マクマ4
雲が流れる。
お日様はポカポカ。
吹く風はサラリと初夏の心地良い香りを運んでくれる。
あの飛んでる鳥の名前はなんだったっけ?
見上げる首が、、、、痛い。
何時間ここでこうしてたんだろう。
仕事の後はいつもこうだ、気が抜けるのとは少し違う。力を使った反動だろうか?
「お帰りなさいお嬢」
「あー団長さん、お早うございます。」
フミニルの後ろには麦わら帽子をかぶった男が控えていた、いかにもな農作業着の袖口から出た腕は農民のそれとは少し違う発達の仕方をしている。
肩に担いでいる鍬は今にも数十人の人間を殺せる武器になるような殺気を纏っていた。
「団長さん、、また殺気漏れてますけど、大丈夫ですか?」
「お嬢がお休みの間、お守りするのが私の役目ですから、外敵が近寄らなくするためです」
「だから大袈裟だって、少しの間ボーっとしちゃうだけだから」
「はぁ、、何が少しの間ですか、、今回は一時間二十三分程空を見上げてらっしゃいましたよ。」
「こまかっ、、いいですよもう、、、父さんに義理立てしてくれてるのはありがたいですけど組織の中じゃ団長さんの方が偉いんですから、いち平団員の仕事に毎回付き添って護衛するだなんて、それこそ他の団員に示しがつきませんよ。」
「他の団員が何か言えば、その団員の人生毎消してやりますから、ご安心下さい。」
「こわっ、、ふぅ〜もう別にいいですけど。」
「はい」
「で、今回も着替えは団長さんがやってくれたんですか?」
見ればフミニルの服装はあのいかにもな暗殺者の格好からいかにもな村娘の服装に変わっっている、勿論仮面も外され14、5歳の目鼻立の整った美少女の顔が露わになっている、その顔は微かに泥に煤けていた。
「いえ、前回、前々回の反省を生かし、若い女の団員にやらせました」
「そうですか、もうちょっと早く反省していたら、私の不信感は買わなかったんですけどね」
「えっ」
「冗談ですよ」
「はぁ、、、大人をからかうのは止めてくださいお嬢。」
「やっぱり少し本当です」
「いっ」
何事にも動じなさそうな屈強な体躯をした男が少女の言葉にの一言一言に翻弄される様は一種異様である。
フミニルは団長に向かって、いたづらっこの様な笑みを浮かべ下をベェーっと出す。
団長は肩をすくめ、はぁーっと深くため息をついた。
「あ、ゆっちに報告しないとですね。」
「こちらを」
団長はベストから黒い手のひらサイズの板状の物体を取り出し、フミニルに差し出す。
「ありがとうございます。」
フミニルはそれを受け取ると両手で覆い魔力を流す、ポワッと物体が光りだすと、スルリとフミニルの手から抜け出し浮かび上がる。
「ゆっちに繋いで」
とフミニルが呟くと、ブーンという低い音を鳴らし回転する。
その間にも明滅は繰り返されている、携帯電話でいうところの電波の三本線というところだろうか。
回転速度がだんだんと落ちていき、数秒後に止まった。
「フミニルか、、、、」
仕様なのか、女性とも男性とも判断のつかない音声が板状の物体から発せられる。
「おはよーゆっち、元気してましたか?」
「ああ、、どうした?」
「ここは、連絡する時は時間を選べとか、今は都合が悪いとか言って、焦るべきなんじゃないんですか小悪党としては?」
「阿呆が、私の覇道は、お前といつ何処で話そうが、踏み外す事は無い。
それに私は小悪党では無い、、、極悪党だ。」
「えへへ、ゆっちは、いつでもゆっちですね、今回は仕事の報告です」
「ああ、マリアの、、、。」
「残念ながら司祭様は失敗しちゃいました。
彼女、、まだ生きてますよ。」
暫くの沈黙が続いた。
この沈黙の意味するところはフミニルには理解出来なかったが、何故か胸が締め付けられて痛かった。
「フミニル、後を任せていいか?」
「いいよーっていうか、最初から私に頼めばよかったんじゃ無いですか?」
「私は彼にただ、看取ってくれとお願いしただけだ。
孤児院の件も彼との約束通りに支援する」
「えへへ、ゆっちならそう言うと思ってたから送る時に使わせて貰いました。」
「当たり前だ、何せ私は極悪党だからな。」
「極悪党ですからね。」
二人の言葉が重ね合う。
「用は終わったか、切るぞ」
「そのセリフ、小悪党っぽいですね。」
「はぁ、、本当にお前との会話は調子が狂うな。
ああ、今回の仕事、一つ条件としてあいつ、マリアが全快してから行う様にしてくれ。」
「何でですか、確実に遂行するには衰弱しているであろう今を狙った方がいいんじゃ無いんですか?
仮にも相手はあの元勇者候補の英雄様なんですよね?」
「不安か?」
「ううん、、むしろワクワクしてますよ、久々に全力が出せるかも知れませんし。」
「では問題無いな、頼んだぞフミニル。」
そうゆっちが言うとふっと光りが消え、板状の物体が地面に落ちた。
暫く地面に落ちた物体を見つめるフミニル。
「長期の偵察を含めれば、四、五名団員をさけますが」
「私一人でいいですけど?」
「相手は元とはいえ英雄級の使い手です、もしもの事があるかも知れません。」
「もしも?って」
振り返ったその顔にはあどけなさの残る美少女の顔は残っていなかった。
そこにあるのは抜き身の殺意だった。
何故だか、胸が痛い。




