第1話:泥船は嵐に向かって漕ぎ出した
これは、世界を冒険した男の物語。
男の一生は、いつだって人生と言う大海原に、夢と言う希望の旗を掲げて突き進む泥船のようだった。
そして男の乗った船は今、嵐にぶつかろうとしていた。
2031年8月。エジプト。
そこでは、王の墓を探す発掘作業が行われていた。
エジプトのベンチャー企業が行っている観光客向けのツアーである。
高い金を払ってまで行われるそのツアーは、今まで全くの成果を出したことがなかった。馬鹿な金持ちたちにはそれなりに人気があった。
それは、自分の発掘したお宝を持ち帰ることが出来るというオプションが付いていたためである。そこにロマンを感じた客がそれなりに集まったのである。
しかし、実際のところは権利関係がガバガバで、持ち帰ることが出来ると言うのは眉唾物も良いところであった。それでも、問題ごとが起きないのは、今まで何の成果もあげられてないからに他ならない。
そんな客が右肩下がりで客が減っていっているツアーに、何を期待したのか三門雄輝は借金までして参加していた。
この三門雄輝は、世界を旅する自称冒険家の高校生だった。
彼のたった17年の歴史において、既に回った国は100ヶ国を超えており、話せる言語も数十ヶ国語を超えていた。
天才的な頭脳をもっている人間であることは間違いない彼だったが、その頭脳を世のため人のために使う気などさらさらなく、知らないことを知って、知らない世界を肌で感じることに全力を注いでいた。
エジプトに来たのもそのためである。謎のミイラでも出土しないかと彼は期待を膨らまして、ハンドドリルで発掘作業を進めていた。
既に諦めた観光客も多い中、汗だくになりながら雄輝は来る日も来る日もがんばった。
しかし、王の墓など見つかるはずがなかったのだ。雄輝たちのやっているのことは、あえて例えるなら、家の庭で温泉掘っているようなものである。何の地質調査もしていないのに、闇雲に掘ったところで何も得られないのである。
事実、雄輝たちがいくら掘ろうと、仮に地球の反対側に行こうと王の墓など眠っていなかったのだ。
何故なら詐欺なのだから、何もないけどありそうに見える場所を掘らされていた。
「雄輝君、せいが出るね」
詐欺の信ぴょう性をあげるため、自称教授の通訳兼解説係までいる始末だった。
「俺の勘がビンビン言ってるんです。ここに何かあると」
いい汗かきながら、そんなことを言っている雄輝を、教授風のかっこをしているだけの男は内心馬鹿にして笑っていた。
それでも、雄輝はその後3日間、計1週間の間もくもくと掘った。
夢に向かって突き進んでいれば決して苦ではなかったのだ。
その姿に人の心も動かされるなどと言う、少年漫画的な展開は決してなく、偽教授は『こいつ本当に馬鹿だな』と、その様を見ていた。
雄輝は偽教授に馬鹿にされているように、馬鹿なのは間違いなかった。彼の人生は真っすぐ進むこと以外存在していなかったためだ。普通の人間なら壁があれば避けるし、賢い人間なら乗り越えていくかもしれない。
だが、この男の場合はどちらの選択も選ばない。壁があればぶつかって壊していくのである。
それがいつも上手くいくわけではない。実際彼の人生は失敗の方が多かったと言える。それでも生き方を変えなかったのは、道を開いていく人間というのは最初は笑われるものだと、歴史がそう証明していることを知っていたからである。
だからこれは、偶々でもなければ運命なんかでもない。雄輝のドリルは岩なんかよりもはるかに固いものにぶつかってはじき返された。
何かがあったことに雄輝自身も驚きを隠せなかった。心臓の高鳴りを感じて雄輝は手ごたえのあった場所の周りをドリルで削っていく。そこから現れたのは間違いなく古代の遺産。黒い棺が姿を現した。
