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8.ロンドン~首相官邸地下壕

 2月7日深夜、サー・ウィンストン・チャーチルは報告書を何度も読み返していた。

「こいつは、プリンスオブウェールズがやられた時以上だ。いや、比較にならん。」

 この1週間ほどで、地中海、および大西洋において、戦艦キングジョージ5世、デュークオブヨーク、アンソン、ハウ、および航空母艦、イラストリアス、インドミタブル、ヴィクトリアス、フォーミタブルのすべての正規空母、さらに、S級、U級潜水艦15隻が行動不能になっていた。大英帝国本国艦隊の打撃力は失われた。しかも、どのように攻撃されたかいまだに不明である。ロシアが漸く反撃を始め、アフリカでもロンメルを追い詰めた。大西洋のUボートにはいまだに手を焼いているが、空軍力については、米軍の協力もあって、我々の方が優勢になった。これから、本格的に反撃を開始しなければならない。スターリンがうるさく要求している第二戦線をつくるためには、海を超えなければならない。それなのにこの有様だ。


 先日、東洋艦隊サマーヴィル提督からの報告でインドをどうするか悩んでいたのだが、これで増援どころではなくなった。予定していたイタリア方面への作戦は、延期せざるを得ないであろう。モントゴメリーからは増援の矢の催促だが、インド洋の安全どころか南大西洋の安全も不安定になった以上、大型の輸送船団は送れない。北氷洋のレンドリース船団も当面無理だな。スターリンの野郎、いい気味だ。しかし、アフリカの連合軍は大丈夫なのか。昨夜、アメリカ東海岸からモロッコに向かっていた補給船団が、攻撃を受けた。警護にあたっていた巡洋艦と大型輸送船12隻が行動不能となり、輸送艦のうち3隻は沈没した。さらに3隻は牽引する船がないため自沈させた。残りの6隻は修理のためアメリカ東海岸に牽引されている。人的損害は小さかったが、予定していた物資の四分の一も届けられない。チュニジア、イタリア攻撃のため、アフリカ派遣軍は増強予定だったが、ここへきて、海の存在が大きくなっている。海は敵から守ってくれるが、敵は海に守られてもいるのだ。


 イングランド南部の空軍基地の英空軍およびアメリカ第8空軍の4発爆撃機200機あまりがたった一日でやられてしまったので、当面、戦略爆撃の実施も不可能になった。せっかくドーバー海峡での空戦で勝利し、敵の爆撃をほぼ封じることができるようになったのに。

 それにしても、太平洋で圧倒的に有利になったはずの日本の行動が解せない。ガダルカナルから撤退したのはわからなくもないが、ソロモン諸島のコーストガードからの報告ではほかの島の連中までラバウル方面に撤退したらしい。偵察機からの情報では、どうも東ニューギニアからも撤退しているようだ。インドおよびインド洋方面も偵察行動はみられるものの、一向に攻勢に出てきていない。日本は、まだ強力な機動部隊を持っているはずだ。一番困るのは、インドのどこかに上陸してくることだ。とにかく計画を練り直さなくてはならない。まず、軍部の連中に現在できることを確認しなくては。それから、ルーズベルトに電話しよう。

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