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アホの子乙女とアホの子坊ちゃんの直球な恋のお話  作者: コーラルピンクフォレストグリーン
7/14

7 雑な恵み

 






 ウム指揮官に魔法を披露してもらいつつ、3階級とはあなたはもしや格闘家なのかと的外れな質問をしつつ、それが爵位のようなものだと教えてもらいつつ、ここに来た目的を聞かされつつ、空は久しぶりの会話を楽しんだ。



 ひとしきり楽しんだ後で改めて少し先に座っている男を観察する空。

 色づいたイチョウ並木のような髪色のそこそこ整った顔の少年、といった感想しか抱かなかった。少し獣臭がするとも感じたが。

 その少年はたくさん褒められて満面の笑みだ。



「水と食べ物持ってきますから元の場所まで下がっててください……マリネさん」



 危ない人達では無さそうだったので本来の口調に戻った空はお願いするが、『マー・オット・イルマリネン』という名前で馴染みがある部分『マリネ』しか耳に残っていなかった。



「おおそうか! 感謝する!」



 名前間違いを気にすることなくマリネ少年は笑顔のまま元の場所までずりずりと這い戻り部下にぶつかり文句を言われていた。



 それを見届けた空は扉の鍵をしっかり閉め倉庫にダッシュ。木製の大きなボウルにロールパンをどさどさ積み上げ、ペットボトルの水を大きな瓶にいくつか詰め替えた。おまけでおすすめリンゴジュースとワインも1本ずつ追加。

 さすがの空でもそのまま渡すのは良くないとわかっていた。


 何も書かれていない木箱にそれらを詰め、目に入った木製コップもついでとばかりに押し込む。台車に載せがらがらと扉まで戻って来た。そして玄関ポーチに木箱を移動させる。



「扉を閉めたらこの木箱を取りに来てください。ここ夜は危ないので気をつけて。ではさようなら」



 拡声器を使いそう伝えると空はログハウスに引っ込んだ。もう野生の男達と関わるつもりはなかったのでこれから倉庫に立てこもるのだ。

 だかしかし、外から聞こえてくるマリネ指揮官の大声の謝辞の合間に「あいつらにも持って行ってくるので俺の分残しといて下さいよ!」というある男の言葉がどこか引っかかった。

 なにか……ざわざわする。



 顔が痒くなってきたので目出し帽を脱ぎながらざわざわの原因を――



「っやべえ」



 そのまま方向転換、空は走って鍵を開け勢いよく扉を押し開ける。とガァゴンッと明らかに敵に大ダメージを与えたような音がして扉は中途半端な状態で止まった。

 えっと空が外を覗くと――



 鼻を押さえ中腰のまま目を見開いているマリネ少年と目が合った。



「やべ」



 慌てて扉を閉め目出し帽を装着、再度扉を開けるとまた大ダメージの音がした。



 しまった距離感を忘れてまたやってしまった。



 しかし空は1秒で反省を終え、尻餅をついた状態で鼻を押さえたままこちらを食い入るように見つめているマリネ少年に話しかける。



「ねえここだけじゃなくて近くにも仲間がいるの?」


「え、あ、ああ……」


「なんでここまで来なかったの? 入って来られなかったの?」


「ああ……結界があって……」


「結界」


「魔女殿の結界だろう? すまない……魔法で解除できないか試してしまった」



 先程までのうるさい大声は鳴りを潜めどこかあたふたと説明するマリネ少年を遮り空は確認する。



「ねえそれって本当にお仲間?」


「…………そうだが?」


「ここにはね、危ない生き物は近付けないの。人間も……生き物だよね? それ本当に、あなた達の、仲間?」



 その瞬間マリネ少年は立ち上がり「タピオ!」と叫んで走り去った。

 どうにか空が言いたいことが伝わったようだ。ここに入って来られないなんて良くないことを考えているに決まっている。これで空の仕事は終わった。



 人名なのか呪文なのかわからなかったが『タピオ』と聞いて空は「タピオカ飲もう」とゆっくり倉庫に戻って行った。



 色々とあり遅くなったが1人バースデイパーティーの始まりである。







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