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33.1943年10月3日~日本海

 連合艦隊は、ウラジオストック沖80km地点で、航空機の発進を始めていた。間もなく、宣戦布告の時刻であるモスクワ時間午前9時、現地時間午後2時になる。艦隊は、全速でウラジオストック方面へ進み始めた。真珠湾の教訓から、敢えて、宣戦布告後1時間で戦闘に入ることにした。実際、駐ソ大使がモロトフ外相に会えたのは9時半近くだった。航空機は、艦隊上空で編隊を組み始めた。

 第一、第二機動艦隊は、全艦、ウラジオストック攻撃に参加し、樺太攻略の応援は、まだ貨客船改造を受けておらず、南方で航路護衛任務に就いていた、青葉、妙高、長良、川内といった巡洋艦が行うことになっている。

 現地時間午後3時、ウラジオストックまで40kmとなったとき、大和と武蔵の砲塔が動き出した。巨大な測距儀は以前と同じ姿をしているが、従来の光学測距儀以外に各種のセンサーが仕込まれていて多方面を探知しているらしい。砲術指揮所には、主砲3基と副砲4基それぞれに目標決定用の画面があり、それぞれ個別の目標を選択できる。目標を選択すると、各砲塔は、相対速度、砲弾の飛翔時間、風向などを考慮しながら、自動的に砲身角度等を調整し続ける。

「撃て!」

 合図とともに、大和、武蔵の主砲が吠えた。主砲の3門は、右から0.5秒の時間差をおいて発射された。衝撃とともに白煙が艦上を覆うが、すぐ消える。白煙は水蒸気らしい。


「全目標に着弾!」

 偵察機彩雲より連絡があった。2斉射したところで、最初の目標であった、ウラジオストック要塞は粉砕された。30km近くになると長門、陸奥の41センチ連装砲塔が吠え初め、湾内の艦船をたたき始めた。わずか10分ほどで、文字通り、何をする暇もなくソ連極東艦隊は消滅した。戦艦群は、機雷を慎重に避けながら、さらに湾内深く侵入し、市街地を飛び越えて、郊外の陸軍基地や空港をたたき始めた。岸壁にT34が3両出てきたが、長門の高角砲が片づけた。あまり港湾施設を破壊したくない。


「少尉殿、少々揺れますぜ。」

 奥村上飛曹は後席の若い少尉殿に声をかけながら、飛んでいる奴がいないか探したが、見当たらない。仕方ない。駐機しているやつをやるか。やっと、このゼロ戦99型の実力を試す時が来たというのに、据え物切りか。Ar-2やSB爆撃機の列に突っ込んでいった。その時、空港脇の機銃座が目にはいった。何人かが取り付いて操作しようとしている。10機あまりに20ミリをたたきこむと、上昇、急旋回して機銃座に向かった。銃身をこちらに向けようとしているところに、銃撃を浴びせた。ロシア人にも根性のあるやつがいるな。感心したところで、滑走路から飛び立とうとしているYak戦闘機を見つけた。またまた、急旋回すると後ろについて、飛び立ったところを銃撃した。Yakは右にはじかれたようになりながら地面に激突した。

 上昇し、また据え物切りかと思いながら、振り返ると少尉殿が蒼い顔をしている。

「少尉殿。まだ始まったばかりですよ。」


 満州牡丹江市方面から、ウラジオストック北方のウスリースク目指して、日本、満州連合軍は、あるかなしかの山道に苦労しながら前進していた。国境の敵軍は、航空機が片づけた。しかし、履帯を破損して動けないT34が一両頑張っていて、トラックが3両やられた。周囲に歩兵もいない状態だったので、なんとか肉薄攻撃で片づけた。ところどころにあるトーチカが難物だったが、ウラジオの艦隊と連絡がとれたので、流星にかたずけてもらった。今回の沿海州作戦に参加した日本軍は10個師団、満州軍は4個師団である。ハバロフスク攻略を目標とする。恐らく、沿海州方面のロシア軍は20~30万とおもわれ互角であろう。装甲兵力に大差があるので、航空機頼みである。

 

 支那派遣軍は、既に半分以上引き上げている。中国国内は、共産党がゲリラ的にあちこちでテロ攻撃を仕掛けており混とんとしているが、積極的には関与しない方針である。引き上げてきた部隊は、一旦、満州の営口で解散し、帰国組と残留組に分かれる。関東軍にも帰国組はいるが、再編してできた新たな師団は、25歳未満の精鋭部隊である。現在、関東軍配下に24師団がいた。チタ、モンゴル方面はとにかく持久。沿海州方面のみ攻勢となっている。満州軍は、現在9個師団ある。占領した沿海州は満州国領土とする方針で、皇帝溥儀は大喜びで参戦してきた。各所にできた要塞で気が大きくなっている。国民党政府と合同の話し合いがもたれて居るが、皇帝溥儀が反対してなかなか進まないようだ。日本政府と満州政府首脳は、説得を継続するが、場合によっては退位を強制するしかないと秘密裏に話していた。

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