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暖かい光の中で。

・・・ん?・・・


ゆっくり目を開くと、暖かく、優しい、オレンジの光が、闇をユラユラと照らす。

瞼が重い、油断したら、またすぐにでも、深い眠りに落ちてしまいそうだ。


だがそれは出来そうにない、もう一つ暖かい優しい温もりが右手から伝わってきたからだ。


「ルリさん、、そこ寒くない?

・・・・火に当たりなよ。」


握られた手が痛くなるほどギュッと締め付けられる。


「お・・・お・・・じょうさば〜〜」


泣き腫らしあであろう血走って赤くなった目からまたドバドバと涙が流れる。


「 ほら、私は大丈夫だから、もう泣かないで。」

「すビバゼン、、、ずぐには無理です、、ばたし、嬉しくて、嬉じくて、もう、、不甲斐なくて〜。」

「ん?・・・不甲斐ないって?

ルリさん、何かしでかしたっけ?」

「・・・お嬢様の身は使用人である、私が守らなければいけないのに、肝心な時に魔力枯渇をおこし寝ている始末。

あまつさえ、その間、ハグレ冒険者供に襲撃を受けるだなんて私は、、私は使用人失格です。」

「いやいやいや、元はと言えば私の魔力が暴走した結果だし、アラケニアさんとか、アラーニェさんとかイレギュラーすぎる事が、あんなに重なっちゃったんだから仕方ないって、ルリさんのせいじゃないよ。

失格だなんて寂しい事言わないで。」

「あ・・あ・・・お嬢ざま〜〜〜」


「おわっつっ」


あ、ヤバイ、火に油を注ぎすぎた。


ルリさんが、寝ている俺の上半身を起こし、ギュッと抱き締め、、締め、、、締め上げてるぅ。


「い、、いや、、る、、、ルリさん、、きついきつい、締め、ギブ、、、、苦しいでふ」


「はっっ!

お嬢様、申し訳ございません!!」

「ふぅ〜、、あ、、いえ、大丈夫です」


NO、鯖折り、、、まじ怖いです。


「かっっかっっか」


そういえば、さっきからそこで、白いモフモフに踏ん反り返って笑ってるこの人は?


誰?


「ふぅ〜、、仲がよろしいことで」


艶のある美しい黒髪は腰の辺りまで伸び、焚き火越しにぬらりと怪しく輝いている。

歳の頃は17、8歳だろうか、俺ことマリアよりも若干歳上のように思える風貌は、元いた世界、日本の美少女を連想させた。


目の前にいるルリさんもかなりの美人だが、それにも勝るとも劣らない美少女っぷりに、一瞬、いや数秒、すいません結構長い間ガン見してしまいました。


一つ残念なのはこの風貌には似つかわしくないブカブカの変な模様のついたシャツとズボン、、、ん?

どっかで見たことある気が、、、。


「ん?ボクの顔になんか付いてる?」

「おわっ!」


少女が突然身体を起こし俺の方に顔を突き出して聞いてくる。


まさかのボクっ娘、、ですか。

!!て!!それよりも!


「それより熱くないですか!?」


少女の顔は風でも吹けば火傷でもするんじゃないだろうかという距離迄火に近づいている。


「あ〜大丈夫、大丈夫、この子達は友達だからね」


ボクっ娘×不思議っ子きたぁ〜


「そうなんですかぁ、、、へぇ〜」

「ん?信じてない目ぇ」


少女は口元をぷくぅーっと膨らませると、おもむろに右手を上げ人差し指を立てる。


「見ててね」


彼女がニヤリとしながらそう言うと、ビビっと辺りが振動する。


「・・○・・○」


呪文とも歌とも聞こえる音が、彼女の口元から紡がれる。


すると不思議なことに燃え盛っていた炎が彼女の指先に吸い込まれるかの様に近づき、球体の様な丸っこい何かに変化した。


「ほら、お嬢さん方にご挨拶して」


彼女がそういうと、指先で燃えている炎の球体がモアモアと点滅する。


「すごい、、、、。」


目の前で炎が踊っている。


「精霊・・魔法・・・。」


おそらく俺もしているであろう表情を浮かべながらルリさんがボソッと呟く。


「精霊魔法?」

「はい、人間や亜人が使う魔力、魔物や魔人が使う魔素、そのどちらとも違う、世界に共存する精霊の力を行使する、数百年前に失われた伝説の魔法です。」

「かっかっか!

