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マクマっぽい回想

「このクソガキがぁ!!!」


男のつま先が勢いよくあたしの横っ腹に食い込む。

あたしの口からは、血が混ざった唾と息、そしてさっき食べたキノコの残骸が勢いよく飛び散った。


「がぁはっ」


勿体ない、せっかく見つけた食料だったのに、コイツ生きてたら絶対に殺す。


蹴られた勢いのままあたしはゴロゴロと転がり木にぶつかった。


「ぐゔう・・・」


脇腹はジンジンとするが、この位の痛みなら何でもない、蹴られた痛みよりも、空腹からくる怒りの方が、今のあたしの動く原動力になっていた。

四つん這いになり、威嚇する猫のように素早く姿勢を立て直すと


「グルルルルッゥ」


と喉を低く鳴らし男共を威嚇する。


「チッ、ゴム毬でも蹴った感触だぜ筋肉のバケモンが!!

気持ち悪りぃ」

「おい、ジュカ、そのガキは売り物だその辺にしておけ。」

「はぁ?

おいゼル!こっちはライルが殺られてんだぞ!

コイツは売り物でも何でもねぇ、只のイカれた獣だぜ!!

それにお頭だって、ライルが殺されたって知ったら黙っちゃいねぇだろ」

「確かにそうかもなぁ、でもその判断をするのはお頭であってお前じゃない、それにいかれた獣のほうが頭のおかしい好事家に高値で売れる事もある。」


ジュカはグイグイと詰め寄り、チンピラよろしく高身長のゼルを下から威嚇する。


「おいおいゼル、、ゼルさんよぉ!

ふかしてんじゃねーぞ。」

「これはお頭の大事な金の話だ、お前だって理解してるだろ」

「・・・・じゃあ、この鬼のガキは俺が買ってやるよ!

それでいいだろ!

買った後なら俺の自由だよな!!!」

「はぁ、、、博打と酒代で万年金欠のお前に支払い能力があるのか?」

「ふ、、ざけんな!!」


ジュカの顔色がどんどん湯を沸かすかのように沸騰して赤くなっていく。


「元冒険者だか何だかしらねぇけど、デカイ顔しすぎなんだよテメーは!!」


ジュカがゼルの襟足を掴み、もう一方の手を腰に回すとナイフを抜きゼルの首筋に当てる。


「あんたは、あのガキに首を噛み切られて死んだ。

俺はそれを止める為にあのガキを殺した。

それで終いだ。」


ジュカの腕に力が入りグッとナイフの切っ先をゼルの喉に、、、。


「・・・・・」


ナイフはいつもの感触ではなく、硬い、そう、石にでも突き立てているような異質の感触を伝えてきた。


「な・・・何なんだよテメーは」

「これが、お前の言う元冒険者の力だよ」


ゼルの身体が少し揺れると、ジュカの身体が沈み顔面の穴という穴がら血が流れ出た。


ゼルは気怠そうに首をコキコキ鳴らすと、ゆっくりとあたしの方に向かって歩み寄ってくる。


「さあ、悪いようにはしない、こっちに来い。

お前は大事な売り物だからな。」


そう言うとあたしに向かって手を伸ばす。


途端に嫌な汗と言いようのない不安があたしを襲う。

あたしは咄嗟に距離を取り、両足に力を入れ、さっきコイツらの仲間を殺した拳にさっき以上の力を込めた。


「・・・・ふぅ。

あのバカといい、お前といい、どうもこの身分に身をやつしてから胸糞の悪いことばかりだ。

慣れなければ、俺の心が先に壊れる。

まぁ・・・良いだろう、この場は武人として相手をしてやる。

来い。」


そう言った男の顔には、今言ったお題目とは裏腹のドス黒い笑顔がこびりついていた。


すくみそうになる心に喝を入れあたしは両足の力を解放する。


「そのなりで、その速度、膂力、恐れ入る、流石は鬼人か?

だが、その突進は馬鹿正直すぎて欠伸が出るぞ」


あたしの振りかざした両手の隙間から男の手が見えた。

次の瞬間あたしの目の前が真っ暗になった。


「はぁ・・・・。

お頭は俺たちの命なんざぁ、物の数にも入れちゃいないよ。

金とあらゆる快楽。

あの人の頭の中はその二つだけ。

その二つをどうしたら効率よく自分の物にできるかどうか、それだけにしか興味が無いんだよ。

お前や、ライルが死んだところで、ああ、そうか、位の事だろうさ。」


ゼルは傍に倒れる子供を、ヒョイっと苦もなく担ぎ上げると、森の奥に消えていった。



「・・・はぁ〜・・・なかなか骨のありそうな男じゃのう、今夜はなかなか楽しめそうじゃ。

ウフフ。」



「・・・・やり・・」

「・・・!」


あたしが物音で目を覚ますと、どこかの室内のようだった。

ここがどこだかは分からない、周りはゴツゴツとした岩や、箱、大きめの袋、倉庫なんだろうか?

