魔剣と柱
本当に・・これだからファンタジーはもう・・・。
俺の苦手な物の上位に余裕でランクインしてくる虫さんがいつもの何千倍、、何万倍、、あーーー嫌、もう、そんな計算もうどうでもよくなる程の超ビッグサイズの蜘蛛が俺の目に飛び込んできた。
もう叫けぶとか、喚くとかそういう次元の問題では無く、一歩間違えれば発狂し兼ねない衝撃だった。
アニメのワンシーンのような黒線がビーンと顔面にひかれるのを感じながら俺は身体を引きつらせ、ズズッと後方にたじろいだ。
実際にこういうリアクションをするもんなんだね、ヒトって。
だが、後方には今まで落ちていた崖があるので、これ以上巨大蜘蛛との距離をあけることはできなかった。
まさに背水の陣だよねこの状況。
はははは。
あーーーーーーーーーいーーーーやぁぁぁああああ
そんな俺の心情を知ってか知らずか、巨大蜘蛛がその多すぎる目で俺を捉えると、のしのしとこれまた多過ぎる脚でその重そうな巨体を支えつつのろのろと近づいてきた。
パラパラと小石が崖から落ちる。
気づくと俺の踵は崖すれすれにまで追い込まれていた。
「お嬢様、大丈夫です危険はありません」
ああ、ルリさん、、そう思っていただけるなら早く召喚を解いて下さい。
「ビッグマムさんがお嬢様とお話ししたいと」
「お話っていいますと?」
声が裏返ってしまった、蜘蛛とお話しって、一体、どうすれば、って、さっきからルリさん一言も喋って無かったですよね
あ、、、目があった、、、。
わーーーなんか、一杯ウニウニ忙しそうに動いていらっしゃる。
蛇に睨まれた、、、、。
「お久しぶりでございます、魔王様」
ん?凄い優しい声
どこからともなく、落ち着く懐かしさを感じさせる声が聞こえる。
え??え???
キョロキョロと辺りを見回すが蜘蛛意外人間は俺とルリさんしかいない。
俺がビッグマムさんを指差してルリさんに確認を取ると、ルリさんはニッコリとうなづいて返してくれた。
えーーっと。
このギャップは、、、、無しです。
「魔王って、、、人違いではないでしょうか?」
ルリさんに聞こえないよう、なるべく小声でビッグマムさんに話しかけてみる。
「人違いとは、ご冗談を、久方ぶりに感じる、この濃厚で芳醇な魔素の香りは魔王リョーマ様の物に相違ございません。」
「匂いて、、、。
魔力に匂いなんかあるんだ、、体臭みたいで何か嫌だ、、ん?魔素?魔力じゃなくて?」
「またまたご冗談を、魔力は人間の使うエネルギーの総称、我々魔族の使うエネルギーの総称は魔素でございましょう。
現在は、私のように吸収した魔力を魔素に変換できる者も少なくはありませんが、始祖に近い存在の魔王様方は純粋な魔素の使い手でございます。
まぁ私の知る限りの話ではありますが。」
初耳だ、人間とモンスターでは、使うエネルギーの質が別物なんだ。
「魔王様、今回のお身体は、人間の女なのですね、お珍しい。」
「珍しいの?」
「・・・・はい、私の知る限りでは老若男人外色々とございましたが、性別が女、雌であることがなかったので」
「そうなんだ、まぁリョーマ男だしなぁ
そういう事に関しては、真面目さんなのね彼は」
「はい?」
「嫌、こっちの話です」
「魔王様」
「嫌、だから俺、魔王じゃないんですけど、何ですか?」
「先程から何故、念話をお使いにならないのでしょうか?」
「念話?」
「はい」
言葉から想像するにテレパシーみたいなものか、念ずれば通ずみたいな?
試しにやってみるか。
魔力を相手に向けて、、、って!!!
あああーーー顔近いて!!!!
いつの間にかビッグマムさんとの距離がかなり近くなっていた。
会話の途中で怖いから崖から離れていたので問題は無かったが、やっぱ色々ウネウネ動いてるーーー慣れないーーーー。
はぁ・・・・コホン。
では気をとりなおして。
フン!!
「お待ちください魔王様!」
「え?」
キーーーーーーーーーーーーーン
と辺りに異音が鳴り響いた。
「キャッ」
とルリさんが咄嗟に耳を塞ぐ。
スキル 「念話 【広域】」 を入手しました
あ、スキル、、、獲得したみたい。
「今のって俺のせい?」
俺も咄嗟に耳を塞ぎながらビッグマムさんに念話を試してみた。
「え?お嬢様?」
ルリさんが不思議そうにこちらを見つめてくる。
「はい、、ですが、一度人間の意思疎通方法にお戻し下さい。」
「あーごめんなさい、はい」
「ごめんルリさんこっちは大丈夫だから、安心して」
「はい」
「どうやら・・・・・。」
ギョロギョロと八つの目が今日一の速さでめまぐるしく動く・・・・・はっきりいって恐怖以外の何物でもない。
「若干ですが魔王様の体内に人間の魔力の存在を感じます、恐らくそれが膨大な魔素と反発して暴走を起こしかけております。」
マリアのあの魔力量が若干って、魔王どんだけだよ。
しかも借り物だろリョーマの魔素は、、、絶対あいつこんんなことになると想像だにしてなかっただろうなぁ。
あ、、嫌、、、想像しててのこれか。
クソ魔王め。
「それって、やばい?」
「やばい?」
「あ、ごめん、危険かってことなんだけど」
「魔素と魔力がうまく馴染んで安定すれば問題はありませんが、今現在魔王様がお使いになっているお身体の魂の器の大きさが小さすぎる為、魔素が溢れ出てしまっている状態です。
なので、安定するのは難しいかと。」
「つまり?」
「このままですと魔素の暴走により、初歩の火魔法を使っただけで魔王様自身が焼かれます。」
「ん?」
「獄炎で御身が焼かれます」
「いやいやいや、、はいそうですかって、、なるわけないじゃん、それ物凄い危険じゃないですか!!」
「そうですね」
えー温度差ぁ
「暴走しないようにするには?」
「一番簡単な方法は今の身体を捨て新しい器の大きい身体を探すですが、、、これは時間がかかるので、除外ですね」
除外というか、マリア以外の選択肢は最初からありません。
それによくよく考えれば魂の器って、俺の問題じゃない?
