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準備はいいか?

「顔合わせは済んだかえ?」


「はい」「うん、ママ」


二人が問いに答えるとアラケニアさんがオーケストラの指揮を取るかのように優美に両手をあげる。

すると黒色の光の粒子が彼女の全身を包む。


「ふぅ〜」


と吐息交じりにアラケニアさんが息を吐くと粒子が彼女を中心に高速で回転し、漆黒の闇を生みそして弾けた。


魔法ってなんでもありなんだねやっぱ。


そこにはエナメル質の黒光りしたロングマントを羽織ったアラケニアさんがいた。


「では、簡単にじゃが、契約の儀を執り行う。」


なるほど、あのマントは儀式用の衣装って訳か、流石にあの人もあの格好じゃ儀式には不向きって理解してるって事ね。

でもあの材質じゃ、動きづらいだろうに、そこら辺はブレないんですね。


「我が娘アラーニェ、お前は、エルドルア・ルリの魔剣としてその生涯を捧げる事を誓うか?」

「はぁい、誓いまぁす」


「エルドルア・ルリよ、お前は魔剣アラーニェの所有者として、寿命以外の死は認めない。

決して死んでくれぬな。」

「はい」


ん?・・・・本当にざっくりですね


「これは、母としての最初で最後のねがいじゃ、必ず守ってくれ」

「はい」

「では、互いの魔力交換を合意とみなし、契約を成立とする。」

「はい」×2


返事を返した二人の握り合った手が段々と暖かい光に包まれ、更にその光がアラーニェの腕、肩と全身に広がって行く。

次の瞬間光が弾け、正眼の構えをとったルリさんの手の中には、真っ白な刀身の美しい刀が握られていた。


「すごい・・・・・」


思わず俺の口から声がもれる。

目を奪われるとはこういう事をいうんだろう、元々凛々しいルリさんの佇まいが、刀を持つ事によってより一層際立ち、神々しささえ感じる。


「ふぅーーー」


と深く息を吐くルリさん。

ゆ っくりと閉じていた目を開くとルリさんの右目が真っ赤になっていた。

アラーニェと同じあの紅だ。


「我が娘達の事ながらでかしたと褒めてやらなければいけないレベルの魔剣と魔剣士の誕生ですねぇ」

「のわっっ!」


そう意味深に俺の耳元に甘い吐息を吹きかけながら囁くアラケニアさん。

はぁ、、、いつの間に俺の背後回ったんだか、この人は。

その格好で物音1つも立てないなんてありえないでしょ全く。


「そうですね、素人の俺から見ても分かりますよあの二人の凄さは、あと近いですアラケニアさん」


「失礼致しましたアキヤ様があまりに無防備にされていましたので、ついイタヅラを。」


「それはいいので、俺の耳にカプつくのを早くやめて下さい。」


「はぁ仕方ありませんねぇ〜、儀式で疲れた身体を癒して頂こうと思ったんですがねぇ、イケズなお方ですなぁ」


「はいはい」


と彼女を両手で思い切り全力で押し返す、意外にもすんなりとそれを受け入れ俺の横に押しやられるアラケニアさん。


「等級でいえば、、黒と鉄黒の間くらいでしょうかねぇ、二人の親和性が高まれば幻の暗黒までいけるかもしれませんねぇ」

「等級?まぼろし?・・・・ごめん等級がわからないや」

「あぁ、失礼致しました、アキヤ様、なにぶん娘達の契約の結果が妾の予想以上に高かったもので、ツイツイ興奮してしまい、これが、親バカというものですかねぇ」


七柱であるこの人でもこういう俗っぽいところがあるんだね、ちょっと安心っていうか、、、。

ご褒美(叱責)を欲しそうな顔でこっち見ないでよもぉー台無しだよこの人は、、、。


あげませんよご褒美は。


「ちなみに?」


見事にスルーをかましてもちょっと満足気な顔をするアラケニアさん。

はぁ本当にこの人はブレないみたいです。


「へぇ、等級は6段階ございまして、黒緑、通称、緑と呼ばれる等級が一番一般的な魔剣、いわゆるナマクラですね」

「一般的がナマクラって、ひどいディスりようだね」

「でぃする?」

「いや、こっちの話です。続けて下さい」

「次が漆黒、こちらは、まぁなまくらに毛が生えた位の魔剣になります。

素体は、意思疎通できる狼やら、鷲やら、まぁ一般的に神使と呼ばれる部類のモンスターですねぇ」

「シン、、シ?」

「へぇ、神の使いの事ですねぇ」

「神の使いを素体に使ってもナマクラに毛の生えた程度なの?」

「へぇ、稀に紫黒、次の等級に到達する者達もおりますが神使程度では、ナマクラに毛の生えた程度が関の山ですねぇ」


魔剣、、シビア。


「三級は今しがた話に出てきた紫黒です、通称、紫と呼ばれる魔剣ですねぇ、ここでやっと普通の剣位の用途には使用できるでしょう、漆黒までなら包丁として使用した方がマシ、世の中の為ですかねぇ」


ディスりが半端ないよ、アラケニアさん、世の中の一般的な魔剣士さんが聞いたら泣いちゃうよー。


「素体は神獣やら、低級から中級と言われる悪魔や天使ですかねぇ」


三級で神とか悪魔とか出てきたんですけど、インフレ凄すぎじゃないですか?


