゃんの亡骸(なきがら)が待っている……

ためらっていると、後ろから元店長の奥さん、エリちゃんが声をかけてきた。

「堀内さん?」声をかけられただけで泣いてしまった。エリちゃんも泣いていた。

エリちゃんは気丈(きじょう)にも「とにかく沙織さんと対面しましょう?」と私に言い、インターホンを押した。

インターホン越しに誰とも確認せずに「はーい、開いてますのでどうぞ」と女の人か対応した。

エリちゃんがドアを開けると、リビングのドアが開いていて、中から女の人がこちらを(のぞ)き「どうぞ」と私達に入るよう(うなが)した。


私達が中へ入ると、先程の女性が、「沙織の姉です。沙織の友達の方ですか?」と私達に質問した。

私は「はい、沙織さんにはとても仲良くしていただいて……この度は、本当に……」と言葉を続ける事ができなかった。

沙織ちゃんのお姉さんは、目を潤ませて「沙織はこちらです。どうぞ」とリビングに隣接(りんせつ)する小さな和室へ案内した。


沙織ちゃんの遺体の(かたわ)らには、旦那さんが息子さんを抱いて座っていた。

私達は「この度は……」と言って頭を下げた。

旦那さんは私達に「来て下さって有り難うございます」とかすれた声で、小さく言った。

旦那さんは泣きつくして目が真っ赤になっていて、息子さんは旦那さんに抱かれて、眠っていた。

(こんな小さな子を残して()くなんて……自殺なんて、沙織ちゃんはそんな無責任な事はしない)

旦那さんは泣き疲れたのと、昨日からの疲れで、疲弊(ひへい)しているように見えた。次々に訪れる来客に対応できなくなっているようだった。

そんな旦那さんの代わりに、沙織ちゃんのお姉さんが来客の対応しているのだろう。


沙織ちゃんの顔には白い布が掛けられていた。

お姉さんが「どうぞ、顔を見てあげて下さい」と言った。

私は顔に掛かっていた布をゆっくりと()ぐった。


元々美人の沙織ちゃんだが、よりいっそう美しく見えた。


ただ寝ているだけのように感じた。

(沙織ちゃん、起きて!)

顔を()でると、人間とは思えないほど冷たくてなっていた。

私はやっと、沙織ちゃんの死を受け入れた。

「こんなに冷たくなって」とつぶやき、大粒の涙をこぼした。

お姉さんは「これから枕経(まくらきょう)(とな)えにお坊さんが来ますので、それまでこちらで、お茶でもどうぞ」と私達に告げた。

リビングへ戻ると、沙織ちゃんの両親と、旦那さんの両親が、ダイニングテーブルの方に座っていた。

沙織ちゃんの両親は私達に「家までわざわざお越し下さって有り難うございます」と頭を下げてくれた。

私とエリちゃんは恐縮した。

突然、娘を亡くしてどんなに辛い事だろう。


お姉さんにソファーに案内され、お茶をいただいた。

その間も、続々と親戚の方やら知人の方やらが訪問して来て、リビングも和室も人でいっぱいになった。


枕経(まくらきょう)も終わり、葬儀屋さんから明日の本通夜と葬儀の時間の説明があった。

来客は、それぞれ明日に備えて帰宅して行った。


私は旦那さんから、沙織ちゃんを発見した時の様子を聞きたかった。


でも、今はとても聞ける状況になかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