無駄な駆け引きはやるだけ、、無駄。
32話完成しました。
今回は長めで一部グロテスクなシーンがございますので苦手な方はあまりオススメ出来ません。
それでは少しの間お付き合い下さい。
「すげー音が鳴ったから様子見に来させられたんだがよ、見に来て正解だったみてーだわな」
森からやってきた訪問者は、二人の男達であった、一人は昔テレビで見たことのあるマタギの様な格好で、熊だろうか、焦げ茶色の毛皮を着込んでいる、ずんぐりむっくりな体型の男、顔は着込んだ毛皮のフードのせいで確認出来ない。
もう一人は、上半身に軽そうな皮で出来た鎧を身につけているひょろっとした男。
シャツの下には、ひょろっとした体格に似つかわしくない筋肉がついている。
マタギの方は銃では無く弓と矢、そして皮鎧の男は腰に小振りの剣をさしていた。
もとの世界でこんな人間に出くわしたら絶対に近づきたくない。
特に印象的なのは二人の首に錆びた鉄の様な色をしたタグがかかっているいる所だろうか。
その一点だけに二人組の共通点がうかがえた。
「あんた達は?」
「ひーふーみーよー・・・」
皮鎧が俺が倒した狼達を指を指しながら数える。
同時に値踏みでもしてそうな嫌な印象の声色だ。
「おいおぃぃってそれそれそれ!!大当たりじゃねーか!!!
ふぅぅぅやるねぇ嬢ちゃんこれあんた一人でやったんかい?
それともあっちで転がってる姉ちゃんと一緒にかい?」
俺の質問には答えず、向こうから質問で返してきた。
そして俺の事には目もくれず、リーダーの近くに寄り膝を折り間近で観察し始める。
見ていない様で、ちゃんとルリさんの存在も確認している抜け目なさ。
こういう奴は十中八九俺の嫌いなタイプだ。
「だから、あんた達は何者だって聞いてるんだけど?」
少し言葉に怒気を込めるとようやく皮鎧が俺の方を見上げる。
「あーわりぃわりぃ俺たちかい?あーあれだ、冒険者、ぼーけんしゃ!
お嬢ちゃんが達が討伐したこいつに用があってこの丘に何日か籠ってたんだけどよぉ、中々姿を見せやがらないんで困ってたんよぉ」
と、リーダーを指差しながら答える。
「人食い狼の討伐っつー依頼があってよぉ」
大体マリアの記憶と俺の勝手なイメージとで予測はしていたが、この世界の冒険者の多くがこんな感じなんだろう、内心凄くがっかりした。
「ものは相談なんだが」
「・・・どうぞこいつは差し上げるのであなた達で処理して下さい。」
「いやぁ・・・まだ俺は何も言ってないけどねぇ?」
困惑の下にニヤリとした表情を浮かべる皮鎧。
ああ、、本当にこいつ生理的に無理。
「そうですか、、。
差し出がましい事を言ってしまったようで申し訳ありません。
では、こいつは予定通りこちらで処理しますので。」
「あーーいやいやちょっと待ってくれ、いいんだいいんだ、お嬢ちゃんがこいつをくれるっつーんだったら、有り難く頂くよ。」
「そうですか、それは良かったです。
崖の下にでも落とす手間が省けました。」
皮鎧がマタギに指示を出すと、マタギが腰に下げていた袋から縄を取り出し、器用にリーダーを縛り始める。
「でも、本当にいいのかい?