僅かに残っていた人間たちも、雄輝の所に引き寄せられるように集まってきていた。
雄輝をあざ笑うものは、もはや誰もいなかった。
黒い棺の中心に手形があり、それを中心に禍々しい模様が広がっていた。
「世界の手、災いの竜とともにここに眠る」
棺に書かれている古代の文字を雄輝は読み解いて口にだして読みながら、中心にあった手形に触れる。
そうすると、まるで雄輝を待っていたかのように棺は自動的に開いていった。それと同時に光が溢れる。棺の中には光源があり光っていたのである。
棺の中には一体のミイラがいた。そのミイラの嵌めているリングが発光していた。
ミイラの体はリングによって浮き上がり天に向かって登り始める。それを見た雄輝が手を伸ばしてミイラの手をとって引き寄せる。
引き寄せた際に、たまたま雄輝の手がリングに触れると、静電気がはしったようなバチっという音とともに発光現象が止まり、ミイラは雄輝の体の上に落ちていった。
その奇怪な現象であるが、雄輝は一度だけ動画で見たことがあることを思い出していた。マヤの遺跡で見つかったエキゾチック物質も、強い発光現象とともに周りのものを宙に浮かせたのだ。
動画サイトでトータル再生数1億を超える再生数をたたき出した有名な動画である。
それを知る人間は必然的に多い。欲に駆られた大人たちの視線を雄輝は感じた。マヤのエキゾチック物質といえば、オークションで最高額をたたき出したことも有名なのである。
ミイラの嵌めているリングがそれかどうかわからないが、発光現象と宙に浮いたという自称を結びつけて考える人間は多い。
マヤのエキゾチック物質と同じものなら、10億ドルというあり得ない金額で取引されることもあるのだ。実際、アメリカ政府がそれだけの金を叩いて最初にみつかったそれを落としている。
21世紀最大の発見と言われた物質が目の前にあるかもしれないのだ。
雄輝は、自分の置かれている状況が分からないほど馬鹿ではなかった。
雄輝の決断は迅速だった。命がけでエキゾチック物質を日本に持ち帰る。そう覚悟を決めて生唾を飲み込んだ。
2週間儀
日本
「お客さん、本当にお金持っているの」
「安心してください。今、お金を作っていますから」
そんな、意味不明な雄輝の言葉に運転手はため息を吐いた。
雄輝は、日本に戻ってきていた。
追ってからの追跡を振り切った代償で、服はぼろぼろで臭かった。
浮浪者にも見えなくもなかったが、人の良いタクシードライバーは彼をタクシーに乗せてくれた。人が良いというのもあったが、彼が雄輝をタクシーに乗せた理由は2つ。
日本語の発音がとてもきれいで、不法入国者には見えなかったことと持っていた携帯が最新式でとても高価なものだったためだ。
「お客さん、社内で魚食べないで」
「すいません、碌に食べてなくて、運転手さんもどうです釣りたてですよ」
サンタの持っていそうな袋に、何を詰めているのかと運転手は疑問に思っていたが、その袋いっぱいに魚が詰められていた。
「君、常識ないの」
運転手が嫌味のつもりでそういうと、雄輝は笑顔で答えた。
「やだな。常識は壊すためにあるんですよ」
「…………」
運転手は黙るしかなかった。そして、こんなヤバいやつを乗せたことを後悔した。
そのうえ、無賃乗車なのだから本当に気の毒な運転手だった。
雄輝の名誉のために事情を説明すると、確かに今は無賃だったが、雄輝にはお金を得る宛があった。今携帯の画面に映し出されているゲームがそれである。
2031年になればプロのゲーマーもいる時代である。
毎月あるゲームの何かしらの大会で優勝すれば最低でも10万円以上稼げるのである。
