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三題噺RTA

三題噺 「感情屋」・「梅雨」・「サンタクロース」 タイトル:「梅雨患い」

作者: 影咲シオリ

「クリスマス・イヴってのはね、家族と一緒にいないといけないんだよ」


 昔マスターが教えてくれた話だ。


「クリスマスってのは元々は太陽の誕生日だったんだよ。冬至の日、昼が一番短い日に太陽は死に、翌日生まれ変わるという話なんだがね、何も宗教的な話ってわけじゃあないさ。夜が長いと誰だって不安になる。そういうときは家族といるべきなんだよ。一番夜の長い日は、人が一番不安になるというわけだ。人間が一番さみしい日がクリスマスイヴなんだ」


「まー環境が人に与える影響は馬鹿にできないって話だよ」


 その頃は私も若かったので、そんなものかと思って聞き流していたのだが、齢30を超えるころになると冬の訪れとともにその言葉が自然と思い浮かぶようになった。

 人には一人でいてはよくない時期というものがあるのだ。


 ここまでが前置き。

 ここでクリスマスイヴのその日に出会った異国の女性とのロマンチックな恋話について語ることができたら素敵だったのだが、どうやら僕の人生にそんな洒落たイベントは用意されていないようだ。その代わりに


  ポールシフトが起こりました。


 これが本題だ。

 ポールシフトとは、地球の地軸が移動する現象をいう。

 羅針盤の例を説明するまでもなく、地球は大きな磁石であり、北極にはS極、南極にはN極がある、いや、あった。しかし、それが地球誕生以来何度も入れ替わっていることまではご存じだろうか。

 知らなくてもいい、それがまさに起こった。そのついでに地軸の傾きまで変わってしまった。世界は大混乱に陥った。

 天変地異のドミノだおし。人工衛星はすべて使い物にならなくなって、GPS他多くの文明の利器が使い物にならなくなった。

 しかし、そんなことよりも我々にとって大問題なのは、四季が逆転してしまったことだ。

 春は秋に、夏は冬に、秋は春に、冬は夏になってしまった。

 七夕の日に織姫と彦星が出会うこともなくなり、バレンタインデーには真夏の日差しの元でチョコレートを渡す羽目になった。

 日本の政治家は大挙してオーストラリアに視察旅行を行い、オージーなやり方の教えを請うた。

 クリスマスは丁度、梅雨の時期だ。当然、ケーキの売れ行きは半減した。

 当初のサンタクロースは水着姿だったが、クレームが入り最近は浴衣姿になった。

 元々、でっち上げの誕生日なのだから、クリスマスを6月25日に移動させる案も出たが却下された。

 反対したのは12月25日生まれの人々ではなく6月25日生まれの人々だった。

 6月なんて何のイベントもない時期だから、クリスマスくらい喜んで引き取れよという世論もあったが、6月生まれは案外、祭日のない6月に誇りを持っていたりした。

 父の日が近くにあったのも、よくなかった。

 イエスの誕生日が近いとなると、父の威厳もディスカウントされてしまうというのだ。

 そんなこんなで梅雨の足の悪い時期にクリスマス商戦を戦うことになった。

 クリスマスの当日は、乾かない洗濯物を部屋干ししながら靴下だけはベッドに置かなければならない。サンタさん、間違ってお父さんのパンツにプレゼントを入れないで。

 寝苦しい夜が続く梅雨の時期だ。誰かといたいという気持ちも失せてしまった。聞いた話ではクリスマスベイビーもめっきり減ってしまったらしい。

 雨が多いせいか、先生と呼ばれる人たちもあまり走らない。

 今年も除夜の鐘を聞きながらそうめんを食べるのだろうか。

 そして年が明ける、気持ちは切り換えて、だけれど梅雨はもう少しだけ続くんじゃよ。

 何だろうこのモヤモヤとした納得のいかない感じ。私は感情屋なのだろうか。

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