空気はヒンヤリとしていて、湿っている。

どこかの横穴?洞窟?

外から漏れ伝わる月光のお陰で真っ暗ではない。

生まれつきこのくらい光が射していれば、夜でも昼間と同じように辺りを見回せる。

身体に力を入れてみると手足が縄で縛られいて自由に動けそうにも無い。

が、格子で覆われている訳では無さそうなので、クネクネと這えば外には出れそうだった。


外に近づく事に恐怖が無い訳では無いが、諦めて死ぬより、前に進んで死んだ方がまし。

あたしが短い人生で学んだ事だ。


「ふぅ〜、、ふぅ〜」


ゴザのような物が垂れ下がっている出口を出ると信じられない光景とむせ返るような血の匂いがあたしの五感を刺激した。


「はぁ〜そんなもんかい?

さっきの武闘家崩れもそうじゃったが、お頭さん、アンタも大概期待外れさ。

それじゃぁ、楽しめんのじゃ。

もっと、、もっと!

私を楽しませておくれでないかい!!」


必死の形相で尻餅をつく男にジリジリと詰め寄る女、その姿は長い腰まで伸びた黒髪を頭で結び、今まで見たこともないおかしい服を着ていた。

しかし、腰に帯びた大小の剣が妙にしっくりくる服だった。


「おい!!待て!待ってくれ!!当たり前だろ、あいつは、高い金を払ってた元冒険者の用心棒だ、俺があいつより強い訳がないだろ!!」

「はぁ〜・・。

お主のその肥え太った体型を見て薄々感づいてはいたんじゃが。

まぁ、それならそれで、一方的に掃除するだけじゃ、仕事と楽しみは本来別じゃからのう。」

「お、、お前は一体?」

「さっきも言ったじゃろう、お主ら盗賊団の壊滅を請け負った冒険者じゃと。」

「お前程の実力者、高レベルの冒険者が関わるような盗賊団じゃぁないだろ俺の盗賊団は。」

「どう言う事じゃ?」

「俺たち程度の規模の盗賊団なんて、潰した所でそれ程の金にはならないだろ!!」

「アッッハハ。

そうじゃのう、報酬はスズメの涙程度、というのは言い過ぎか。

じゃがのう、盗み、犯し、火付け、殺し、お主ら一通りの悪事はやっておるじゃろう。

報酬はスズメの涙でも、その金の重みにはお主らに蹂躙された者達の怒りや悲しみ、恨みの重さがつまっておる。

私は生来そういう物事が放っておけぬたちでな。

金じゃぁないんじゃよ。

それに、私のレベルはまだ10にもいっておらぬ。」

「う、、、嘘をつけ!!

それに、レベル10の駆け出しに討伐依頼は受けれないはずだ!!」

「緊急依頼じゃったか?

本来私には受けれない依頼じゃったが、死んでも一切責任云々カンヌンと一筆書いただけで、受けれたぞ。

いずれにせよ、遅かれ早かれ、私と志を同じくする者がお主らを掃除したじゃろうて。

さぁ終いじゃ。」

「く、、クソ」


お頭は咄嗟に、隠し持っていた筒のような物を取り出し女にそれを向ける。


「ほう、それは短筒かのう珍しい」

「死ね!!」

「じゃが、もう、お主はその引き金を引くことは出来ぬ」

「あ・・・・・あれ?

うご、、動かない、身体がゆう、、こときか」


「ニ剣、、、、、飛花」


いつの間にか抜いていた剣を鞘に収めるとお頭の首がゴロンと転がり、首からパッと花が咲いたように血飛沫が舞った。


色々な感情があたしの腹の底から込み上げてくる。

あたしはそれが危険な事だとわかっていても。

やらなければいけなかった。


「うあああああああああああああああああああああ」


「なんじゃ・・・・・お主、生きておったのか」


女があたしの方に向かって歩いて来る。

そして一瞥も無く通り過ぎたかと思うとあたしの手足を縛っていた縄が解けた。


足早に女があたしが元いた場所に駆け寄る。

あたしに対する対応とはうって違って近寄る表情は感動に満ち溢れていた。


「おおおぉ、これは魔道具か!

ふむ、見事岩と同じに見えるのぉ。

お主が這い出て来た跡が無ければ他の岩と変わらず見えるぞ。

でかしたのぉ、お主。」


女は感動した面持ちで、ゴザをヒラヒラさせ、あろうことか綺麗とは言えない薄汚いゴザに頬擦りまでしていた。


女はゴザを巻き巻きし、己の剣と同じ場所に大事そうに収め、いそいそと穴の中に入って行き、数分とも無くあの大きな袋と箱を抱えて出てきた。


「ん?・・・・なんじゃお主まだおったのか?」

「・・・・・・・」

「礼でも言おうと待っておったのか?

