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女性からの『キモイ』は凶器に等しい

ラビタスは自身の耳を疑った…


「え?…今なんて!?…俺の耳がおかしいのか?」



「だ〜か〜ら! アンタ…キモイ!  本当にキモイ!これ以上私に近づいたら…コロス!!」


「う…ウソだろ」


謎の女性の言葉にショックで膝から崩れ落ちるラビタスであった…



ー 遡ること1ヶ月前…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ラビタスは自身の世話係でもある爺こと地帝国『タイタン』でラビタス次に権力を持つ大臣チブーから現在進行形でゴーレムの作り方をレクチャーされていた…




「いいですか?今のラビタス様は、500年間眠っていた影響で魔法の使い方を一切お忘れになっています。その結果ラビタス様がお作りになりたい人間の女に近いゴーレム『ラビ・ゴーレム』の製作は今現在のラビタス様では不可能で御座います」



「しかし、ゴーレム制作に必要な泥魔法のスキルはラビタス様から消えてはおりません。その理由は、私が貴方様の一部だからです…」



「爺、言っている意味が全く分からないよ…魔法の事も含めて俺にもにもわかりやすく説明してくれよ!」


ラビタスはこの世界の転生して間もない為、この世界では当たり前に存在する魔法やスキルに関する知識が全くの皆無であった。



「まずは泥魔法を説明しましょう!泥魔法とは、ラビタス様が考案された特別な魔法の種類なのです! そんな泥魔法を用いて造られた我々ゴーレムは、ラビタス様の魔力で作られた眷属のため、私達にもラビタス様が使用出来る泥魔法の一部を扱うことができます。しかし、泥魔法を扱えるゴーレムにも種類があります」




「ゴーレムにも複数の種類があるのか?」



「そうですじゃ!まず一つ目は『ゴーレム・モドキ』通称:泥人形です。これは、そこら辺に存在する地面と我々の泥魔法を融合させた存在…いわば心を持たない兵士です。そんな彼らは、少ない魔力で生成することができるため、1日しか寿命がありません」



「二つ目は、ノーマル・ゴーレムです。これ以降に紹介するゴーレムはラビタス様しか使用する事が出来ない特別な泥魔法でしか生成することが出来ません。そんなノーマル・ゴーレム通称:Nゴーレムのその最大の特徴は、命に限りがない事です…」



「…って言うことは…不死身ってことか!?」



「不死身と言うと語弊がありますが、限りなく不死身に近い存在です。作り方は泥人形と同じなのですが、製作者がラビタス様でなければNゴーレムは誕生しません。そんなラビタス様がお造りになられた泥人形の中で稀に覚醒した泥人形だけが、ゴーレムという新たな魔物として生まれ変わることが出来るのです。簡単に言うと選ばれし魔物という事です」



「何よりゴーレムの不死身の理由は、この世界の魔素にあります。 魔素というのは、魔力を含んだ自然エネルギーの事で、地面・空気などに含まれます。 ゴーレムは自然の加護が与えられた存在ため、この星から生まれる魔素をエネルギー源に生きることが許された存在…いわば自然そのものなのです」



「なんか難しい説明が多くて頭が痛くなりそうだよ…」



「ハハッは…そのうち慣れますよ」



「さぁ!最後は、グー・ゴーレムの説明ですぞ。通称:Gゴーレムと呼ばれ、私のように会話が出来るゴーレムの事を指します。N・ゴーレムとの違いは、『力』と『魔法』です」


「N・ゴーレムは知能がほぼ無く、魔法は使えないですが圧倒的な戦闘力を持った戦闘マシーンです。一方のGゴーレムは、Nゴーレムには力では及びませんが、知能が高く魔法を扱う事が出来ます。何より泥魔法が扱え、泥人形を生成出来るのも我々Gゴーレムの特徴なのです」


爺の説明から無知なラビタスなりに噛み砕いてゴーレムについて知識を一旦飲み込んだ。


「なるほど〜!力と不死身のNゴーレム・知恵と魔法のGゴーレムね!なんとなく理解できたよ!ちなみにGゴーレムはどうやって作るんだ!俺が作ろうとしている『ラビ・ゴーレム』の参考にしたいんだ!」



何気ないラビタスの発言に温厚な爺が一瞬、緊張感を発せられた。




「グー・ゴーレムの作り方なのですか…」



「それは…貴方様の体の一部をいただくに他なりません…」



「え!?…俺の体の一部!?」


「…はい…私をお造りになられた時は、ラビタス様の人差し指にある末節骨を一つ頂戴して、それを媒介に私が誕生しました!