雄輝は何度これで借金を返したか分からないほどの凄腕のゲーマーでもあった。
しかし、現実と言うのは常に上手くいくわけではない。何よりも三門雄輝の現実なのである、彼の人生は常に泥船である。
常に逆境に立たされるのが彼の人生である。その辺、彼は全く理解せず根拠のない自信で突き進んできていた。
「……負けた」
「負けた?」
「いえ、こっちの話です」
雄輝はタクシーのメーターを見ると1万円を超えていた。
準優勝の賞金は1万円である、、足りなかった。
「運転手さん、タクシー代の一部は魚と言う訳にはいきませんか?仮の話なんですけどね」
「もちろん……駄目です」
「ですよね……」
東京。某アパート。
インターホンの音とともに、柳原俊太郎は目を覚ました。
ぼさぼさの頭に、ジャージ姿の痩せ細った縦に長い男である。
いつもなら、居留守をつかってやり過ごすところなのだが、アホほど連打するインターホンんの鳴らし方に俊太郎には覚えがあった。
「はい?」
そう言って、ドアを開けると親友、三門雄輝が立っていた。
俊太郎は無言でドアを閉める。
「何で閉めるんだよ」
ドアに足を挟んで雄輝がブロックする。
「お前が来ると面倒ごとに巻き込まれるからさ」
「死なばもろともだろ。我ら生まれし日は違えど死すときはなんちゃら」
「言えないのかよ」
俊太郎はため息を吐いた。
「それで、要件はなんだ」
「お金かして」
俊太郎はいきよいよくドアを閉めようとした。
それを雄輝が腕の力で押さえつける。
「分かっている。でも今回はでかいネタがあるんだ。話を聞いた方が良い」
「でかいネタだと、この前、お前を信じてツチノコ取りに行ったら、毒蛇に噛まれて死にかけたんだぞ」
「俺が応急処置したおかげで助かったんだよな。俺って命の恩人じゃん」
「良いところだけ切り出すな。お前が俺の静止も聞かずに洞窟の中に入って行って、大量の蛇を連れて来たんだろ。その上、俺が入院したのに見舞いにもこずに何やってたんだよ。お前なんて2度と信じない」
もともと、二次元の世界に片足を突っ込んでいる重度のゲーマーである俊太郎は、人間不信なところがあったが、雄輝のせいでその部分が強くなっていた。
「これだけ見てくれ」
「何だよ」
雄輝が取り出したのは、あのミイラの指だった。棺やミイラなど持って帰れないために指輪がはめられた指だけ折って、持って帰ったのである。
突然のミイラの指に、俊太郎は警戒した反応をする。
「これは、エキゾチック物質だ」
雄輝が手を離すと、指は宙に浮かんでいた。それを見た俊太郎は……。
「……大親友、金くらい貸そう。上がっていけよ」
燕返しのような手のひら返しは、流石としか言いようがなかった。彼もまた雄輝のように不思議なものを追い求める男。その辺を本能で理解している雄輝は、俊太郎のことを信頼のおける仲間兼親友だと思っていた。
雄輝は世界中から、俊太郎のような仲間を集めていたが、今のところ数は集まっていなかった。それでも、俊太郎の男を高校で見つけることが出来たのラッキーだったと言える。実は、俊太郎は卒業してしまっているが、高校の先輩後輩の関係だったのだ。
俊太郎にタクシー代を全額払わせた雄輝は、遠慮などすることなく俊太郎の家に上がり込んだ。学生時代からそうであるが、2人の関係は歳は違えど対等な友人関係だった。
俊太郎のアパートの一室は、夏といえど効き過ぎている冷房で肌寒いを通り越して寒い。PCなどの電子機器を冷やすために室内の気温を下げているのである。
主にゲームにしか活かされていないが、偶に雄輝がハッキングなどを依頼した時に役に立つ。また、この男は正真正銘の日本トップのプロゲーマーでもあるので、金も持っていた。実に有能な男と言えた。