「ちなみに、普通の剣と比べると緑から紫ってどれ位の剣なの?」


「そうですねぇ、、一般的に紫は名剣、かの英雄達が使用した程度の剣程でしょうかねぇ、漆黒は名匠が鍛え上げた一品、緑は、職人が生涯でこしらえた中で一番の一口でしょうか」


え〜〜そんなん包丁にしたら、素材どころかまな板敷いた台ごときれちゃうじゃん!

はぁ、、頑張れ一般魔剣士さん。

ということは、ルリさんとアラーニェのコンビって、相当凄いって事じゃん、、。

何だか説明聞くのが怖くなってきた。


「次の四級が、あの二人の等級、黒になります。」

「お〜」


ホッとしたというか、残念というかまぁ、収まるとこに収まった感があるけど、いんじゃないんでしょうか。

伸び代は充分あるみたいな事さっき言ってたし。


「素体は、アラーニェのような魔人や、上級の悪魔、天使、稀に超越者と呼ばれる人間が己の命と引き換えに魔剣に身をやつす事もあるそうですねぇ

一般の剣と比較するとすれば、伝説の一本、というところでしょうか。」


伝説頂きましたぁー、という事は俺の目の前で伝説が誕生したって事だよね、、おおおおおスゲェー!!!


「まぁといっても、伝説が作られるかどうかは、あの二人次第ですけどねぇ」

「あの二人の事だから、いつかは作ってくれるでしょう・・・・メイド伝説。」


よくよく考えてみたら、そこまで凄い剣いらなくないですか?

ルリさんはルーエルト家の使用人なのであって、もう冒険者じゃないんだし。

まぁ、戦闘使用人ではあるけど。


「後の2つは、五級、鉄黒、通称、鉄。

素体は伝説と呼ばれる竜や妾のような超魔人、魔王、神、魔神、といった化け物級になりますねぇ。

剣の実力的にいえば、妾もここに位置付けられておりました。

ですが、使用者がまだ若いルリだった為、妾の本来の力の三割程しか使用できておりませんでした。

しかし、先程アキヤ様を救出した際に初めて四割程妾の力を引き出す事に成功したことで、アラーニェの力の引き出し方も掴んだらしく、不安定ではありますが、黒級の魔剣を生み出す事に成功したようですねぇ。

要は、魔剣の特質上、魔剣士の実力がともわなければ、いかに強力なモンスターと契約しても、ナマクラしか生み出せないという事ですねぇ。

最後の六級が、暗黒、これに関しては未だに前例がありません、発見されていないだけでこの世には存在するかもしれませんが、今のところ誰も見たことのない未知の等級になります。」

「未知なんだ、だったら最強は五級でよかったんじゃない?」

「まぁ人間という生き物の欲望は、はかりしれませんからねぇ、上を作ることによって、更なる発展を目指したんじゃないのでしょうかねぇ」

「あーなるほど、人間の性ってやつね、、。

でも神や魔王以上の存在って、一体なんなんだろうね?」

「・・・・・・・」


俺の質問にアラケニアさんの表情が曇った。


「さぁ妾には検討がつきませんねぇ。」


スンッ


聞きなれない音が耳に入ってくる。

音の元を辿るとルリさんが嬉しそうに刀を振っていた。


「凄いです姉さん、魔力を込めていないのにこんなにも軽い」

『ルリ〜年頃の女の子に軽い重いは禁句だよ〜』

「え?あっごめんなさい」

『うっそっ嘘、ジョーダンだって、ルリ真面目過ぎぃ〜

んじゃ大体ルリの剣筋掴めてきたからそろそろ本気で振ってみて〜』

「はい、いきます!」


瞬間、ルリさんの纏う雰囲気が変わると同時に


「ハッ」


ズン


掛け声とも気合いとも呼べる声と同時に先程の音よりも重い空気を切り裂く音が俺の耳を貫く。


『ふ〜凄いねルリぃ〜流石鬼人って感じ?

普通の人間の領域なんかとうに超えてるよ』

「いえ、私よりも強い人間なんてそこかしこにいますよ姉さん、それに、、足りない、、あの人の隣に立つにはまだ全然」

『ふ〜ん、ねぇあの人ってルリの想い人?』

「・・・・はい。

私の最愛の人です」

『ふ〜ん。

んじゃ調整終わったよもっかい思いっきり振ってみて、あっ切っ先はあれに向けてね』


アラーニェの意思が指す方向には幅1、2メートル程の巨石が転がっている。


「わかりました、、、、、。

茶化さないんですね姉さん」

『茶化すとこじゃないでしょ今の?

それとも茶化して欲しい?』


「いえ、全く!」


それを掛け声に、ルリさんが構えた上段を振り下ろす。

その顔には今までみたことのない粗暴な笑みが浮かんでいた。


「二剣、、、、、飛花」


残心とともにルリさんが呟く。


『お見事、ルリ』

『流石です、姉さん」


ゴロンという轟音がした方を見ると、彼女らの目先3メートルに真っ二つに割れた巨石が転がっていた。







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