オオカミの力 II
6600万年前の太古の生物が目の前にいる。
これは夢なんだろうか、、、。
ためしに願ってみても空は飛べない。
俺の眠れる最強の力をふるってこの状況を打開することもできない。
この傷の痛みも、周りの吐き気を催す臭気も本物、現実なのだ。
「でたらめだ、魂の召喚、蘇生、再生を同時にやってのけるなんて。」
白スーツがぼやく。
「とにかくここにいたらまずい、離脱するぞ」
というと半ば強引に俺の手を取り飛翔する。
「ふぁ!!」
情けない声を出しつつ思う
あ、、、飛べた。
上空に佇む白スーツ二体と鎖に繋がれたオオカミは互いに牽制しつつ動かない。
白スーツはなんたら気を武器にこめた状態から動かない、嫌、動けないのであろう、文字通り命を賭けたであろうその技は次の攻撃を外せば無駄死にが確定する。
この状況を生み出した原因の一端は俺にある、フォーマンセルで行動していたが俺の護衛に一人割いてしまい、スリーマンセルででたらめな力を持つオオカミの相手を余儀なくされた。
その焦りから勝機を見誤ってしまい、二人同時にに技を発動するという悪手を選択してしまった。
「その不恰好じゃ動きずらいだろう」
余裕そうに口を開くオオカミ。
すると美しく凛々しい顔が唐突に歪むとモコっと目が増殖し四つに増えた。
「第四権限」
三つ目の目が緑色に輝くと待て状態で大人しくしていたティラノサウルスの足元から緑色の霧が現れその巨体を包む。
ティラノサウルスの苦しそうな咆吼が繭状になった煙の中から聞こえる。
数秒後
チン!
というこの緊迫した状況に似つかわしくない音が辺りに鳴りく。
「はい出来上がり〜」
電子レンジかよ!!
すかさず心の中で突っ込んでみる。
煙がはれていくとそれはいた。
10メートル以上あった体長は2メートル程に縮み、人間でいうところの筋骨隆々。
巨体が凝縮されたといった感じだろうか、縮んだはずなのに何故か先程の姿よりも力強さを感じる。
例えるならフィクションの図鑑に載っていたディノサウロイド、、。
もし恐竜が人間型に進化していたらこうなったというやつである。
ゲームで例えれば風貌はリザードマンといったところであろうか。
恐竜人間はその場で天を仰ぎ、仰々しくひざまづいた。
「ちっとはマシになったじゃねーかw」
嬉しそうに舌舐めずりをするオオカミ。
「これはサービスな」
「第二、第三権限」
オオカミの目が赤と金色に輝くとオオカミの眼前に鉄の塊の様な物体が出現し次の瞬間溶解、その形状を棒状に変化させ、さらに振動させると一振りの刀が出来上がった。
その刀がふわりと風に乗るかの様にオオカミの鼻先からゆっくりと移動すると両手を広げ待ち構えていた恐竜人間の手中におさまる。
「ありがたき幸せ」
「今日から貴様は俺の眷属、やるべき事は分かっているな」
「はっ!
その前に畏れながら我が主よ、名を頂戴致したく。」
「そうか、名か、長い間眷属なんて作ってなかったからなぁわすれてたわw
許せ、、、。
ふむ、今日からお前はディノスと名乗るがよい」
「仰せのままに」
恭しくお辞儀をすると立ち上がるディノス。
授けられた刀をブンブンと二、三度振り回すと前傾姿勢に構える。
次の瞬間移動を開始する。
爬虫類を思わせるクネクネとした独特の動きをしながら徐々にスピードを上げ加速していく。
五感全てが研ぎ澄まされた俺の目でも追いきれなく程に加速すると方向を変え地上にいる白スーツに向かい一瞬で間合いを詰める。
スピードとパワーを兼ね備えた上段の一撃が白スーツに加えられる
キーーーンと金属がぶつかり合った音がするとディノスの両手が弾かれる。
「くっ!」
舌打ちするディノス。
「無駄じゃ、儂の周りには幾重にも上級防御魔法が展開されとるからのう、やつが消滅するまでの間位はお前さんの攻撃位耐えられるじゃろうて」
年老いた白スーツは上空に手を向けたままの姿勢で口元をニヤリとさせる。
「じゃが少し崩しただけでも賞賛に値するぞい」
「フォッフォ」
鎖をコントロールしている間は動けないのだろうか事前に防御魔法を展開していたらしい、、というか本当に魔法というものは存在したのだと感動を覚える。
一方のディノスは
そんな言葉を無視し老白スーツの周りをぐるぐると歩き回る。
攻めあぐねているのだろうかゆっくりとした歩調である。
「いいのか?時間の問題だぞあれ」
オオカミが地上の状況を見ながらいう。
「ふざけるな、老師は天界随一の魔導士である、老師の魔法があんなリザードマン如きに破れるはずがないのである」
でかい方の白スーツが言い放つ
「まぁ普通ならな、だが俺の眷属、ディノスはリザードマンじゃねえし、俺の授けた刀も勿論普通じゃねぇ
破れない道理がねぇんだよ。」
「貴様は自身の心配でもしていればいいさ
我々はただでは死なん、必ず貴様を消滅させる」
二人と一匹の緊張感が増す、、、。
こちらの決着がつくのも時間の問題のようであった。