伝説って、凄いね、ボクのやってることってそんなに凄いの?」

「え?あ、、はい、凄いと思います。」


返答に困ったのかルリさんの声が若干裏返る。


「ふーん、失われた魔法ねぇ、、まぁ、ボクにとっては友達と会話してるだけで当たり前の事だからあんま自覚ないよね」


言いながら球体は五つに分かれ、開かれた五本の指先でクルクルと回転している。


「ほいっ」


彼女が分かれていた炎をまた一つに纏めると手のひらに乗せ消えそうな焚き火にそれを放り投げる。


するとボォっという音とともに炎が勢いよく立ち上がる。


「ところで、バタバタしててちゃんと自己紹介してなかったよね、ボクの名前はリンネ・スズノカ。」


名前の響きもどことなく日本人を連想させる。


「あ、私はマリア、、マリア・ルーエルトです」

「エルドルア・ルリです。」

「マリアちゃんにエルドルアさんね、よろしく」


「グルルゥ」


不意に白いモフモフが頭部を上げその喉を鳴らす。


お〜俺が目覚めたときから微動だにしなかったから毛皮かと思った。


「ん?お前もご挨拶したいって?」

「ワフッ」


と返事を返す様に息を吐く、


「こいつはホクト、ボクの眷属さ」

ホクトと呼ばれた大きな白銀の美しい毛並みの狼はその潰れた目で俺をジッと見つめる。


「ワフッ」

「マリアちゃんのこと気に入ったってさ」

「動物の言葉も理解できるんですか?」

「動物かぁ、まぁ、うん、この子の言うことはわかるよ」

「羨ましいです、動物と話せるだなんて。」

「まぁ、ボクにとってはこれも当たり前の事だから、羨ましがられる事じゃないんだけどね」


モフモフをわしわししながら、リンネさんは答える。


「ところで、君達は何であんな所に?」

「あー」

どうなんだ?

ありのままの経緯を話していいものなんだろうか?


「それは私から説明しますね」

ぐいっと俺の前にルリさんが割り込みながら話に加わりかいつまんで経緯をリンネさんに説明してくれた。

もちろん、ある程度、嘘と真実を織り交ぜてである。

流石ルリさん、一家に一台もとい一人欲しい存在。

さっきまで、泣きじゃくっていた人とは思えないポーカーフェイスっぷりである。


「助けて頂いて、本当にありがとうございました。」

「改めて私からも、ありがとうございました。」

会話の中で、やはりリンネさんに助けて貰った事を知り、俺とルリさんが礼を述べる。


「いいって、いいって礼をするのはボクの方なんだからさ」

「え?」

「あーいや、こんな美人さんと可愛い子ちゃんにね、あー同時にお知り合いになれてボクは幸せ者だなぁってね!」


「ね」って明らかになんか含んでる言い方だけど、まぁそこは敢えて、、、ね。

ルリさんも、うっすらと訝しげな表情を浮かべているが、助けて貰った手前強く言えないでいる様である。


「で、二人はこれからどうするの?」

「はい、ここが勇者の丘であれば、麓から数オド行った所に町があるはずです、まずそこに寄り、お屋敷に連絡をとろうかと考えています。」


オドというのはこの世界でいう距離の単位である、元の世界でいう所のキロに当る単位だ。

ちなみにメートルはド、センチはトである。


グゥ〜


数時間前からの緊張が解けたのか、まぁ時間的な物が大きんだろうが、相変わらず俺の空気を読まない腹の虫が昼以上の音量を立てて暴れ始めた。


その音を聞いて二人が俺の方を向き笑った。


そういえば、リンネさんの笑い方って、どっかで聞いた事あるんだよなぁ、、、。

どこでだっけ?