こいつを引き渡せば、金貨数枚にはなるんだぜ?」
「別にお金には困っていませんので」
「へぇ、でもこのご時世、金が全てだぜ、お嬢ちゃん」
「そんなものですか。」
「ああ、そんなもんさね。」
皮鎧は無精髭に手を当てながらニヤリとひと笑いする。
「それはそうとお嬢ちゃん、すげー怪我してるみたいだけど大丈夫なんかい?」
「ええ、問題ないので、用が済んだら早くここから居なくなって頂けませんか。」
「つれないねぇ」
「よく言われます」
「うちのパーティーに腕のいい治癒師がいるんだが、一緒に来ないかい?」
「いいえ、結構です。」
「はぁ、、そうかい、そいつは残念だ・・・」
両手で参ったというジェスチャーをとると、皮鎧がマタギに目配せをする。
数十キロはあるだろうか、リーダーの巨体を米俵でも担ぐかのようにヒョイっと肩にかけるとマタギは森の奥に向かう。
「毛皮を傷つけるなよ、そいつの素材は高く売れる」
マタギは左手を上げわかったという様に振ると森の奥に消えて行った。
「さて、お嬢ちゃんの希望通り、俺たちゃ退散するぜ。」
「そうして下さい。」
ん?
・・・どうした早く行けよ。
なんで、立ち去らないんだ。
「クク、、、ケケ、、、ハハハ」
皮鎧は右手で顔を覆うと下卑た顔で笑い始める。
「はぁーあ、、パーティの魔導士に聞いたんだけどさぁ、魔力枯渇ってのは、めちゃんこ苦しいんだってなぁ、抗えない眠気ってやつ?
睡眠を取らないと、精神崩壊を起こすらしいぜ、だからまともな魔道士や、魔力を使う人間ってのは、枯渇を起こす前に自分で制御をかけるんだってよ、ダンジョンや、敵の前で、寝込んでたらそれこそ命取りだしよぉ。
アホ魔道士や駆け出し魔道士にありがちなミスだってなぁ、駆け出しって訳じゃ無いんだろうし、おじょーちゃんは、アホなのかい?
ケケケケケ」
俺は皮鎧の言葉を他所に、ルリさんの方に向かって走り、、、。
駄目だ、、、身体が言う事をきかない、身体が重い。
とにかく今は全速力で、、、。
全速力で、、、、。
全速で、、、、。
全身の力が抜け、俺の意識はブラックアウトした。
ドザっという音と砂煙と共に、少女が前のめりの倒れる。
パンッ!
「はい、、お疲れさん。」
手を合わせて打ち鳴らすと、先程迄の下卑た笑顔は消え無表情になる。
ここからはお楽しみじゃなく、只の作業でしか無い。
無抵抗の人間をどういたぶろうが、先程迄の快感は得られないのは経験から知っている。
「無駄な労力が一番嫌いなんだ俺は。」
しかし今日は運がいい、、。
小一時間、歩いただけで、獲物が三体も手に入った。
昨日迄の不運が嘘の様だ。
あいつのまじないも満更じゃ無いって事か。
たまには神頼みもしてみるもんだ。
狼はギルドで精算、こっちの二人は、どちらもべっぴんさんだから、手足、喉を潰して奴隷商にでも売っ払えば、狼以上の儲けになる。
二人でざっと、金貨四百以上は固いだろう。
「拾われるのが、俺達でよかったな、俺達は犯しはやらねぇ、いや、めんどくさいだけか、、。
まぁせいぜい、いい飼い主に拾われるのを神様に願うんだな。
以外と神様ってのは、近くで見守って下さってるかもしれねーぜ、ケケケケ。」
一瞬、下卑た笑みが溢れる。
次の瞬間、男は右手首の手甲に仕込んだ殺気混じりの寸鉄を自分の後方に向かって投擲した。
「おいおい、いきなりご挨拶だなぁ」
聞きなれないしゃがれた声、男とも女とも判断出来ない。
だがそいつは放った寸鉄を避けるでも無く、右手の人差し指と中指で挟んでみせた。
普通の人間の出来る芸当ではない、高ランクの冒険者か、それとも兵法者か。
どちらにせよ只者では無いのは確かであった。
それに、服装、、というか何だ、、、。
マントなのか、、、布なのか、フードで隠れて顔はわからないのはいいとして、布に隠れている部分以外は妙に痩せこけた両手と素足の両足、、足元は当然、裸足であった。
これは蛇足だが、胸の部分は異常なまでに盛り上がっていて、突っ込んで良いものかどうか悩みどころだ。
「それはこっちのゼリフでしょーよ、これでも暗器の扱いに関しちゃ、それなりに自信はあったんですがねぇ、、。このプレートと一緒で、この腕も錆びちまったんですかねぇ」
言いながら、皮鎧は、首にかけてあるプレートを片手で持ち上げ、目の前人物に振って見せた。
「さあね、でもあれくらいの速度であれば、こうするのは容易いよ。」
さも何でも無いかのように、けっして細くも無い鉄製の寸鉄をグイッと曲げて見せる。
「いやいやいや、おかしいでしょそれ!」
「おかしい?」
「それ、一様、鋼鉄製の寸鉄なんですけどねぇ」
「あーそういう事、あたしにとっては、鋼鉄程度の硬さなんて、そこらの枝木と一緒だから。」
「へぇ〜・・・・枝木ですかい。」
こいつ一体何なんだ・・・・人間なのか?
