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48.1943年12月8日午後~トラック北東海上

 14時になって、日本空母艦隊から、強力なカタパルトによって射出された流星80機と紫電改40機が、敵空母艦隊を目指して発進した。アメリカ軽巡、駆逐艦隊は、なけなしのヘルキャット36機の護衛のもと、空母艦隊に向かってきたが、ちょうど追いついてきた重巡高雄、鳥海、摩耶の主砲の射程に入ってしまった。ヘルキャットは、ゼロ戦隊に追い散らされ、艦艇は次々と20センチ砲に捕えられた。乱れた戦隊に日本側駆逐艦7隻が、全部で28本の酸素魚雷を撃ちかけた。20分もたたずに動く軽巡はいなくなり、駆逐艦も大型のフレッチャー級は撃破されてしまった。日本の空母艦隊と重巡艦隊は、彼らを捨て置いて、アメリカ空母艦隊を追撃して去っていった。午後3時近くに、救助に勤しむ彼らの南方30キロあたりを、ゆっくりとトラック方面に向かう戦艦4隻と数隻の駆逐艦が見えたが、残された駆逐艦は救助者を満載しており、攻撃どころではなく、また、敵艦隊も撃ちかけることもなく去っていった。


 アメリカ空母艦隊は、正規空母が3隻ずつ3列に並び、その列の後方にインディペンデンス級軽空母がやはり3隻ずつ従い、空母の外側を10隻づつの駆逐艦がガードする変則的な陣形を取っていた。重巡インディアナポリスはこの艦隊の先頭を進んでいる。この大艦隊には不十分な、ヘルキャット18機が上空をカバーしている。

 14時半近くになり、戦場においてきた軽巡、駆逐艦隊の護衛をしていたヘルキャットが20機ほど次々と帰還してきた。着艦のため、若干、隊列が乱れた、その時、紫電改が護衛ヘルキャットに襲い掛かった。それに続いて、流星群が後方のインディペンデンス級に襲い掛かった。インディペンデンス級は2基の高角砲と40ミリボフォース機関砲を26門備えている。しかし、友軍機が上空にいる状況では極めて狙いにくい。自慢の近接信管付き高角砲も狙いを定めかねているとき、流星の急降下爆撃が始まった。40機の爆装流星は、5隻のインディペンデンス級に爆撃を敢行した。ボフォースの濃密な弾幕に、6機が撃墜されたが、5隻すべてに500キロ爆弾をたたきこんだ。3隻は複数弾の命中で、うち2隻が弾薬庫の誘爆を起こした。

 雷装の流星群は、左舷後方から迫ってきた。左舷側を守る駆逐艦の後尾2隻をまず捕え、それを飛び越えた38機は、混乱するインディペンデンス群の間に突入して、魚雷をはなった。空母群の猛烈な対空射撃に8機が撃墜されたが、放たれた30本のうち3本が、正規空母後尾にいたホーネットに、2本がレキシントンに、1本がイントレピッドに、そして、インディペンデンス級の2隻に一本づつ命中した。


 攻撃はほんの10分足らずで終わり、日本機は引き上げた。レキシントンと、インディペンデンス級3隻は沈没。ホーネットとイントレピッド、インディペンデンス級2隻は浮いているだけ、さらに2隻のインディペンデンス級は航行可能だが、甲板は使用不可能となった。


 スプルーアンスに悩んでいる時間はなかった。浮いているだけの4隻は人員救助が終わり次第自沈とし、航行可能なインディペンデンス級2隻に駆逐艦4隻をつけて、後を追わせることにした。重巡インディアナポリス、正規空母6隻とインディペンデンス級2隻、駆逐艦14隻にうち減らされたアメリカ艦隊が、再度ハワイを目指し移動を開始したのは、16時近かった。


 16時半に、別行動としたインディペンデンス級より、敵重巡の砲撃により航行不能となったので、自沈するとの連絡があった。駆逐艦に対する攻撃はなかったようだ。左右の後方から近づいてくる艦影をレーダーが捕えていた。なけなしの手持ちから2機のヘルダイバーを偵察のため発艦させた。右後方35キロに重巡3隻、左後方30キロに軽巡らしき4隻が高速で接近中であった。偵察機を拾う余裕はない。彼らには、別行動部隊の付近に着水するよう命じた。アメリカ艦隊は20ノットで進んでいたが、28ノットに増速した。しかし、日本艦隊は35ノット前後で接近し続けた。1時間後には、15000メートルまで迫り、後尾の駆逐艦、空母に砲撃を浴びせた。これで3隻の駆逐艦が脱落し、空母2隻も船尾に打撃を受けた。


 日が暮れようとするころ、1万メートル以内に迫った日本艦隊は、砲撃を続けながら、重巡は四連装4基の、軽巡は四連装2基の魚雷発射管から魚雷を放った。そして、速度を緩めた。右後方から48本の左後方から32本の酸素魚雷が、50ノットでアメリカ艦隊を追った。巡洋艦隊がこの魚雷を使ったのは、改装をうけてから初めてだった。【彼】は巡洋艦の魚雷に手を加えていた。基本性能はもとの酸素魚雷と同じだが、射程がより長くなっており、音響、赤外線、磁気の複合ソナーによる追尾能力を備えている。


 15分ほどして、アメリカ艦隊の後尾の艦船に次々と魚雷が命中し始めた。インディペンデンス級2隻には、4発づつ命中し、轟沈した。ワスプには5発命中し、船首を持ち上げながら沈没していった。駆逐艦4隻は一発で轟沈した。艦隊の中ほどに位置していたヨークタウンとバンカーヒルには、まさに無数の魚雷が船尾、両弦から命中し、大爆発を起こしながら波間に消えていった。左へ逃れようとしたエセックスは、船尾に1発、左舷船腹に2発くらい、動けなくなった。この間に駆逐艦3隻も大破沈没している。


 エセックスが方向転換したにもかかわらず魚雷を受けたのを見て、スプルーアンスは、魚雷に追尾能力があるらしいと考えた。雷跡はよくわからないが、後方海面を狙える砲や機銃には海面をたたかせつつ、それから20分以上、30ノット以上の全速で逃げていたアメリカ艦隊は、ようやく速度を緩めた。スプルーアンスは、先頭を走っていて生き残ったサラトガ、エンタープライズにそのままハワイに向かうよう命じ、自らは駆逐艦数隻を引き連れ、空母乗員の救助に戻っていった。

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