5話 デュナミス
退屈だー。魔物は、見つかったが、スライムばかりで、襲って来る事もない。一向に森を抜けず、歩いてばかり。そんな事を考えてると...強者の気配、圧力が、俺に向けられてる?
『来るぞッ!!』
空から、凄い速さで落ち、地面が陥没して煙が上がっている。俺は、戦闘態勢に入り、飛び込もうとした時。
「あれれ?カイン様の気配がしたんで、すっ飛んで来たんですが...あなた、誰です?」
煙が晴れて、敵?の姿が露わになる。背丈は、俺と同じくらいで、執事服を着てるから、たぶん男だと思う...金髪金眼のショートヘアーで、美少女にも見える。身体は、すらっとしていて、胸は...ナイ。
ゴツン!!!
「いってぇえ!!何するっ!?」
「それは、こちらのセリフですよ。人の身体を不躾に、ジロジロと。それに私は、あなたに誰か、と問いました。もう一度ゲンコツを味わいたいですか?」
「お、俺は、ルシスだよ!!お前こそ誰だよっ!」
た、確かに身体を見たけど。俺は、頭を抑えながら、睨みつける。
「う~ん、ご存じないですね。...安心なさい、そこの大精霊。敵意は、ないですよ。あなたは、カイン様の何です?」
確かに、敵意も殺気も感じないが、ズーは、それでも警戒をしてる。
「俺の知り合いに、カインて名前は、いねぇし、知らねえよ。」
『うむ。確かにいないな。では、先に進ませてもらおう。』
ズーは、話を切り上げて、早く離れたい感じを出してる。俺も別れの挨拶をして立ち去るか。
「んじゃあ、これで「お待ちなさい。」
だよなー。そんな気はしたよっ!
「大精霊、あなたも説明なさい。」
ズーは、嘆息して渋々、話し出した。_____
「中々に楽しい経験をしておりますね。」
(地獄で出会った男は、間違いなくカイン様ですね。天空人、天使の襲撃、カイン様の印、ルシスが現代の器という事ですか...この子は、このままだと...)
「ルシスは、直ぐ死にますね。」
「何であんたに、ンなこと言われなきゃッて!?ッッッイタぁ~!!」
「あんた呼ばわりとは、失礼ですね。私には、デュナミスと、ああ、仰ってませんでしたか?失礼しました。以後、気をつけなさい。」
良いですね?と、笑顔で握り拳を見せてくる。ってか、いつゲンコツ喰らったのか分かんねぇ。速すぎだろッ。
「あなた達に御一緒させて頂きますよ。私が守って差し上げます。」
「なっ?勝手なこと言うな!俺は、守られる程、弱くない!!」
『いや、お前は弱い。ワシは、賛成だ。』
...結局、デュナミスは、一緒に行くことになった。俺に拒否権は無いんだな。
森を暫く歩いてると、二人組の男に出くわす。
「ん、お前ら、ナニモンだ?この奥から来たのか?」
一人は、腰に提げた剣を手に添えて、もう一人は、槍を持っていて、どちらも俺達を警戒してる。
「おぉ、これが書物に載ってた、盗賊って奴か?」
「「誰が盗賊だッッ!!」」
「ルシス、この方達は、冒険者です。盗賊は、声も掛けずに襲って来ますよ。それに武器の手入れも疎かにします。覚えておきなさい。」
「おお!デュナミス凄いぞ!」
俺は、デュナミスに尊敬の眼差しを向ける。それから、改めて冒険者の二人を見る。
凶悪顔だが、確かに武器も防具も手入れがされている。
「ああ、俺達は冒険者だ。街に向かって、森から魔物の大群が来た。んで魔物達を一掃したから、森に調査しに来たって訳だ。」
「そこで君たちを発見したんだが...執事服?君は、服がボロボロだが、大丈夫か?」
デュナミスは、小声で話しを合わせなさいと言って、俺が金持ちのお坊ちゃんで、森の中を探検したいと我儘を言ったから、と噓をつく。
俺は、うんうんと頷く。
服がボロボロなのは、興奮して走り回ったからと言う。冒険者は、馬鹿だなーコイツ。みたいな目で俺を見る。
デュナミスを睨むとニッコリと笑顔を返された。それから、街まで一緒に案内してくれると聞き、「よっしゃー!」と興奮して、ガッツポーズをしてしまった。
冒険者は、苦笑して、デュナミスは、クスクス笑っている。
それからズーは、気配遮断して何処に居るか分からないが、嘆息してるんだろうな。