夜語り終わりて
叔父もさすがに飲み過ぎたらしい。
もう夜明け間近ということもあり、語り終えると同時に畳で寝入ってしまった。
だらしない叔父の寝顔を眺めつつ、嘆息する。
実家での大宴会の後、叔父の過去に以前から興味があって、これを期にとせがんでみたのだが、想像以上に濃密な時間だった。
叔父は酒を飲みつつも、身振り手振りを交えて、詳細に話してくれた。
ただ、冒険者となってからの活躍や『辺境の勇者』と呼ばれるに至った経緯などは、大幅に割愛されていた。
たぶん、本人が気恥ずかしかったからだろう。
俺としては、若かりしき日の叔父やリィズさんのことが聞けて、満足だった。
実際、リィズさんの変貌ぶり(変貌前ぶり?)には驚かされた。
過去の無頓着っぷりから現在の家事の匠となるに至るまで、どれほどの苦労があったことだろう。
機会があれば聞いてみたいが、教えてくれない気はする。むしろ、昔のことをバラした叔父が怒られそうな気がしないでもない。
ちなみに、話の最後のほうは、後日、リィズさん本人から聞かされたことらしい。
きっとリィズさんのことだから口止めはしていたはずで、これも漏らしたら怒られそうだ。主に叔父が。
飲むのも忘れていたビールはすっかり気泡もなくなり、ただの苦い水と化していた。
俺は伸びをして、叔父の隣にごろんと横になった。
さあ、明日は家に戻らないと。
窓の外はすでにほんのり明るくなっていたが、とりあえず少しでも眠ることにした。