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アホの子乙女とアホの子坊ちゃんの直球な恋のお話  作者: コーラルピンクフォレストグリーン
12/14

12 新しい告白スタイル

ずっと火は噴き続ける

 






 これで再び平穏な倉庫生活に戻れると空は考えていたがそうはならなかった。

 マリネ少年が数週間に一度のペースで会いに来たからだ。



 空が外で作業をしている時に1人でやってきては元気に過ごしているか聞き、魔法を嬉しそうに披露した後は毎回贈り物をして帰って行く。

 あれから毎日外に出るのはやめていたのでもしかしたらマリネ少年はもっと頻繁にやって来ていたのかもしれないと空は予想していたが、実際、空の姿が見えない時マリネ少年は何もせず立ち去っていた。



 ――家から出てこないか2時間ほど門前で期待に胸膨らませた後だが。



 マリネ少年はいつも離れて待機させられている部下の「え、きも」の忠言は甘んじて受け入れるべきである。

 そして部下達は思いのほか気持ちが冷めないまま続けられる言動に疑問も感じ始めていた。なぜそこまで、と。そしてこれはひょっとするとひょっとするのではないかとも。

 やだ魔女がうちの子のお嫁さんになるのお母様って呼んでもらえるかしらな女性も約1名いるが。



 疑問は空も同じだった。

 女性なら他にいくらでもいるだろうし、おそらくお金を出せば性欲なんてすぐ満たすことができるのだからここまで頻繁に通ってくる意味がわからなかった。



 なのである日聞いてみた。本人に。



「マリネさん、女性をお金で買わないんですか?」



 普通のアホでももう少し言葉は選ぶが空は言葉を選ばないアホの子だった。



「な、な……!?」



 突然のことにマリネ少年の顔は真っ赤だ。純情そうな青年に見えるが“女性を買う”意味は知っているようだ。



「だって騎士なんでしょう? 戦いの後は興奮で本能がどうこうでそういう処理をしないと辛いって」



 本で読みました、とはさすがに空は言わなかった。知識は倉庫内にあるもので得るしかないので偏っている。



「若いから性欲が大変なことになって今来てるんでしょうけど、私は不特定多数と関係を持って性病を移されそうな相手とはお付き合いしたくないです。もしマリネさんからの好意の受け取り方を間違ってたらすみません」


「せ、か、こ」



 マリネ少年は言われたことが衝撃的過ぎて言葉にならない声を発していた。

 そしてそのままよろよろしながら去って行った。


 その様子を見て空は「性欲ってやべえなまだ女子で良かった」とソーラーセンサーライトを設置する作業に戻る。すると少ししてから森の奥からマリネ少年が誰かと話している声が聞こえてきた。


 空は一瞬目出し帽を被ることを考えたが、マリネ少年サイドに害意がないのはわかっていたので首にかけていたタオルを頭に被って顎下で結ぶだけにとどめた。タオルを被る意味、と指摘する存在はどこにもいない。



 どやどやとやって来た男達は空を見て確実に「うわ」「だせえ」な顔をしていたが空は気にせずぺこりと頭を下げ設置作業を続ける。



「魔女殿! ――ほらタピオは説明しろ」


「えー」



 マリネ少年のタピオという言葉に空は反応しちらりと視線を向ける。タピオは人名であの時のじゃらじゃらお金の入った袋を持って来た男性の名前だったようだ。



「魔女殿、坊ちゃんは病気じゃないですので安心してください。まだ清らかみたいですからその手の病気をもらえるわけがないです」


「そ、そういうことではない!! 私は下心で魔女殿に近付いているわけではないと説明しろ!」


「もう聞こえてますよ。魔女殿聞こえました?」


「聞こえました」



 特に知りたくなかったことも知ってしまったが。



「ではマリネさんは私に性欲抜きで好意を持っているという解釈でよろしいでしょうか、タピオカさん」


「タピオ()? ……まあ大体はそういうことです。我々も驚いてます」



 新人のタピオ(カ)はスルースキルが高かった。



「なるほどー。でも騎士なのでこれから先、戦いの後には不特定多数と関係を持つんですよね、皆さん」



 おそらく見た目通りの年齢であろう魔女に性的な話を急に振られた男達はしどろもどろになった。



「い、いやあ……」

「ん~」

「そうでもないと言うか……」

「相手がいれば……」



 男達は全員もごもごと口ごもっていた。そして目線で「お前が答えろよ」と押し付け合っている。自分の娘でもおかしくない見た目の魔女に男の性事情を説明するのは躊躇われるからだ。



「それに私、騎士なんて常に命の危険にさらされている職業の方はちょっと……」


「あ~そういう」


「はい、安定した生活を送りたいので」


「いちおう俺ら稼ぎそこそこあるぞ?」

「坊ちゃんは苦労はさせないと思いますけど駄目ですか」


「お坊ちゃんは騎士なうえ実家付き合いが最高にめんどくさそうだから無理です」


「確かに魔女殿にとってはしがらみしかないよな~」


「はい」


「だって坊ちゃん」

「坊ちゃんのせいじゃないです」

「巡り合わせが悪かった」




 ショックでぴくりとも動かないマリネ少年はここまでほったらかしである。

 そして自らはっきり思いを告げたわけでもないのに何度も振られていた。







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