「お前、非常に臭いけどどこか行っていたのか」
「エジプトで発掘作業をしてたんだ」
「……じゃあ、エジプトで見つけたのか?それ」
俊太郎は雄輝の持っているミイラの指を指さした。
「察しが良くて助かる。お前がこれの情報を得てないってことは、エキゾチック物質のことはニュースにはなってないんだな」
「エの字も聞かないほどにな」
「情報規制がかかっているな」
雄輝はぼっそと呟いた。
「規制ね。お前エジプトで何したんだ」
入院していたせいで、雄輝がエジプトにいたことすら知らない俊太郎に、雄輝はエジプトで起きたことを説明する。
それは、エジプトからの逃亡の話が主だった。元々権利関係がガバガバな企画に対して、雄輝に権利が発生するわけがなく、エキゾッチク物質はもちろんのこと、ミイラも棺も持って帰ることができなかった雄輝は、リングの嵌められているミイラの指を折って逃亡していた。
10億ドルの大金に、目がくらんだのは胡散臭いベンチャー企業だけではない。エジプト政府自体も、雄輝からリングを奪おうと追ってきたのだ。
飛行機で出国できないと読んだ雄輝は、エジプトの貨物船に潜り込み、不法入国を繰り返して日本まで帰ってきていた。
「相変わらず、生命力はゴキブリ並みだな」
「照れるぜ」
「皮肉なんだけど。危なくなったら、命大事に逃げて来いっていってるだろ」
俊太郎はため息を吐く。
いつ死んでもおかしくない雄輝の生き方を心配したためだ。
「こんな面白いものを奪われるくらいなら死んだ方がましだ」
「雄輝分かっているのか、日本まで追ってくるかもしれないぞ」
「先のことは知らん。今楽しければそれで良いんだよ」
駄目だコイツと、俊太郎は頭を抱えた。
「俊太郎もワクワクしているだろ。それとも抜けるか?」
そんな俊太郎に、雄輝は笑顔で告げる。答えが分かっているという顔に、俊太郎は悔しさを覚えるが、答えは決まっていた。
「まさか、俺もワクワクしている」
何やかんや2人は苦楽をともにした。コンビだった。
「それじゃ、適当なラボを借りて実験してみよう」
「今日からか?」
「もちろん」
猪突猛進な雄輝の言葉に、俊太郎が苦笑いを見せたが、その瞬間、インターホンが鳴り響いた。
「兄さん、いるんだろ」
俊太郎の家のアパートの外から聞こえるその声に、雄輝の体が固まる。
「……礼司」
それは、雄輝の弟の声だった。
「頼む俊太郎、居留守を使ってくれ」
そんな雄輝の言葉に意地悪く笑った俊太郎は、雄輝の言葉を無視して扉を開ける。
「こんにちは、柳原さん。これつまらないものですが」
そう言って、雄輝の弟が素早く俊太郎にお土産を渡すと家に入ってきた。
三門礼司は、良いとこのお坊ちゃん風の出来た弟である。野生児で問題児の雄輝とは全く別の印象を受ける。ところどころ似ているところがあるが、雰囲気が違い過ぎるのと元々二卵生なので似ていない双子だった。
それでも、雄輝は似ていると自称している。しかし、返ってくる答えは「図々しい」というものばかりだった。見た目でも身長でも性格でも人望でもぼろ負けしているためである。
「兄さん、エジプトに留学したのに登校せずに失踪したらしいね。母さんぶちぎれてたよ」
「何言ってんだ。一日だけ出席した」
雄輝は、エジプトに行くのにありとあらゆる手段で金策に走っていた。その一環として、留学という名目で旅費を浮かせたのである。
「1日だけって、1ヶ月中で1日でしょ。カウントされないよ」
「何を言うだ、セロに何をかけてもゼロだけど、1には無限の可能性があるんだ」
「屁理屈言わない」
「…………」
相変わらず、弟に弱い雄輝を俊太郎はにやにやしながら見ていた。雄輝は自由気ままに生きているが、非常に身内には弱い男なのである。特に高校生にもなって、お母さんが怖いと言っている男である。
