時計仕掛け
「とりあえず、食堂に行ってからみんなで地図を見ない?」
あおは提案をする
「そうだね!僕、結構お腹空いてるし」
広場から彼らは歩き始める
先程行った北側の通路とは違い、こちらの通路は比較的見やすく、明るく作られていた
「た、確かここら辺だったんだけど……あ、ここだよ」
すずらんが案内した場所は、木造で、他の場所とは似合わない暖かい作りをしていた
奥に、炎がみえる
どうやら暖炉がついているらしかった
時々、パチパチと音が聞こえる
凄い、とても広い
大学の食堂みたいだ
とても広い食堂に圧倒される
この屋敷に一体何人が暮らしていたのだろう
到底五人家族とかではあまり過ぎるほどの広さだ
豪邸、というかもう城なのではないかと疑う
「さっきの部屋とは全く違うな」
「ここだけ妙で、とても明るいんですよね」
「……凄くいい匂いがする」
こうの声に釣られ、鼻を尖らす
トマトの匂いと小麦の匂いが漂ってきた
香ばしいような濃厚なような食欲をそそられる匂いだ
「ご飯だ!早く食べよ!!食べながらでも話はできるし!!」
そういい、彼はこれまた大きなテーブルの方に向かう
他のメンバーもれおの後についていく
机のある真ん中に行くのは普通とは思えないほど長い
進んでいくにつれて、美味しそうな匂いは大きくなっていく
段々とお腹が空いてくる感覚がする
「す、凄い……沢山ある」
テーブルについてから気がついたが、テーブルにはサラダにスープ、それにパンだったりと沢山の料理が置かれている
料理だけで、大きなテーブルがほとんど埋まっている
こんな光景初めてみた
ここはどこかのパーティー会場か何かなのか?
普通見る事はない光景だろう
「えぇ、けど……毒とか盛られてないかな」
心配するのも束の間、れおはすでにテーブルの料理を食べていた
「ん?大丈夫!めちゃくちゃおいひいよ!!」
「というか、毒入っていたら今頃僕死んでる!!」
「大丈夫……なんでしょうか」
まだ不安は残るもの
れおが食べた以外の料理が安全だろは言い難い
けど、見ているとお腹が……
「食べないと、探索や会議に集中出来ないかもしれないし、食べといた方が……」
「見た感じ、安全そう、だし……」
あおはそういい、一口食べてみる
手に取ったバケットは持っただけでわかるほどふわふしていて、食べてみることお香ばしい匂いともちもちした食感が広がる
どうやら焼きたてのようだった
付け合わせにスープも濃厚で野菜とパンの相性がとても良い
「美味しい……」
「確かに美味しいし、安全みたいだな」
あおが食べた姿に釣られて、こうたちも食べ始める
彼等は今まで絶食を何日間もしていたのではないかというほどに凄いスピードで料理食べている
人狼のように食事をしているのに、れおを覗いれ大人の風格を残したまま、綺麗に食べている
俺は料理が苦手だから、普段はコンビニ弁当とかインスタント系、冷凍食品に頼りがちだったから、人の手料理らしいものは久しぶりに食べた
我ながら、不健康生活ロードまっしぐらだ
ラーメンばっか食べてたし
「やばい 止まらん」
そういい、こうは少し遠くにあるステーキに手をとる
そんなものもあったのか
まさか 大きいステーキもあるなんて
俺はそういうもの全然食べられなかったから、こういったところで食べておこう
子どもがいると、こう言った贅沢なんてできないからな、これは奥さんに内緒だな……
とみさんには、子どもがいるのか
確かに、子どもがいると贅沢は出来ないな
「とみさんも子どもいるんだね」
すずらんは子どもというワードに反応して話しかける
「あぁ、三人な」
「三人も!私も双子でそろそろ三歳なの」
「双子!大変だろ 会社の先輩が双子で大変だったと言っていたぞ」
「まぁ、一人ではとても大変だったよ」
「双子って大変なの?」
と、れおが問いかける
俺は、子どもがいないからどれだけ大変なのか理解できない
そもそも、結婚もしてない新人社会人だし
「一度に二人は対応するにしてもとても大変なんですよ なんせ人間分身できませんからね」
「保育園があるから子ども、家の家事がきちんとできるし」
「やっぱり保育園は大事だよね」
それぞれの雑談
こうやって話していくと、相手がどのような暮らしをしているのかをなんとなくわかってくるから楽しい