「もう一つは、溢れ出てしまっている魔素を私が吸収するという方法ですね」
「それでいきましょう」
即決です、別に借り物の力だし、無くなってしまったとしても、器の小さすぎる俺には分不相応だったというだけで不都合ではないし、マリアの魔力のみでも、充分やっていける。
嫌、むしろ奴の魔素さえなければ、魔脈にスムーズに魔力が流れてちゃんとした魔法が使えるんじゃない?
よし!!
この際一気に俺の中にある魔素を全部吸ってもらおっと!!
「できれば俺の中にある魔素を全部吸収して欲しいんだけど」
「・・・・・・・・?」
ビッグマムさんの大きい顔がガクンと音を立てて傾く。
随分と大袈裟な?だ。
「ダメでしょうか?」
「魔王様からすれば溢れ出た魔素は、1日ないし2日で回復してしまう物でも、我々にしてみれば10年20年は、いえそれ以上の期間、自身の生成する微量の魔素のみで生活出来できる程。
それを全てとは、、、、、。
私自身、吸収後どうなるかわからないので、正直なところ恐ろしいというのが本音でございます。」
「そこをなんとか」
「・・・・・・・・・」
まぁ命に関わる事だし、断られても仕方がないよな。
これで駄目なら諦めよ。
「お・ね・が・い」
90度お辞儀からからのーーー
両手の平合わせウィンク!!!
これが俺の今の精一杯のカワイイです!!!!
「はっふ、、、、。
・・・・・・・・・
かしこまりました。」
スキル 「悩殺」 を入手しました
え、今はっふって、はっふって何だ?
ビッグマムさんに一体何が!!!
どさくさに紛れてスキル入手したし。
「では私の額にお触れ下さい」
「はい」
言われて素直にビッグマムさんの額もとい毛むくじゃら
のもじゃもじゃに触れる俺、慣れって恐ろしい、、。
「少しばかり脱力感を感じると思われますのでお気をつけ下さい。」
「うん」
「ではまいります」
瞬間とてつもない脱力感を感じる。
と
反比例して
「あああああああああああああああああああああああん」
最後の「ん」って何だ!
叫び声とも、悶え声とも取れる奇声を上げるビッグマムさん。
こっちは力が抜けてちゃんと立ってられないってのに、何だよ全く!!
次第にビッグマムさんの周りを光の粒子が包み始め、数秒後には巨体を光が飲み込んでしまった。
「え、、え、、、ええええええ」
これには、ほぼほぼ蚊帳の外になっていたルリさんも驚きを隠せないようで、わなわな震え、口元を手で押さえている。
「って!!」
思わず声をあげながらルリさんを指差す俺。
だって、いつの間にかセクシービキニアーマーから元の地味な使用人服に戻っちゃってるからさぁ!!。
そりゃ不平不満の1つや10位出るでしょーよ。
「え、、え、、、ええええええ」
ちょっと前とは違うニュアンスで驚くルリさん。
ナイスリアクションです。
いけない、いけない、そーこーしている内にビッグマムさんを包み込んだ光がその勢いを失いしぼんでいく。
しぼんで、しぼんで、しぼんで、、っておい!!
しぼみすぎでしょ!
あの3メートル近くあった巨体がその姿を失い、、、。
「はぁ、、妾も、よもやここまで戻るとは想像だにしておりませんでした」
漆黒のラバーウェアにそのはち切れんばかりのボンキュッボンの豊満なボディを包み、唯一肌を露出している顔部分には鋭角の大きな黒色のサングラスをかけている。
その下にある、今言葉を発していた口元は、唯一、紅く艶かしく動いている。
その腰まで伸びた黒髪をファサーっとたくし上げながら
「はぁ」
と吐息を吐くビッグマムさん。
手はそのまま、額、目、鼻、口、首、肩、胸、と順番に自身の身体を確かめるかのように降りていく。
一連の動作がいちいちセクシーでセクシーで仕方がない。
「久方ぶりの感覚で、、我を忘れてしまい、失礼致しました魔王様」
全身を触り終えると、場所が場所ならコツコツと音が鳴りそうなピンヒールを地面に突き刺しながら、俺の方にラバーウェアのギュッギュという音をたてながら近づいてくる。
そしてすぐ側まで来ると、その場に立ち止まり、ゆっくりと腰を落とし跪く。
「この姿でお会いするのは、何百年ぶりでしょうかねぇ魔王様、魔王軍、七柱が一柱、アラケニア御前に罷り越しました。」




