産声
「ああああああああああああああああ」
目を開けるより先に俺の口から聞き覚えの無い声色の悲鳴が発せられる。
状況が飲み込めない、不安になり早く周囲の状況を確かめようと目を開けたが視界がぼやけていてあまり良く見えない。
「ああ、、、神様、、、。」
パタンと音が鳴ったのでそちらを見ると、突然の事に驚いたのか傍に立っていた女性らしき人影がフラフラとその場にへたり込んでしまった。
「マリア様・・・・ああ、神様!!」
泣き声と嗚咽が混じった声が周囲から聞こえ始めた。
「誰か、先生をまだいらっしゃるはずだ」
「はい」
ぼやけていた視界が回復してきた。
主人らしき人物に声をかけられた使用人らしき人物が急いで部屋から出て行く。
主人らしき中年男性が俺の左手を掴むと優しく握りしめその場にひざまづき掴んだ手を自分の頬に持って行く。
「ああ、マリア、、、。よく、、よく、、、、。ああ、、これこそ奇跡、、」
オヤジに手を握られて喜ぶような趣味は嗜んでないけど不思議と嫌な気はしない、むしろ手から伝わってくるホワンとした温かさが心地良さを感じる。
ナイスミドルだからだろうか、、芸能人で言えばあの外国のカッコいい中年代表のあの人、、、えーーーあーーー名前が出てこないけど、ま、、いっか。
もちろん俺にそちらの趣味は無いと断言しておく。
「う、、、うん」
先程倒れた女性の意識が回復したようで、使用人さんに介助されながら俺のそばに来ると、反対の手を握りオヤジさんと同じように俺の傍に腰を下ろす。
この人も相当の美人さんだ、雰囲気が女優のあの人、これまた名前が出てこないさんに似ていた。
「マリア、、本当に良かった、、母さんがわかりますか?」
この人が母親なのか、、という事はこっちのオヤジさんは父親なんだろう。
母親の問いかけに頷こうとしたが、力が入らなかったので瞬きで答えてみた。
すると母親さんはそっと俺の手を置くと口を両手で覆い泣き始めてしまった。
あー泣かすつもりは無かったんだけど、、、まぁ今のこの人達の心境を考えたら仕方ないか。
コンコンとノック音がすると先程出て行った使用人さんがゲームに出てくる神官着のような衣装を纏った人物を連れ立って入って来た。
「失礼致します、先生をお連れ致しました。」
使用人さんの説明で状況を飲み込めなかったのか先生と呼ばれた人物はまさかという顔で俺の方を見ている。
「まさか、、、。」
目を丸くしたまま俺のそばに来ると右手を取り脈を測る。
「奇跡だ、、。」
持つ手は心なしか震えている。
でも、、、さっきから奇跡という言葉があっちからもこっちからも聞こえてきてあまりありがたみがあるように聞こえなくなってきた。
「先生、私達はあなたの診立てが間違ったとは思いません。
それに私達も先程まで娘はあちらに旅立ったものだとばかり、、ですが娘は、、マリアはこうやって私達の元に帰ってきてくれました、、。」
「はぁ、、、」
気の無い返事でオヤジさんの熱弁に答える先生、心なしか顔が青ざめている。
無理も無い、死亡宣告した人間が目の前で、生き返ったのだから。
でも復活させる魔法があるんだっったら、死んでも生き返らせる事だって可能だったろうに。
宗教上の問題なのだろうか。
「とりあえずお嬢様に、気付けの魔法を使いますので、使用人の方々はお嬢様に白湯と消化の良い物をお持ちください。」
「はい」
先生がそう指示すると中年のかっぷくいい使用人のおばちゃんが部屋から急いで出て行く。
先生が俺の方に向き直り手をとった
刹那
んあ!?
頭に激痛が走る
正確には情報、、、、、大量の悪意、ねっとりとした暗黒のビジョンが俺の頭の中になだれ込んできた。
俺は咄嗟に先生の手を振りほどく。
といっても先生の手のひらに乗せられた手を動かした程度の事だが。
でもさっきまで身動き一つ取れなかった身体がやっと命令に従ってくれたようだ。
まぁあれだけの悪意を向けられたら火事場のクソ力の一つや二つは発動するだろう。
そう、先生は俺を、、嫌、、、この身体の前の持ち主、マリアを殺そうとしていた。