まぁ、違うんじゃろうが、、、。

縄はさっき切ったじゃろう、何処にでも行けばいいじゃろうに」

「・・・・・・・」

「お主、口がきけんのか?」

「・・・・・・・」

「まぁどちらでもいいが、私はもう行くぞ」


女があたしの横を通り過ぎて行く。


「・・・・・・って!」


あたしは、久しぶりに、本当に久しぶりに人間の言葉を話した。


「まって!!」


音量の調節がうまく出来ない。


「そう、吠えんでも聞こえてるわい」


女はこちらを向きあたしの次の言葉を待っている。


「あたし・・・を・つ・・よく・・でき・・・る!」

「ん?何が言いたいのじゃ?」

「つ・・・よく・・できる!!」


人間の言葉は難しい、あの家にいた頃も会話らしい会話はしなかった、ただ決められた事を毎日していた。

ただそれだけの日々。

だが、あの頃は危険な事をしなくても飯にありつけた。

それだけが、あたしとあの家との繋がり。

あの家を追い出されてからは、飯を食えない日々、ひもじい思いをする毎日で、食べられそうな物は何でも口にしていた。


「あたしが強くなりたい!!!」

「・・・・娘っ子、名前は?」


名前?


「私は、桜、エルドルア・サクラ

人からはサクラと呼ばれている。」


女は自分を指しサクラと言った。

名前とは自分を指す記号のような物である事が何となく理解できた。


「あた・・・し・・は・・あたし」

「お主、名が無いのか、、。

「あたし!!」

「わかったわかった、じゃがそれは名前じゃ無い。」

「・・・・・」

「おいおい、そんな落ち込んだ顔をするで無い。」

「・・・・・」

「じゃが、困ったのう、私の流派は一子相伝と決まっておる、、。

実の子、それも娘にしか習得させん閉鎖的な流派じゃからのぉ、まぁ本家筋は道場剣術なんぞ始めおったが、、。」

「だ・・・め・・・か?」

「ぅ・・・その目は反則じゃ、やめいやめい」

「・・・・・・」

「・・・・これも何かの縁なんじゃろうか?、、、。

まぁ、子を作る予定も、相手もおらんし、お主を引き取るのもいいかもなぁ」

「つよく・・・して!!」

「そこは、、、強くして下さいじゃ娘っ子」

「して下さい!!」

「よし、引き受けた!!」

「して下さい!!」

「じゃから、してやると言っておるじゃろうぃ!!」

「して下さい!!」

「はいはいはい、じゃが、名前がないと不便じゃのう。

よし!

ひとつ、私がお主に名をつけてやる。

瑠璃、お主は今日からルリじゃ、瑠璃色の花を咲かす刺草

、アザミ、私の好きな花から取った名じゃ。

いいじゃろう。

刺々しいお主にはピッタリの名じゃ。」


「なまえ・・・あたし・・るり。」

「私の事は、師匠とでも呼べばいいさ。」


痛くない、ひもじくないのにあたしの目から涙が溢れた。


「泣くな泣くな、涙は取っておけ、私が今日からルリ、お主に最強を教えてやる。」

「して下さいししょ!」

「ああ、してやるさ!!

覚悟しろよ!!!」



・・・・・

私とした事が、、、、。

居眠りなんて。


腕と頰それにテーブルにヨダレがつ付いている。

私はそれを拭うと椅子から立ち上がり窓を開けた。

外からは心地よい風が吹いてくる。

つい先程迄、あんな光景が広がっていたなんて嘘のようにのどかな風景が広がっている。

だが、相変わらず狼煙はモクモクと上がり続けている。


食事の準備をしてからどれくらい時間が経っているんだろうか?

日の傾き加減から見るにそこまで経っていそうにはないが。

お嬢様はもうお目覚めになったんだろうか。


見るといつのまにか拳が硬く握られている。


私は・・・・・・師匠から最強を学んだ。

その事実さえ私は否定してしまう所だったのだろうか?

ただ、私自身の力が足りなかったせいで、私の中には師匠から学んだ最強が息づいている。

長い間、まともに戦闘していなかったせいで忘れかけていた。

私の源流は綺麗なだけの花じゃない、触れればトゲで攻撃する刺草、そしてあの一輪の紅い花の美しさ。

私が目指す理想の型。


「取り戻さなければならない事が沢山ありますね。」


ギィと上階の床板が鳴る。


「まずは、、、笑顔。」


私は少し乱れた服装と姿勢を正すと、階段の前でお嬢様を待った。

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