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3.ガダルカナル島ヘンダーソン基地

 1943年1月20日の日も暮れた。ガダルカナル島派遣軍の指揮官である、陸軍少将アレキサンダー・M・パッチは、ミーティングを終えて、自室でくつろいでいた。日本軍はまだ数万いると考えられるが、物資、兵器の補給はおおむね阻止できており、島の西端に追い詰め、大規模な反撃はないだろうと考えられた。しかし、この島での戦闘でアメリカ軍は既に1万5千もの死傷者を出しており、無理な攻撃で損害を増やすことは避けなければならない。


 パッチは、飛行場の方で、銃撃音のような音がすることに気が付いた。まさか、日本軍の奇襲だろうか。何重もの警戒線を突破してこの基地に近づくなどありえない。ここ2か月ほど大規模な戦闘はなく、少々倦怠感が漂っているのは気になっていた。急いで外に出ると、滑走路のほうに向かった。兵たちが走り回り、大声で叫んでいる。士官の乗っているジープを見つけ、呼び止めた。


「何が起こっているんだ。報告できるか。」

「はい。今確認中で正確なことは分かりませんが、駐機していた航空機がダメージを受けているようです。」

 航空攻撃か。しかし、レーダーサイトからの連絡もなく、爆音も聞こえない。そもそもこんな夜間に航空攻撃が可能なのか。

「とにかく、なるべく早く確認して、報告してくれ。」

 急いで宿舎に戻ると、連絡将校が待ち構えていた。

「将軍。大変です。」

「何事だ。」

「湾内に停泊していた輸送船、魚雷艇、駆逐艦など26隻がいずれも船尾に打撃を受け、行動不能になったとのことです。一部、船尾からの浸水で沈没したものもあるようです。」

「船尾に打撃?爆撃か?」

「いや、はっきりしないのですが、甲板から艦底に垂直に穴があいているとか。」

「それなら、砲撃か。しかし、爆発音はなかったが。」

「どうもよくわかりません。衝撃があって、気が付いたら穴があいていたとか。」

「そんな馬鹿な。とにかく状況を整理して報告しろ。」


 やりとりしているうちに通信将校が走ってくるのが見えた。

「将軍。大変です。」

「今度はなんだ。」

「太平洋艦隊からの連絡です。第18任務部隊の護衛空母2隻、重巡3隻、大型軽巡3隻及び、エンタープライズ、サラトガ、さらには戦艦ワシントン、ノースカロライナ、インディアナが、エファテ島沖で打撃を受け、行動不能とのことです。また、ソロモン海域に展開している潜水艦4隻からも、洋上で艦尾に打撃を受け救援を求めています。」

「いつのことだ。」

「数時間前のようです。」

「何かわからんが、日本軍から攻撃をうけているようだ。」


混乱の中夜が明けた。入ってくる情報は、不可解かつ悪いものばかりだった。ヘンダーソン基地に駐機していた150機以上の航空機は、ほとんどがエンジンに直上からの射撃を受けて破壊されていた。飛行可能なものは、格納庫で修理中だった機体8機ほどしかない。これでは、いつもの日本軍機の来襲を追い払うこともできない。また、この海域の機動部隊はもちろん通常哨戒海上戦力も、一部の駆逐艦、哨戒艇を除いて行動不能になっていた。オーストラリアの南西太平洋方面司令部と連絡を取ってみると、より悪い知らせがあった。オーストラリアの数少ない残存巡洋艦であるホバートとオーストラリアが停泊中に船尾に打撃を受け行動不能となったらしい。海上戦力が皆無に等しくなってしまったので、日本の大規模な逆上陸が予想される。とりあえず基地に戦力を集中し、敵の来襲に備えるようにとのことだ。


 太平洋方面軍司令部と連絡を取ってみても似たような状況で、急ぎソロモン方面に艦隊をおくるべく計画中であるとのことだった。

「仕方ない。西方に進出中の部隊は、一部監視部隊を除いて基地に撤退するよう指示しろ。それから、まだ沈んでいない湾内の補給艦からの物資の上陸を急げ。」

 悪い情報ばかりのようだが、航空機、艦船に多大な損害があったにも関わらず、人員の損失は極めて小さいというのが救いだった。主に艦船の船尾近くにいた人間が巻き添えを食ったくらいだ。なぜ炸裂弾を使わないのか。多分この新兵器の欠点なのだろう。そして朝になってわかったことだが、基地の被害は航空機だけではなかった。貴重なM4とスチュアート合わせて20台の戦車が、やはり後部エンジン部の中央に穴をあけられて破壊されていた。

「大規模反攻が予想されるなら装甲戦力は不可欠だ。南西太平洋方面軍に補充を要請しよう。」

 いつどこから反攻があるのだろう。今なら、このヘンダーソンの沖合に敵戦艦が現れてもどうしようもない。昨年10月にあったという戦艦の艦砲による攻撃が繰り返されるというなら悪夢だ。

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