「うそだろ…俺の指の骨を使った…だと…」


「大分昔ではありますが、嘘ではありません…この国いるグー・ゴーレムは全て、ラビタス様の体の一部を使用して造られています。その為、いつでも主人であるラビタス様の居場所や魔力を感知するも可能なのです」


「だから俺が目覚めた時すぐに、俺の存在を察知出来たのか…」


「左様でございます!歳をとった私でも、貴方様の存在や貴方様から溢れ出す膨大な魔力を常に感じ取れていますよ!」


「そうだったのか…やっぱり俺には、魔力が備わっているのか!?」


「先ほども申しましたが、ビンビンに漏れ出しております!本当は今でもその魔力に押し潰されそうなんですよ…はははっは…」



よくよく見て見ると爺の額から冷や汗が流れ落ちているのが見受けられた。



「悪い悪い!自分じゃ分かっていないんだよ!魔力のコントロールの仕方が…」



「そうですね…新たなゴーレムをお造りになられる前に、ご自身の力の制御方法とゴーレム作りの初歩である泥人形を製造する事から始めてみてはいかがでしょうか!?勿論私めがばっちり指導させれ貰います!!」



「…うん!分かった!よろしく頼むよ!」



ラビタスは軽い気持ちでお世話係であるチブーに自分自身の家庭教師をお願いしてしまった…



ー 次の日…


「もう…やだよーー」



「ダメダメダメーーー!!そんなガサツな魔力コントロールじゃ、理想のゴーレムを作る目的など夢のまた夢ですぞーーー!!」



爺は予想以上に鬼教官だった…



魔法素人のラビタスは半べそをかきながらイヤイヤ爺のスパルタ特訓をひたすら耐え忍んでいた…





ー 特訓開始から5時間後…



「よし!なんとか泥人形は完成したぞ…けど、形を留める事の出来る時間はたった1分が限界だ… クソ…上手くいかない…今度こそは…」



ー ラビタスの初めての泥人形製作は失敗を繰り返す事、実に1000回目…


「…よし…動いたぞ…成功だ!!」



ラビタスは遂に手のひらサイズではあるが、理想の泥人形を完成させたのであった。



「なんとか上手くいきましたね!ラビタス様!」


「…しかし、その複雑な人形の造形を人間と同じ大きさにするのは至難の業だと思われます! 昔の貴方様でも理想のプロポーションのゴーレムを完成させる期間に一体で10年の月日が掛かっていました…本当にチャレンジするのですか?」



爺の心配を他所にラビタスの理想の嫁作りの情熱は高まる一方であった。



「俺!魔力のコントロールは初心者でも、人形作りには自信があるんだ!」



何を隠そうラビタスが人間だった時の唯一の趣味は、フィギア集めであった。しかも集めだけでは飽き足らず、実際にフィギアやドールをゼロから制作するほどの情熱とプロ顔負けの技術も持ち合わせていたのであった。



(きっとフィギア好きの俺がゴーレムマスターに転生したのもきっと運命に違いない…どうせ現実世界に戻れないのなら、こっちの世界で俺は、俺の趣味を極めてやる!!)