まだ、交流が深めきれていないけど大体どのような環境で育ったかわかった気がする
食事を進めていくと、ふとあおは思い出した
「そういえば、俺が持ってる地図とすずらんさんが持っていた箱について今のうちに話しておきたい」
全くもって忘れていた
そんな顔を他の五人もする
「た、確かに ちょっと待ってて」
そういい、すずらんは床に置いてあった一つの箱を取った
箱は、大きく両手が抱えられ見える範囲だと狼の彫られているのがわかる
この館はことあるごとに狼がある気がする
館の前の銅像も、時々飾られている絵画も狼だ
何か狼との縁があるのだろうか
「置く場所は、ないな、」
テーブルにはまだ沢山の料理が置かれている
どこにも置くところが見当たらない
「とりあえず床の方に…」
あおは、少し離れた床に移動する
すずらんから貰った箱は少し重たかった
軽く振ってみると、カチャカチャと金属がぶつかり合う音が聞こえた
何かが入っているのだろう
鍵やアクセサリーでも入っているのか
「とりあえずあけてみないとですね」
「だね」
「中は何が入ってるのかな!!」
あおは身を乗り出しながら言う
「じゃ、じゃあ開けてみるよ」
そういい、中を開ける
カチャッと金具を上に上げて、その中を覗いてみる
中には、時計が入っておりその時計はびくともしない
「これは…」
「時計?けど、動いていないし何かここに入りそうだね」
こうが指差した先には、細い穴がある
何かも仕掛けなのだろう
入るものが見つかれば、何かが作動するのだろうか
「何かが入りそうですけど、何処かにあるんでしょうか」
「だね、部屋を探索すればまた見つかるかな……これってどこにあったか覚えてる? もしかしたらその近くに鍵があるかもしれない」
「えっと……確かここからもう少し奥に分かれ道があって、そこをまた右に行ったはず……」
「そのいちばん手前に部屋の中にあったよ」
「なるほど……」
そう言いながら、とみは胸ポケットから簪を取り出した
一体何に使うのだろうかと不思な目で五人は見つめる
すると、とみは箱の穴に簪を入れた
見事簪は穴にピッタリはまり、カチャッと何かが開いた音がした
「あ、開いた」
「え!?凄い!とみくん天才だね!」
「ここが開くのでしょうか」
十六夜が、箱の底にある切れ目のを触る
すると、切れ目が動き出し中から一枚の紙が出てきた
「これは……」
地図の切れ端だろうか
だけど、よく見ているとそれは違った
紙にはただ104445と丁寧に書かれていた
これは一体なんの数字なのだろう
暗号なのか、パスワードなのかこの謎?がとければ何かがわかるかもしれない
「104445……?何かのクイズとか?」
「これじゃない?時計!!」
れおが名推理をする
「確かに、時計かもですね そうなると10時44分45秒でしょうか 針も回るみたいですね回してみましょう」
カチカチと十六夜は時計の針をまわす
元々0時を指していた針は、10回廻り、44、45と針を合わせていく
するとまた、カチャッと音が鳴り時計の中が開いた
中にはまた紙
だが、何も書かれていない
「なんだ?白紙じゃないか」
「何かトリックとか……」
「……まぁ、また後で考えましょ 地図も見ないとですし」
「そうだね」
あおは、ポケットの中から地図を取り出す
「この地図なんだけど」
「かなり、精巧な地図だね あ、ここが食堂なら、この箱を見つけたのはこの部屋だよ」
すずらんが指したのは食堂と書かれたところから少し離れた小さな部屋だった
そこには、氷の結晶の絵が描かれている
何かのマークのようなのだが、その意味は検討もつかない
「確かこの地図を見つけたのはここらへんだったよな」
とみは、すずらんが指したのは所の反対を指す
こうたやって地図を通してみるとかなり離れていることがわかる
それなのに、地図はもっと遠くまで部屋があることを示している
この館はどれほど大きいのだろう
そう改めて思うのだ
「まだ言っていないところもありますし、次は単独行動をしたいです」
「単独行動いいかも!」
「そうした方が探索の効率も上がるもんね!」
探索の効率……
れおさんは小学生低学年程の体格だけど、とても難しい言葉を使うことがある
一体何歳なのだろう
「それじゃあ早速行ってみよう」