24.1943年7月2日~ダブリン
ロッキード コンステレーションに乗って、ルーズベルトはチャーチルに会いに来た。このエールという国は、戦争に対しても中立的立場にあり、一応の安全地帯と思われた。
「スターリンが、」
ルーズベルトが言いかけると、チャーチルが引き取った。
「ドイツから講和を提案されたようですな。ヨーロッパに至急第二戦線を作るよう要求している。3か月以内に上陸作戦を実行しないなら、講和を検討するしかない。と言っているとか。」
「それだけではない。至急、戦車と航空機を送れ。さもないと現在の戦線を維持できない。とも吠えていますな。」
「ドイツから、先の会戦でのロシアの捕虜と、スターリングラードでのドイツ側の捕虜の交換を提案されたが、ドイツ兵の捕虜が、冬の間に不可抗力で減ってしまったのをどう説明しようかと珍しく弱気でしたな。」
「捕虜をどう扱っているのか想像できます。ところで第二戦線の件ですが。」
「不可能でしょう。シチリアにはドイツやイタリアの大軍がいるようですが、我々は増援を送るどころではない。」
「チュニジア、シチリア上空では、戦闘機同士が連日闘っているようですが、味方機は日に日に減少しているのに、敵はだんだん増えているとか。モントゴメリーが、このままでは、第8軍は立ち枯れてしまうと毎日文句を言ってきます。」
「護衛空母6隻を派遣したのですが、大西洋の真ん中で破壊されてしまいました。やっと数がそろったと思ったらこれです。西海岸の艦隊は、無事にハワイに進出できましたが、それ以上西へやるのはためらわざるを得ません。」
「例のあれの正体ですが。」
「わが軍の高高度偵察機が、姿を目撃したといっていますが、相当な高度を高速で飛び去ったので写真も撮れなかったようです。」
「何者でしょう。ナチスや日本が開発したものとは思えません。」
「敵に味方しているのは確かだが、その気になればできるはずなのに、人員の殺傷を嫌っているようです。わが軍では、大型艦船の乗員は、艦尾付近は特に必要がない限り近づかないようにとしていますし、艦尾に行くよう命令された兵が命令拒否をしたという事例まで出ています。」
「ドイツや日本の仕業なら、我々の首都を直接攻撃できるはずだ。何者かわからないが、戦争をやめさせようとしているのでしょうか。」
「それはできない。あなたも敵の無条件降伏まで闘うと約束したではないですか。」
「しかし、中国に続いてロシアまで脱落となると…」
「我々は現在、切り札になりえる兵器を開発中です。それまでなんとか持ちこたえる必要がある。」
「地中海にはまだ軽巡と駆逐艦が合わせれば40隻はいます。それで上陸のポーズだけでも見せてスターリンを落ち着かせるのはどうでしょう。レンドリースも護衛空母なしでは不安ですが、3000トン以下の輸送船は攻撃されていませんので、それを駆逐艦に護衛させてやってみてはどうでしょう。どうやら講和条件に、バルト3国、ベラルーシ、ウクライナの独立が含まれているので、スターリンとしては飲みたくない。戦争継続の言い訳が欲しいのでしょうから。」
「レンドリース実行のは賛成です。大した量は運べませんが。上陸作戦は、それだけでは火力が不足しますので、駆逐艦にロケット砲を載せたものを至急作りましょう。」
ホーカーハリケーンやスピットファイアも増槽をつければ、フランス沖経由でアルジェリアまで飛ばせるだろう。スペインが給油を認めてくれればいいが、枢軸よりの中立なので無理だ。とにかくできる限りの増援をしてやらないと、シチリア攻撃がディエップの二の舞になってしまう。
ディエップの戦いは、1942年8月19日に行われた連合軍のフランスへの奇襲上陸作戦。不充分な兵力と作戦のため最初から勝算は薄かった上、事前に作戦実行の秘密がドイツ側に漏れていたため、連合軍は大損害を受け、完全な失敗に終わった。 と、Wikiにあります。