「笑わなくっていいじゃん、二人共、ひどいよ。」

「はぁう、申し訳ありませんお嬢様、直ぐに何かご用意しますね。」

といいながら、ルリさんは腰帯の辺りに手を入れゴソゴソとし始める。


「かっかっか。

こうなるんじゃないかと思ってね、

もう焼けてるよ。」

と言いながら、リンネさんは地面に刺さっていた何かの肉がこんがりと美味そうに焼けている串を二本抜くと俺とルリさんに差し出した。


「ここに移動しながら狩った野兎の肉だよ、ただし、調味料は持ち合わせてないから、味の保証はしないけどね。」

「でも、リンネさんが食べるように狩ったんですよね、頂いていいんですか?」

「何言ってんの、君達二人の為に狩ったんだから遠慮なんてしなくっていいって」

「では、遠慮なく頂きます」

串をリンネさんから受け取ると、肉汁が串から伝わって指に垂れる、ゴクリと喉が鳴った。

「お嬢様、これを」

どこから出したのかルリさんの差し出した手のひらに三角形に折られた紙が乗っていた。

「これは?」

「塩と、黒い印の付いた方にははコショウが入っています。」

「凄い、用意がいいねルリさん」

「いえ、使用人たる者、いついかなる事態になっても対応できるように準備しておきなさいと、婦長からの教えです。

使用人の腰帯は秘密の小箱なんですよ」

とルリさんは不敵に笑う。


秘密の小箱ですかぁ、、、また謎が増えた。


「ボクもそれ貰っていいかな?」

「あ、ごめんなさい気が利かなくて」

「いえいえ」

リンネさんは満面の笑みを浮かべて、、あ、うっすら涎が?

コショウと塩を受け取ると愛おしそうにしばらく眺めながら、慎重に封を開けて肉に振りかけた。


「はぁ〜このかぐわしい香り、、ああぁボク、本当に生きてるんだねぇ」


この世界では、意外とコショウや塩、砂糖といった、調味料は比較的普通に手に入る、といっても、元の世界基準でいえば高価だと思うが、一般の家庭でも普通に調味料として使われているとエルザさんに教えてもらった。


リンネさんはひとしきり鼻先で串焼きをクンクンすると、我慢できなくなったのか、口を大きく開け肉を頬張る。


「うううううううーーーーーーん!

うみゃい!!」


目を輝かせながら、モグモグと咀嚼するリンネさん。


ゴクリ、、、。


ヤバイいつのまにか、俺も涎垂らしてるし。

若干大袈裟にも見えるリンネさんの食べっぷりに圧倒されつつ、俺も肉を頬張る。


あぁ、、空きっ腹に肉汁が染み渡るぅ。

実際には、それほどの量は無いのだろうが、十何時間ぶり、何より、魔力枯渇をやらかした後の身体には、これだけの量でも細胞の一つ一つが無駄なく栄養を貪り取ろうと活発化しているような感覚に陥った。


「はぁ、、、うまい、、、。」


思わず口から感想がこぼれた。


「だよねぇ〜、これでエールでもあれば、言うことなしだけど」


とリンネさんはチラリとルリさんに目をやる


「流石にそこまでの用意はありません」

「やっぱり?」

「はい」

「あう、、、残念。」


ときっぱり断られた。


「あはは」


「うーーん、エールは町までお預けかぁ、、、残念」


しょんぼりしながらリンネさんは、最後の串焼きを抜き取ると、寝そべっていたホクトの鼻先に近付ける。


「ホクト、君も食べるかい?」

「バフッ」

「俺はいらないから、マリアちゃんにあげてだってさ」

「私に?いいの?」

「ワフッ」

「はは、本格的に気に入られたねマリアちゃん」


言いながらリンネさんがこちらに串を差し出す。


「ありがとう、ホクト」


俺が串を受け取ろうと手を伸ばすと


「!?」


リンネさんの手から串が消えていた。







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