だって、だぁーって、だって。
俺の棒切れに奴の重みが加わる。
ギリッ
予想外の重さに噛み締めた歯が鳴る。
直接奴の腰椎にダメージが通っているか分からないが、奴はくの字型に身体を曲がらせると俺の突進の勢いのまま焼却炉にくべられようとしていた。
このままっ
このまま押し込めば!
「おわ、、、
途端に俺の意識が混濁した。
「あ、、あぁ、、嘘、お嬢、、様」
ルリは両手で口元を覆うと、がくりとその場に膝をつく。
「ま〜たやっちゃったねマリアちゃん、最後の最後で気を抜くなんて、悪い癖だよそれ。
ほらっルリさんも立って。
お〜い、ルリさ〜ん
はぁ〜
未然に防ぐ事には長けてるけど、実際起こっちゃうとからきし、それがマリアちゃんに関する事だから尚更にって事、、、。」
それじゃぁ護衛は務まらんでしょ。
言葉にはしなかったが、リンネの失望の眼差しが、ルリに向けられた。
「前途多難、、、だねぇ」
奴の左腕が、正確には左腕の盾が俺の脳天を直撃した。
その勢いのまま俺は吹っ飛ばされる、首が胴体から引きちぎれるような感覚。
バス、ズザアザザ
俺は畑に頭から着地した。
痛みがないのはスキルのせいなのか、、それとも脳にダメージを負ったせいなのか、、、分からない、、、思考がまとまらない。
一体何ド飛ばされたんだろうか?
一体何をされたんだろうか?
あぁ、本当に今日は災難続きで気が変になる!!
そこで俺の意識が黒く染まった。
「狼煙?」
「どうかしたのルリさん?」
「はい、お嬢様あれを」
ルリさんが指差す方向に煙が上がっていた。
「火事?」
「いえ、あれは狼煙ですね、通信魔道具が高額な為、一般の民家などには流通していません、なので緊急時にはああやって狼煙で知らせるんです、その証拠に、向こうにも。」
「本当だ、何本も煙が上がってる」
「多分エスパルまで続いているかと」
「緊急時、、、、って事は救援要請信号って事かな?」
「おそらくは。」
「予想どうりのモンスターの大発生って奴だね」
リンネさんは掌で輪っかを作ると、望遠鏡を覗くように、片目を瞑って輪っか越しに狼煙の方向を見る。
ゴクリ
リンネさんの言葉に、俺の喉が鳴る。
リンネさんは覗き込んだ姿勢のまま俺の方に向き輪っかの中に俺を捉えた。
「助けに行くかい?
それとも無視してエスパル迄の直線を」
「行きます!
当たり前じゃないですか。
それにレベル上げするんですよね!」
「うん、そのつもり」
リンネさんはそう俺に笑顔ではにかむとスキップして先を行くホクトに合流し、その横を併走する。
「ほんと自由だなぁ、あの人は」
内心のドキドキを抑えるように、俺は呟いた。
そして俺達はゾンビに襲われ、壊滅寸前の農家の集落にたどり着き、今に至る。
今、、今ってなんだ?
黒く染まっていた世界に少しづつ光が差し込む。
「・・ね・・ちゃん!」
「ボクたちはここで見てるからマリアちゃん一人で頑張っておいで」
「はい」
「はいって、お嬢様、リンネさんも、何言っているんですか!
少なくてもあの数をお嬢様一人でなんて無茶です」
俺はゆっくりと両手でルリさんの手を握る
「ルリさん、、、、大丈夫だから。」
「 お嬢様、、。」
「ふふーん、それでこそ我が弟子!!」
リンネさんがガバッと俺に抱きつく。
一瞬の脱力感の次に、腹の底から力が湧き出てくるのを感じた。
「いい、マリアちゃん、最後の最後迄気を抜いちゃダメだからね」
「はい」
「んじゃ、頑張って」
そういってリンネさんは俺に棒切れを渡してくれた。
「・ねえ・・・」
「おねえちゃん!!」
俺は大丈夫だよ、、、多分。
ゆっくりと目を開く。
キーーーーーー
耳鳴り、、、、がする。
身体は動くのか?
右手、、左手、、肩、、上半身、、腰、、右足、、左足、、。
首、、頭。
指先に至るまで、、動く。
吐き気も、悪寒も、、感じない。
なら問題無い。
この場全体に意識を向けると頭に情報が流れてくる。
スキル 「気配察知 広域」 を入手しました。
リンネさんがこっちに来ようとしている。
ルリさんは、、、へたりこんで。
ホクトは寝てるのか?
動く様子が無い。
このモフモフ要員め!
ホクト的にはこんな危機位自分でどうにかしろって事?
だよな?
この生意気な犬っころめ!
あとでモフモフ地獄をおみまいしてやるからなっ!
そして肝心の奴は、、、、すぐそこに。
俺はゆっくりと立ち上がり、襲い来る立ちくらみと格闘しつつ肺に酸素を送り込んだ。
「動くんじゃねーーーー!!!」
薄い光が俺を覆い徐々にそれが膨れ上がり畑を圧迫、、を通り越し畑を割った。
その薄い光は魔力なんだろうそれが認識できるようにまで可視化しパシっとスパークした電撃のように音を鳴らし辺りに飛び散る。
「この戦いは俺のです!邪魔しないで!」
「ヒャう!!」
ああ、マリアちゃん、、。
いい、最高だよ。
リンネの顔が紅潮し口元からヨダレが垂れる。
足が内股になり、その場にストンと女の子座りする。
「行っておいでよ、ここで見ててあげるから、ご主人様」
そのあどけなさが残る顔に似つかわしくない妖艶な表情を浮かべ、リンネはベロリと舌なめずりする。
「でも気づいてるかな?
その目、大丈夫?」
マリアの目は白目の部分が無くなり、まるで眼球自体が無くなったのかのように黒く濁っていた。
耳鳴りがキーーーという金属音から徐々にラジオのチューニングを合わせている時の様な音に変化する。
キュキュ・・・・・イィ・・・ピィ
職業変更の条件が揃いました。
極職 「ネクロマンサー」 への変更が可能です。
職業変更しますか?
YES/NO
え?




