霹靂
ようやっと開けられた従業員専用の玄関に、社員さんやパートさんが、やいのやいの言いながらゾロゾロと入って行った。
「お客さん外で待ってるから、早く自動ドア解錠してっ!!」と本社から来た社員さんが怒鳴った。
開店の準備が出来ていないまま、店を開けてしまったので、各部門の人達は大慌てでそれぞれの作業へとりかかった。
とはいえ、まだお客さんもそんなに居なかったので苦情案件になる事はなかった。
私ら惣菜部門も大忙しだった。
さっきまで、頭がぼーっとしていた私も、仕事を始めるとアドレナリンが出てきたのか、ひたすら、お寿司やら弁当やらを作り上げていく。
山田さんもフライヤーと格闘していた。
グロサリー部門はレジの人達に応援を頼み、なんとか作業をこなしていた。
戦いは終った。
いつもは10時に休憩時間を設けているのだか、今日は休んでいる暇もなく、昼の休憩時間まで頑張らざるを得なかった。
休憩室兼、ロッカールームへ入ると直ぐに、スマホを確認した。
沙織ちゃんから、着信ありだ!たぶん旦那さんだろうけど。
着信時間を見ると7時43分だった。
マナーモードにしてたし、広本君騒動で全然気が付かなかった。 折り返し、電話をかけたが出なかった。
すごく気になったが、 昼食を取ると、一気に睡魔に襲われてしまった。
少しだけ横になるつもりだっが……
「堀内さんっ!!」と大きな声で、体を揺さぶられ、「はっ!!」と驚いて目を開けると、「休憩時間、終わりだよ!イビキかいて爆睡してたよ」と山田さんに笑われた。
30分以上は寝ていたようだ。
(げー!タバコ吸う時間ないじゃん)
( そんな事より、沙織ちゃんどうなったかな)
スマホを確認すると、何処からも電話は来ていなかった。
午後からは追加の惣菜を作りながらも、電話が来てないか気になって、気になって仕方がなかった。
ようやく仕事を終え、足早にロッカールームへ向かう。
スマホを手に取ると、またもや沙織ちゃんから、いや、旦那さんから電話が来ていたようだ。
着信時間は……つい、さっきだ。
もう上りの時間だし、家に帰って、落ち着いてからかける事にした。
慌ただしく帰宅。
玄関へ入るとすぐに、沙織ちゃんのスマホに電話をかけた。
出たっ!!
私はまた出ないんじゃないかと、油断していたので、「あ、あ、あの堀内と申します」と言葉につかえてしまった。
電話口の相手は、やはり沙織ちゃんの旦那さんだった。
「はい、今朝は沙織の事で、何度も会社へ電話を入れたのですが誰も出なくて……それで、堀内さんの方に電話をしたのですが……」と旦那さんが言った。
「すみません。会社の方でちょっとしたトラブルがありまして……私も電話に気が付かなくてすみませんでした」と謝った。
続けて私は「沙織ちゃんの、容態はどうですか?」と尋ねた。
話しながら、リビングへ向かい、ドアに手をかけて中に入ろうとした時だった。
「沙織は昨夜、搬送先の病院で死亡が確認されまして………」
稲妻のような衝撃が身体を駆け抜けた。
膝から崩れ堕ちた。
「嘘でしょ……」私は絞り出すよう言った。
旦那さんも何も答えず、沈黙していた。
私がしゃくり上げて泣いていると、電話口から「今、葬儀会社の方と打ち合わせ中でして……」と旦那さんが、かすれた声で言った。
私は「沙織ちゃんは自宅へ戻られているんですか?」とやっとのおもいで尋ねた。旦那さんは「はい、今日は自宅で仮通夜になります」と答えた。
「 伺ってもいいですか? 」と聞くと、「はい、大丈夫です」と旦那さんは答えた。




