6話 世界樹
森の荒地、ルシスが居た場所にサリバンは、訪れていた。
「やはり器は、ありません。天空人が何処かに隠したのでしょうか?」
≪そうだね。捜索を引き続き頼むよ。僕は天使達に通達しておくから。≫
サリバンの頭の中から声が消える。そして思考する。
予言した通りなら、器の捕獲に成功していた。だが私は、失敗している。
主が許しても他の【聖導九天】が許さないし、立場は低く発言力を無くす。ならば自分で見つけて捕獲するしかない。
サリバンは、空に舞い上がり捜索を開始する。
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「でかぁあああ!!!!何じゃありゃあ!」
歩いて五日、森を抜けると。目に入ったのは、デカいなんて、表現ですら足りないくらいの樹だ。
世界樹がデカいと書物で知ってた。それにしてもデカすぎる!あの上にマゴニアがあるとデュナミスが、教えてくれた。
「世界樹を見たコトねえって事は、ルシス坊は、神星国の出身か?」
冒険者のワイル達が言うには、神星国は世界樹の真反対にあり、海に囲まれた国だそうだ。神星国以外の国なら世界樹は何処でも見れるらしい。
「まあ、そうだな。」
話しを合わせて返事をすると、もう一人の冒険者、ドーンが珍しいと言う。神星国の住人は、聖職者か商人しか、国から出て来ないそうだ。
「そろそろだな。ほら、砦が見えて来たぞ。」
ここは、聖竜王国の領土で、森から来る魔物を狩るために出来た街、ドレイクフォート辺境都市。
中央に世界樹、世界樹を囲む用に森がある。東に聖竜王国。西に戎虎帝国。北は中立国アクアパーラ。それと神星国の四国が、今現在ある国らしい。
「ルシスは、冒険者になりたいと言っていたな?」
「おう!まずは、冒険者になって金を稼ぐ。」
ドーンに返すと思案顔になる。ここ五日間、寝食を供にして、かなり仲良くなったと思う。ワイルは、三十歳で腕利きの冒険者で、俺を子供扱いする。ドーンは、ワイルと幼馴染で無口だが優しい。
「困った時は、言え。冒険者以外でも稼ぐ場所を紹介してやる。」
「ドーン、ありがとうな。」と返し先を進む。
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マゴニア大陸・テンペスタ国・王城・執務室
「ルシスは、五日程前から動き出した。アイツんトコ行くぞ。んじゃあな。」
男は、無精ひげ、ボサボサの髪で服もヨレヨレで王城に入れる格好では無い。その男は、伝えたい事は終わったと執務室から、出ていこうとする。
「待て、ベリアル。その...あいつ等も「ガキのお守り出来る状況じゃねーんだよ。平和ボケしてんじゃねぞ!!テセウス!」
テセウス・この国の王であり、リリーの父である。金色の短髪にリリーと同じ水色の目をしている。本来なら覇気のある顔つきをしているのだが、机に肘を置き額に手を当てて、項垂れている様に王の威厳すら感じられない。
ベリアルは、嘆息してテセウスに近づき小声で、話す。
「この国に間違いなく裏切り者がいる。気を付けろよ。」
テセウスは、理解しているとベリアルの目を見て頷く。
ベリアルは、もう用はないと今度こそ執務室を出る。去り際に
「あと、悪ガキ達は精霊共に任せろ。あいつ等を脅してから行く。」
と言い出ていった。
.........執務室から出て、ダルそうに廊下を歩くベリアル。その姿を見つめる七人の人影があった。
「よし!!師匠に気配察知されてない。このまま追うぞ。」
《もう辞めようよ。さっき凄い寒気がした。》
《ああ、ベリアル様に殺される。辞めるぞ。》
「確かに怒ると怖いけど、大丈夫だって。」
「このまま追うわよ。」
「リリ、足音気を付けてね。」
《我は悪くない、我は悪くない。》
七人と七柱の精霊は、色々な想い、思惑を抱いて後を追う。