16話 ちょっと休みたい
「はっ!」
エキドナがミサへと接近する。
ミサはナイフを引き抜き剣を受け流す。
「凄っ!」
何あれ。
すっとナイフを横払いしたかと思ったらエキドナの剣が地面を衝突した。
受け流しだとは思うけど、あんな素早く、しかも予備搭載なしに出来るもんなの?
ミサはナイフを何が起こったか分かっていないエキドナの首に立てる。
「これで私の勝ち、だね」
エキドナの手がプルプル震えている。
そして、半泣き状態で「もう1回!」と叫んで、ミサは「いいよー」と応える。
10回、20回とやってもエキドナが勝つ事は無かった。
しかし、エキドナは何十回負けようと挫ける事は無かった。
何回でも立ち上がってミサに剣を向けて突き進む。
その姿はさながら、ただを捏ねて親に突撃し、優しく慰められているような光景だった。
ミサはミサで、少しだけ涙を流しているエキドナを見て、そろそろ負けようかなと考えている気がする。
そのような哀れみの目をエキドナに向けているのだ。
「手加減は無用だ」
「うん。私も疲れちった。そろそろ昼飯だし、休まね?」
「まだだ!」
「はぁ」
刹那、空気が凍り付く。
声が出せない。ミサから出される威圧と言うか、言うなれば殺気。
その殺気が空気を凍り付かせ周囲の人の行動を止める。
汗が垂れるエキドナ。
「そうだな。我の完全敗北だ。ガイア様も守る者として、これからも精進するとしよう」
「殺って来た数と経験が違うのよ」
それから数日。
アパートの数も増やして人家族に1つの部屋、という感じて徐々に出来るようになった。
僕達が暮らしている家の方は強化も何もしていない。
まだ使える余裕がないのだ。
そして今日は新たに建造をする事にした。
既に建造ポイントがインフレを起こして、もう困る事は無いだろう。
今回は700ポンイトと300ポイントを使っての建造だ。
「建造、700」
黒光が出現して中から出て来たのはゴツイおじさんだった。
おじさんは回りを見渡す。そして、開口一番に。
「俺、ついに死んだか。ま、悔いのなかった人生は謳歌出来たかな。あぁ。最後に、最後にもう一度、チラチラちゃんの声を聞きたかった、ぜ」
そう言って寝転ぶおじさん。
僕、ミサ、ミオ、ミシルの前で寝転ぶガタイの良いおじさん。
これは起こすべきだろうか?
「あ、あの」
「はい。もしかして貴方は俺を⋯⋯って天使ちゃんじゃねぇじゃねか! 誰だ貴様!」
「ミサ様、このクソジジイ、コロがして良いですか?」
「いいんじゃね?」
「ダメだよ!」
色々と話をすると、このおじさん、陸斗さんもミサ達と同じ日本と言う所から来たらしい。
「俺は刀鍛冶で食っているくらいに凄い奴だ」
自分の事を親指で指しながらそう叫ぶ。
腕の筋肉がいちいち動くのが気になって、そっちに注意が行く。
僕はヒョロヒョロだからね。はは。
ミオにリクトさんの事は任せ基丸投げして僕達は次の300ポイントの建造を始める。
青い光が周囲を照らして、中から二足歩行の狼が出て来た。
再び魔物の登場。ミサとミシルが警戒している。
「⋯⋯肉は、無いか」
そう二足歩行の狼が言うと、ばたりと倒れた。
ぐーっと大きなお腹を鳴らして。
ヌオーやラオに慣れてくれた住人達でも流石に二足歩行の狼が来たら驚いた。
しかし、ミサが運んで来た事もあって何とか騒ぎには成っていない。
ただ、狼の頭に沢山の土が付いてしまったけど。
鹿の肉を焼いて持って行くと、二足歩行の狼が立ち上がり肉の前で止まる。
そして僕につぶらな瞳を向けて来る。
僕が食べて良いよと言うと、肉を取って食べ始める。
「ガイアお兄様、この人? 魔物?」
「お、ガイア様って言うんか。べっぴんな妹はんやな」
「べっぴん?」
「特別に良いって意味でっせ。いやはや。空腹で死にかけた所助けて頂き感謝感激雨あられでございますでっせ。これからガイア様の為に立派に働きますんで、今後ともよろしゅな」
良く分からない言語を使いながらその⋯⋯名前なんだろう。
「ワイはな、雑魚って言う名前さかい。よろしゅう」
な、なんか可哀想な名前なんだけど。
他の名前が欲しいかと聞くと、別に入りまへんと応えた。
「にしても、よーこんな危険な所に拠点作とりますね」
「危険? 海の魔物の事?」
「ちゃうでっせ。この島、ダンジョン副産物さかい」
だ、ダンジョン副産物?
なんそれ。
じゃない。何それ。
「ほう。それは気になるな」
「私も聞くよ」
「ガイアお兄様が聞くならわたくしも」
ザコの話を要約するとこうだった。
ダンジョンは神によって生み出される無人迷宮とダンジョンマスターと呼ばれる人口迷宮に別れるらしい。
ダンジョンマスターがダンジョン建設の場所を決め、そこに土地が無い場合、土地が生成される。
そこが大きく栄えると島が発展し、大陸になると言われているらしい。
実際はそんな事はなかった。
そうじゃないといずれ海が無くなってしまうかららしい。
「へぇ。だから同じ場所に豚がわくんだな。チョックラダンジョンとやら探してくるわ」
「美沙はん。ワイも行くで」
「えー雑魚って名前で戦えんの?」
「無理でっせ」
「なんで来んの」
「ワイの鼻があれば、ダンジョンの入口を探せまっせ。オークが出て来る時の臭いの道を辿ればダンジョン入口を見つけれまっせ」
「うっし。じゃガイア行ってくるわ」
「うん。気をつけてね」
「この島最強の人間に任せな」
刹那、森の中から「うぎゃあああ!」と悲痛の叫びが聞こえた。
悲鳴ではない。嘆きだ。
聞いて聞かないフリをしておくのが、その人の為だろう。
編成はミサとザコ、シラハ、ミネである。
ミネとアミノは離れていても意思疎通が可能で、ミネが手に入れた情報をリアルタイムで共有して貰う。
ナカサさんが大きな鳥の魔物を使っての郵送で農具などを持って来てくれたので、働いている人もいる。
住人が作った畑は強化のみを施せば良い。
他にも設備を充実させたいがクラフトポイントが足りない。
一気に増えるとこう言う問題があると分かったのは良かったけどね。
リクトさんは鍛冶師らしいけど、鍛冶場はまだ作る事が出来ないので当分暇人だ。
ただ、この世界の事を知ってもらう為に住人の人達と親睦を深める意味を込めて会話をして貰う。
ミサ達を送り出し、僕達は家に入る。
そう言えばニュクスのスキルってなんだろ。
後で鑑定しよう。最近つめつめで過ごしていたから、少し休みたいな。