それとも、モンスター・・・だが、この丘にモンスターが湧いたなんて話、聞いた事がねぇ。
「それはそうと、貴様!!
「・・・何でしょう?」
「うら若き乙女を拐かして一体どうするつもりだったんだ!!」
「それを知ったところであんたは一体どうするおつもりで?」
「助けるに決まっている!!」
脳筋か、、、?。
だが、二の矢、三の矢を放とうと相手の隙を狙ったり、挑発してはみるが、全く隙ができない。
一見、挑発にのってはいるようだが、反面、冷静さを保ち、警戒を怠らず、常に俺に注意を向け、行動の先手、また先手を取られてしまい手詰まりになる。
戦闘に関しては確実に何段も格上。
勝ち目が無い。
やばいなぁこりゃ。
下手したら、最悪、、死ぬ。
もったいねーがこのおじょーちゃん達は諦めて、この場から生還する事を第一に考えねぇと。
しっかし、さっきからうら若き乙女だとか、清楚で純粋な乙女だとか、乙女だとか処女だとか、、、、、、、。
頭の中で何か切れた。
「あーあーぁーごちゃごちゃうるせーんだよさっきから!
何なんだお前は!
変態かっ!!」
「貴様には言われたくない!」
マントマンは仁王立ちしながら俺に向かって、人差し指を突き立てる。
ピクピクと、額の血管が脈打つのを感じる、恐怖よりも、沸き立つ苛立ちを抑え切れない。
「あーそうだよ、こいつらは、攫って売っ払う、それの何が悪い!
金の卵が転がっていたら、それを見過ごすバカがどこにいるんかねぇ?」
「はい、悪者決定!」
構えもしねーで、なめ腐りやがって、、、。
格上だろうが、何だろうが、関係ねぇ、やってやるさ。
「・・・邪魔するってなら、死んで貰うぜ、、、。
あんたみたいな鶏ガラじゃ売り物になりそうにないからなぁ!!」
俺が短剣に手をかけると信じられない事に、さっきまで三四メートル離れていたにも関わらず、瞬間移動でもしたかのように目の前にマントマンの顔があった。
「ひっ!」
「誰が、、、、鶏ガラだって?」
柄に触れた手にそっとマントマンの手が添えられる、口元には、冷たい笑みが浮かんでいた。
触れられた手から体温が感じない。
血の通っていない死体のような冷たさだけが伝わってくる。
「つめたっ」
クソッ何かの魔法か?
