プロローグ
「やっぱり寒いね」ショッピングモールを出て隣にいる制服姿の女の子はそう言った。
『そりゃ12月だからな、寒くなるのは当然だ』
そう女の子に答えると、女の子は「寒いなら手を握ればいいよね」と言い僕の手を握りショッピングモールの外にあるクリスマスツリーの下に引っ張っていく
『おい、おい早く帰るぞ』ツリーの下行ったらあの言葉を言われると思い帰ることを言い訳にして足を止める
「じゃあ、ここでもいいよね」そう女の子が言うと
「私は」
やめてくれそう心の中で思う
「私は君の事が」
やめてくれまた心の中で思う
「私は君の事がす・・」最後の言葉を言いかけたその時少し離れた場所から悲鳴が聞こえてきた、とっさに悲鳴の聞こえた方向を見ると包丁を持った男がこちらを見ていた。
周りの人は慌ててスマホで110番をしているようだ、これなら大丈夫かそう思うと男がぶつぶつ何か言っているようだ、何を言っているのかと思い聞こうとすると男は大声で「こんなところで!幸せにさせるか〜!」と言いながらこちらに向かって走ってきた。
何を言っているんだと思い一瞬目を男からそらすと、すぐそこにきていてここで男が女の子を狙っていると気づき女の子の前に出てかばうと腹部から強烈な痛みが走った、痛みの原因を見るとお腹に包丁が刺さっている。
刺されたことに気づきその場で仰向けで倒れると男が「おまえが悪いんだ!かばうおまえが!」そう言うと男はどこかに走っていったすると周りの人が「キャー」「早く救急車をよべ」などが聞こえてきたが、助からないのは自分の方がよくわかる、そう思っていると女の子が隣で「何で!どうして!私たちばかり!あの時だって」と言いながら血溜まりになっていく僕の横で座りこんで泣いている。
僕は力を振り絞り女の子の手を握り『聞いてくれ』そう言うと女の子は「何?」と泣きながら返事をした『あの時のことだよ』そう言うと女の子は「いいから後でいいから!今は」女の子の声を遮るように『あの時僕は、守れなかった』「いいんだよ、あの時は小学生だったじゃん」女の子はまた泣きながら返事をした『違うんだあの時僕は守れたはずなんだ、一番近くにいて武器になりそうな物もあった!なのに、なのに僕は、一歩も動けなかったんだよ。それと君の気持ちには答えられない、きっと僕なんかよりいい人が君の前に現れてくれる』女の子はうつむき「いないよそんな人」と泣いていた、感覚がなくなってきて次の一言が最後だろうと思い
最後の力を振り絞る『今度は・・守れたよ・・だから泣くなよ・・凛』そう言い切ると女の子の手を握っていた手は力無く地面に落ちた。
女の子は肩を揺すりながら「ねぇ!起きてよ!おきてよ!何で!何で笑ってるの!何で、何でなの」と冷たくなっていく僕の胸で泣いていた。
遠くなる意識の中『そんなに泣くなよ、これじゃあクリスマスどころじゃないだろうな、あぁやりたいこといっぱいあったな。ああ、もしもやり直せるなら守れなかったあの子がいる時に』 そう思い意識は途切れる。