ー 1ヶ月後…彼は行き詰まっていた…



「ダメだーー!何度やっても俺の理想とするゴーレムが誕生してくれない…」


「この際、痛いのを我慢して俺の骨を使ってGゴーレムを作るしかないのか!?でも…痛いのやだしな〜 くそ〜 どうしたら良いんだ〜」


悶々とするラビタスに彼の世話係であるチブーが一つの提案を持ち掛けた。


「ラビタス様!私の様な分際で貴方様に口答えをするのは恐れ多いのですが…この際、ズバリ言わせていただきます!」


「そろそろ諦めてはいかがですか?」


「何だって!?」


理想のゴーレム造りに没頭し過ぎて寝不足であったラビタスにお世話係のチブーから、ごもっともな一言が告げられた。


「明らかに体力と集中力が不足しております。しかも貴方様は、この地上に復活されてまだ日が経っておりません…泥人形の製作は成功しておりますが、まだゴーレム造りに必要な魔力コントロールの引き上げには経験値が足りないのではないでしょうか?」



「…確かに爺の言っていることは間違ってない…けど…俺は今、俺の理想である『ラビ・ゴーレム』作りたいんだ!」


「上手く説明できないけど…今が一番ゴーレム造りの情熱が激っているんだ!俺の性格上、一旦ここで辞めてしまったらもう二度と理想のゴーレムを作らない気がするんだ…」


「実は俺…復活したこの1ヶ月でこの国が好きになったんだ…」


「ラビタス様〜」


ラビタスの思わぬ一言でチブーは一瞬で嬉し涙を流していた。


「何よりこの国の女性型ゴーレム達の事も愛しく思えてきたんだ!」



「それならそれで良いではないですか?それの何が不満で!?」



「この国に存在する女性型のゴーレムを好きになったら…それは、俺が俺じゃなくなる気がするんだ! 言っている意味が分からないのは、十分承知なんだ! けど…俺は俺の信念を曲げられない! 俺は、俺自身も!俺が好きな物や理想の女性を捨てられないんだ!」




「俺は…そんな俺が好きだから…」




「…………」


「ゴーレムに対してのラビタス様の熱い気持ち良く分かりました!…この爺に考えがございます…」


チブーは、ラビタスの純粋で真っ直ぐな自愛の言葉に自分が知る昔のラビタスと重なった瞬間…胸が熱くなった。その後…チブーはラビタスを部屋に残しこの場から立ち去ってしまった…



ー 15分後…ラビタスが待つ部屋へ、とある黒い石を持ったチブーが舞い戻ってきた。



「ラビタス様!この賢者の石をその人形に埋め込んでください!」


チブーが差し出した黒い石の正体は、『賢者の石』と言うアイテムであった。



「これは一体?」



「このアイテムは『賢者の石』と言いまして、つい最近になって我が国で偶然見つかった幻のアイテムなのです!」



「幻のアイテム?」




「そうです!このアイテムが幻と言われる理由には二つあります。まず一つ目は、その入手確率の低さです!そして二つ目の理由は…その能力にあります!その能力と言うのは…」



「生命を与える力です!!」


『!?』


「何でそんな珍しいアイテムを俺に…」


「このアイテムはとても珍しい物ではありますが、泥人形を製造できる我々にとってはそこまで必要のない物…」

「しかし、泥人形の『命を生成する魔法』と賢者の石の『生命を与える力』には決定的な違いがあります」




「それは…『人間を造る』事が出来る事です…」




『!?!?』


「そんなアイテムがこの世界に!?!?………良いのか?そんな神様みたいな事!」


「怖気付きましたか!?ご自身に似合う人間に近い存在を作りたかったんでしょ!?」


「確かにそうだけど、本当に良いのかな〜!?」



「本来魔物が敵である人間を作るなど、どの魔物を考えつきません。 何より長い世界の歴史の中でそんな前例は一切ございません。 が!ラビタス様のモノ作りに対する信念に私の考えにも変化が生まれました…この際、種族は関係なくラビタス様が作りたいものを自由に作ってください…」