「母さん、カンカンに怒ってて、帰ってきたらぶっ殺すって言ってたよ」
「馬鹿だな礼司、ぶっ殺されるのに家に帰るわけないだろ」
「今なら一緒に帰って謝ってあげるよ」
「うっ……」
「いつか怒られるなら、傷の浅いうちが良いいでしょ」
礼司の諭すような言い方に、雄輝は揺れていた。いつ見ても、どちらが兄か分からない兄弟だなと俊太郎は後ろで見ていた。双子で歳も同じなため、礼司が兄にしか見えなかった。
「俊太郎、明日だ。明日、実験をしよう」
雄輝が折れて、俊太郎に告げるが……
「明日は学校だろ。行かないつもり」
礼司の言葉に、雄輝がまた葛藤することになる。
「放課後だ。夜になったらまた来るから待っててくれ。帰るぞ礼司、今回はバク転しながら土下座してみようと思うんだが、どうだろうか」
まるで嵐のように雄輝は出て行ってしまう。
それを、会釈しながら礼司が続く。
その日のよる久しぶりのベットに、雄輝は不覚にも熟睡してしまって気づくことはなかった。
雄輝の持っているリングが一人でに強い光を放っていたのだ。
同時刻。アメリカ。
エキゾチック物質の盗難を防ぐために、人里離れた田舎に研究施設が建てられていた。アメリカの精鋭部隊が警護にあたっており、地下にあるため発見も困難である。
雄輝が発見したため、世界に2個となっているが、それまでは世界に1個しかなかったものなのである。他国を警戒し最高のスタッフを集めて研究に当たっていた。
しかし、そんな最高の研究者たちも成果をあげられていないのが現状であった。
未だ加工方法すら分かっていなかった。同じものを精製するなど夢のまた夢であった。
研究施設には長い間焦燥感があふれていたが、変化が訪れる。リングが光だしたのだ。それは今まで観測されることのない変化だった。
だが、変化すると言うのは必ずしも良い方向に進むと言うものではない。今回のそれは凶兆だった。数時間後、けたたましいほどのサイレンが響き渡り、研究者たちをあざ笑うかのように、何の成果もあげることなく研究施設は消し飛んでしまうことになる。
同時刻。エジプト。
「何とも美しい」
考古学の教授は、雄輝の見つけたミイラに対してそんな感想を漏らした。
それと同時に、歯を食いしばって悔しい気持ちをかみ殺す。
完璧な保存状態と言えるミイラの指が欠けているためだ。こんな暴挙を働いた三門雄輝なる日本人を殺してやりたかった。
ミイラが恋人という、きっと変人ゆえに雄輝と分かり合えるであろう教授は、その気持ちをミイラを見ることで癒していた。
怒りと癒しを同時に行っているので、その気持ちは一生晴れることはないかと思われた。しかし、そんなことが些末事になるような出来事が起きた。
「うん?……いやあり得ないだろう」
教授は目をこすった。
しかし、何度見てもミイラがけいれんして動いていた。
「どうなっている……」
そんなセリフを言っている場合ではなかった。ミイラは立ち上がり動き出そうとしていた。
同時刻。日本。某ホテルの一室。
「エキゾチック物質は、三門雄輝という少年の手にある」
「三門?」
「そうだ。三門財閥の関係者だ。データを送るから確認しろ」
「了解です」
少女はメールで送られてきたデータをPCで確認する。
「我が国にエキゾッチク物質を、これは絶対に成功させなければならない。エジプト政府から高い金を払って買い取った情報だ。絶対に失敗は許されないぞ」
「分かっています。エキゾッチク物質を祖国ロシアに」
雄輝が望む望まない関わらず、厄災のような嵐が吹き荒れようとしていた。
そして、雄輝は引くことを知らない男である。
人生泥船少年は、今、嵐に向かって舵を取られようとしていたのだ。