歪んだ日記
他の皆と別れ、あおは再び地図を見つけた部屋に来ていた
このへやはまだ、全てを探索し終えていない
この部屋が何か大きな手掛かりになると感じ再び戻ってきたのだ
「けほっげほっ」
物を動かそうとするたび、自分が動こうとするたび、埃が宙に舞いむせてしまう
部屋の隅は、わかりやすいほどに埃が溜まっている部屋
なるべく埃を立てないように細心の注意をはらう
初めは何処を見よう……
そういえば、まだ机の部分を見終わっていないな
引き出しを一つ一つ開けていく
すると、一番下の引き出しにはノートがびっしりと詰まっていた
「わお……」
あまりの凄さに声が漏れる
黒いノートが敷き詰められた引き出し
試しに、一番端の一冊を手に取ってみる
そこには、シールが貼られ 『日記その一』とまだ幼い文字で記載されていた
どうやら誰かの日記だったようだ
試しに少し読んでみよう
一ページページをめくってみた
4月5日
今日から外ではしんがっきらしい。
おとうさんがおしえてくれた。
ぼくも行きたいけど、きっとゆるしてくれない。
ぼくもいつか外に出たいな。
がっこう行けるねんれいになったらいけるのかな。
いったいなんさいからなんだろう。
4月6日
今日は、算数のおべんきょうをした。
二けたの足し算と引き算はできるようになった。
先生は、おぼえがいいとぼくをほめてくれる。
だけど、おとうさんにはおこられる。
もっと上をめざせだって。
だから、僕は明日までにかけ算をおぼえるんだ。
そしたらほめてくれると思う。
4月7日
漢字は少しむずかしい。
沢山書かないといけないし、とても数がある。
だから、今日から辞書で調べながら日記を書いてみる。
久しぶりにお客さんが来たみたい。
お父さんが、おもてなししてた。
ぼくは、あまり部屋から出られないから、声を聞いてたんだけど、ぼくのことを話していたみたい。
何を話していたんだろう。
4月8日
だれかが助けてって言われてるきがした。
お父さんに話してみたら、きっとだいじょうぶそらみみだって。
そらみみって調べたら幻ちょうって意味なんだって。
疲れるとなるみたいだけど、ぼく疲れてないんだよね。
ぼくの知らないところで何がおこってるの。
だれか教えてくれないかな。
4月9日
今日は、いつもより沢山お勉強したから沢山文字を書いた。
外から叫び声が聞こえる。
何人もの叫び声。
何が起きてるの。
お父さんに呼び出された。
また、きっと痛くなる。
ぼくは、なにも悪いことしていないのに。
4月10日
いやだ。外に出るのがいやだ。 部屋にいたい。
ひさしぶりに部屋から出してもらえたと思ったら、鉄のにおいがする。
さいきんは、部屋に出るたびに鉄のにおい。
広場のかべをさわったら、少しあたたかかった。
ひとりだけ、なにも思ってなさそうなすごくこわい目で、遠くを見ていた。
お父さんは、ぼくに包丁を持たせて、その人をすくってやれと言ってきた。
ぼくがどうやるか聞いたら、その人に向かって包丁をさすんだって。
そしたら救われるみたいだから、ぼくはその人を救ってあげた。
「なにこれ……」
まだ、幼い小学校にすら行っていないであろう少年の、一つの日記だった
拙い言葉で書かれた日記には、普通ではないことが書かれている
少年は、この館の中に閉じ込められておりこんな幼い頃に人を殺した
なんて父親なのだろう
殺しが救済だなんて…………
そんなの間違ってる
殺しは罪だ
それはあたりまえのことだろう
たが、それが本当に罪で悪いことなのかそれは誰もわからないのに
他には何か……
あおは、ページをめくる
また、同じような日記が書かれている
次のページも、また次のページも同じようにだ
すると、違う紙が一枚だけ挟まれていた
先程の少年とは違う誰かの字
この感じは大人の字だ
日記ではないし、何かの資料なのだろう
試しに読んでみることにした
4月5日
◯第八回目
参加者
20代男性 社会人
30代女性 主婦
60代男性 自営業
10代女性 中学生
10代男性 高校生
最後まで残る予定の人は20代男性
これから約5日間、記録をしていく予定だ
また、60代男性は宗教に入っている模様で、コトダマの研究をしている研究所と繋がりがある
今回の参加者の特徴として、その宗教となにか間接的にでも関わりがある模様
宗教その言葉に違和感を覚える
まず、コトダマを研究している宗教は果たして宗教なのだろうか しかも共通点とか、参加者って書いてるあたり、なにかのゲーム?しかも特定の人たちを集めた
もしかしたら、俺達六人にもなにか共通点があるのかもしれない
あおは、察しがよかった
だから、こういった情報からなんでも推理することができた
4月11日
お父さんが書いていた資料の一つを見つけた。
ぼくが知らないところでもう8回も開催されていた。
お父さんが作ったゲームみたい。
コトダマの研究は、お父さんがリーダーらいしけど、本当かどうかはわからない。
大きくなったら、お父さんはぼくにこのリーダーはついで欲しいみたい。
そのためにぼくは、毎日勉強しているんだって。
コトダマの研究のリーダーだったのか?
そうなると、勝手に作られていた宗教を潰すためにゲームをやっていたのか? それとも他の目的が?
思考を巡らせていると、ガチャと扉が開く音がした
気になり、そちらの方に目をやると、
「ぁ 、 すいません 邪魔してしまって」
十六夜がいた
「いや!全然大丈夫だよ なんなら、一緒にこの部屋探索する?」
あおは、十六夜に問いかける
ちょうど、手助けが必要だと思っていたのだろう
なんせこの大きな子ども部屋を探索するのは独りだと厳しいからだ
ただ、十六夜は
「いや、大丈夫ですっ 僕はもう行きますね」
「僕?」
当然、一人称に違和感を覚える
「っぁ ごめんなさい!!」
十六夜は、廊下へ走り出してしまった
音もない空間にもどる
十六夜さんは、僕 その一人称を聞かれて逃げてしまった
十六夜さんは、もしかして過去に一人称を指摘されていたのかな……
しかも、この声の僕っ子で活動していた方がいたような……
会社の同僚から少しだけ話が出ていたはず
けど、そんなことないか
確かめようもないし、もうその活動者は二年前に引退した
さっきのことは忘れて探索に戻ろう
部屋にこの日記を何冊かもっていってじっくり見た方がいいかもしれない
もしかしたら、どこかにこの館の詳細が書かれている資料が挟まれているかもしれない……