「…ありがとう!爺…俺!人間作ってみるよ!そして、最高で最愛の奥さんを作って見せるよ!!」



ラビタスの揺るがない信念が1匹の魔物の心を動かし、その結果…前例のない人間造りがゴーレムマスターであるラビタスの手に委ねられたのであった。




ー 1ヶ月後…ラビタスは、人間と同じ大きさの泥人形の製作に成功していた。



そんなラビタスは、爺から譲り受けた賢者の石を自身の願いを込めた泥人形の胸にそっと嵌め込んだ…


次の瞬間……… 



『ゴゴゴ…』




賢者の石を嵌め込んだ泥人形から黒い光が放出すると、その光が泥人形を一瞬で包み込んだ…


「生まれる…俺の人形が…この世界で最初の新人類が誕生するぞ…」


『ギギギ…ギ…』


期待と希望を胸にラビタスの作った人形がそっと立ち上がった…


『パッチ!!』


「…」


『……ニッコ!』


ラビタスの人形はその大きな瞳を見開き、ラビタスに向かってニッコリ笑顔を見せた…


ラビタスは眩しすぎるその人形の笑顔に引き込まれる様に、無意識に彼女?の顔に自信の手を添えて、彼女?の誕生を喜んだ!


「完璧だ…」


「初めまして…俺が君の主人だよ…」



新しい生命の誕生に自然と涙を流しながら、人間そのものの容姿を備えた彼女?をそっと抱き締めていた。


そんな彼女?は主人であるラビタスに優しく声をかけた…



「初めまして…ご…しゅ…じん……さ…ま…」


『ピッタッ!』



ー 次の瞬間…


つい先程まで、ラビタスに抱きしめられていた彼女?が突然動かなくなってしまった…



動かなくなった彼女?に何回も声を掛けるラビタス…そんなラビタスの声が室内に虚しく響き渡っていた…


「ダメだ…返事がない」


ラビタスが動かなくなった彼女?の死を認識すると、ゆっくりとその場に座り込んでしまった…



項垂れるラビタスにそっと爺が駆け寄り、彼女に起きた現象の見解をラビタスに説明し出した…


「きっと泥人形が賢者の石の魔力に耐えられなくなってしまったと私は考えます…いわゆるオーバーヒートです…」


チブーの説明も今のラビタスの耳には全く届かなかった…


「…悪いけど…一人にしてくれないか…」


「かしこまいりました…」


ラビタスの提案を飲み込む形でチブーはそっとこの場から立ち去っていった…




ー 彼女?が動かなくなって3時間後…


機能停止してしまった彼女?と3時間同じ場所で座りこむラビタス…


悲しみに暮れるラビタスは、動かなくなった彼女?に起きた出来事を一旦飲み込み、この場から立ち去ろうとした…



ゆっくりと立ち上がったラビタスは彼女?との別れを決断した。



そんな時、亡くなったはずの彼女に異変が起きていた…



「本当に短い時間ではあったけど、君に会えてよかった…最後に君の名前を考えたんだ…聞いてくれ…」



「さよなら『シス』…」



ラビタスがシスの別れを告げた瞬間!なんと!!シスの体に正気が宿った…



『ドックン!!』


『!?!?』


「何だ!シスから妙な気配を感じる!一体何が起きたんだ」


シスに起きた現象にラビタスは、何もせずただ見守る事しか出来ずにいた…



『ゴゴゴゴ…』



唯ならぬ気配を纏ったシスが、ゆっくりと立ち上がった…


息を吹き返したシスを目の当たりにしたラビタスは、ただただその場に立ち尽くし、復活したシスの姿に涙を流し喜んだ!!


「シス〜蘇ってくれたんだね!!俺は嬉しいよ〜」



「…………」


「…ここは何処?」


生まれたて子鹿の様にプルプルと震えながら周囲を見渡すシスに、ラビタスは妙な違和感を感じざるを得なかった。


「シス!?本当にシスなのか!?俺のこと分かるかい?」


「…」


涙と鼻水でぐちゃぐちゃなラビタスの顔を見たシス?はその真紅の瞳でラビタスを睨みつけると、衝撃の一言を主人であるラビタスに放った!



「キモ…」



『!?!?』



「え!えーーーー!?!?」



シスはシスではなくなっていた…

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