だが、これは俺の間合い。
右手の手甲に仕込んである寸鉄をマントマンの露わになった顎にアッパーカットの要領で、振り上げる。
が。
ガキィ
という音と共に、右手に乗ったスピードが殺される。
「は、、、、嘘だろ。」
あの距離からの攻撃を、渾身の攻撃を、あろうことか、こいつは上顎と下顎の歯で受け止めたのである。
「ふぁから、ぷっ、おいたはダーメ」
吐き捨てた寸鉄が俺の額にコツンと当たる。
「あーーーーーー!!」
目の前で起こった事実が受け入れられずに思わず、叫んでしまう。
長年冒険者稼業をやっているが、モンスターにでさえここまでの絶望感を与えられた事がない。
だが、数パーセントでも生き延びるチャンスがあるのなら、見苦しくても、足掻くだけだ。
「スキル 【軽身】【加速】【身体強化】」
「ジョブスキル【軽業】【暗殺】【隠行】【狙撃】」
自分の持っている戦闘に有利なスキルを同時に発動させると俺はその場で飛び上がり、空中で回転し、マントマンの顔にめがけて蹴りを放つ。
が、マントマンはフッと、攻撃が来るのがわかっていたかのように、難なく躱して
「あっは!貴様、なかなか器用じゃないか」
と笑ってみせた。
俺は、両手の手甲に仕込まれた残りの寸鉄を全てマントマンの急所とおぼしき箇所に投げつける。
「こりゃ、夢なんですかい?」
が、寸鉄はマントマンの身体をすり抜けるかのように後方へと飛んでいく。
当たらない。
この距離で、、、スキルを使ってるのに、、。
「安心しな、こりゃ夢じゃない、ちゃんとした現実だよ。」
マントマンが両手を広げてゆっくりと近づいてくる、二、三歩歩くと、ボトボトという音と共に、大きめの塊が二つマントから落ちる。
「あ・・・・ああ・・・・・ああああああ」
「ん?知り合いかい?」
奴の胸部分から落ちたそれは、見覚えのある仲間の首だった。
不思議な事に、血が流れていない、やや干からびた感のあるそれら二つの首は紛れもなく、パーティの治癒師と戦士のそれだった。
「て、、、てめぇ」
心が折れかかった。
数ヶ月前に知り合ったばかりの俺と同じ【はぐれ】の連中だが、同じ釜の飯を食った仲である、それなりに思い入れがある。
その二人の生首が俺の方を向いている。
少しはセンチメンタルな気分にもなるさ・・・。
「てめぇは、、必ず殺す」
俺は短剣を抜くと奴に向け柄をギュッと強く握る。
ボンッという火薬が爆ぜる音が鳴りギュインという音と共に刀身が奴めがけて飛んでいく。
柄からフワリと煙が立ち登る。
強化された世界の中で、奴は一瞬動きを止めると慌てて頭を後方に反らせて刀身を躱した。
「かっっかかっかかかか
どんな悪あがきをしてくるか楽しみだったけど、、いやぁあははっはは。」
何がツボに入ったのか俺には理解出来ないが、変な体勢のまま大笑いする。
「ねぇ今のボンっての何?魔法じゃないよね?君からはあまり魔力を感じないから、あんな芸当は無理だよね。」
ズズ
思わず、俺は体勢を立て直した奴を見て後ずさってしまう。
フードが破れ露わになった奴の顔は鼻より上の皮が無く、筋肉と血管が、どくどくと脈打ち、眼球が今にも溢れそうな程飛び出そうとしていた。
「モンスター、、、てめぇ、、アンデットなのか?」
「失礼な!私をあんな、ぐちゃぐちゃでメキョメキョでクサクサなバッチィ奴等と一緒にしないでくれるかい」
「じゃあ、何なんだよ、、、一体テメェは何者なんだよ!!」
「ん〜勇者?」
マントマンはゆっくりと歩いたまま皮鎧の横を通り過ぎる。
ごと
噴水から水が上がるように血が皮鎧から吹き出る。
マントを脱ぎ捨て、その血を水浴びでもするかのように全身に浴びるマントマン。
「はぁぁぁ〜癒されるぅ〜」
シューという音がすると、煙が立ち、皮が生え筋肉と血管を覆い、髪が生える。
「あ、、、、さっきの聞くの忘れた。
ま、いっか。」
今の今まで赤い、どろっとした血塗れだった体はスポンジのように全ての赤を吸収し、女性ならではの、美しい均整のとれた肢体に変身していた。
読んで頂いてありがとうございました。よろしければ、評価、感想、ブックマークの程宜しくお願い致します!!




