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6.成層圏にて

 僕がこの時代の地球にやってきて、丁度一か月、1943年1月30日になった。今回の実験は、相当量の金属材料等を使用する予定なので、大型の船を使わせてもらっている。僕の住んでいたスペースファクトリには、万が一の時、住民全員が避難できるよう、200隻のシャトルが外周沿いに接続されているが、そのうちの一隻を使わせてもらうことになったのだ。このシャトルは、緊急時には約2000人が半年程度居住することを前提としており、長さ200メートル、幅60メートル、高さ40メートルと言うサイズで楕円状になっている。歴史実験に使われた船体としては、過去最大。なので、時空移動に要するエネルギーも過去最大量が必要となる。


 今回の人間の乗員は、僕と僕の彼女のエレノア・メディックの二人だけ。彼女の先祖は、まず間違いなく医者だね。彼女は、大学の同級生で、生物化学を専攻していたが、20世紀の生物相を確認したいということで、一緒に来ることになった。今回の実験は、長期にわたる可能性があるので、委員会も同乗者がいた方がよいということで許可してくれたんだ。まあ、僕が無茶な干渉をしないよう見張るのが、彼女の重要な役割ということになる。


 シャトルには、直径20メートルほどの球状の工作室がある。これは、21世紀には実用化された3Dプリンターの巨大なものと考えてもらうと近いだろう。工作室内の、温度、気圧、雰囲気は、必要に応じて変えられる。直径20メートルの球に収まるものなら、なんでも作れる。もちろん、材料は供給しなければならない。巨大なシャトルの通常なら生活スペースとなる部分に、各種金属などの材料を満載している。また、シャトルには通常でも、船外の補修作業や、船内のパワーが必要な作業をさせるために、2ダースほどのロボットを積んでいるが、今回は、3ダースに増やしてもらっている。このロボットが、必要な材料を、工作室の材料投入口まで運んでくれる。


 シャトルは、宇宙空間を移動する前提なので、隕石や宇宙ゴミが、船体を傷つけるのを避けるため、小型の射出機が16機、大型の射出機が6機、船外に配置されている。他にさらに小さなごみを破壊するための熱線レーザーが36機ある。今回は、この船外の射出機を活用させてもらった。熱線レーザーは、大気中を通過させると、光る上に威力が減衰するので、基本的には使わない方針だ。シャトルは、この時代に到着してから、基本的に成層圏を飛んでいる。地上20キロから50キロの範囲だね。この船体は頑丈だから、大気圏でも海中でも行けるのだが、巨体なので、そういうところを移動するには、随分エネルギーを使う。なので、今回の計画ではこのシャトルで地上に降り立つ予定はない。地上との直接のやり取りは、今のところ、超小型の昆虫型ロボットを派遣しているんだ。そのうち、作業用ロボットを派遣することもあるだろう。


 人間の脳の仕組みや記憶についての研究は、随分進歩して、何でもありのところまで来ている。しかし、当然、倫理的に大きな危険を伴うので、実施するには、事前に倫理委員会の承認が必要だ。何でもありとはいえ、いろんな場所にいる人物の脳に同時に干渉するのは、事前準備が大変だ。日本で最初に行なったが、次はドイツだな。今回の計画では、いろんな場所にいる人間の脳に、同時に干渉するのは、危険が大きいので、この2回と、場合によって1回だけ追加していいことになっている。日本はうまくいったが、ドイツはどうだろう。説得に失敗すると計画は大幅な変更を余儀なくされる。もちろん、プランBからZまで準備はしているんだが。

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