事実2
俺の右拳にワナワナと力が入る。
叶わないまでもこいつを一発殴りたいィーーー!!
あ、、でもディノスの野郎、、じゃなかった、ディノス嬢にまたプスリとやられるのがオチか、、。
「まぁそこまで悲観する事はないぜフジムラアキヤ」
「はぁ、、何で?」
「お前は手に入れたのさ!!チャンスってやつを」
そういうとまた俺の顔を使って変顔というドヤでウインクを飛ばしてきた。
「・・・・・」
「・・・・・」
場を静寂が包む。
パチン、、、暖炉の薪が火花をあげる。
え、なにこの状況、、俺が話を進めなきゃいけないの?
「チャンスって?」
リョーマは劇的にソファから立ち上がり両手を広げて
「世界を大冒険するチャンスさ」
こう言いはなった。
「・・・・・」
「ん?嬉しくて声もでないかなぁ?フフン!」
「あー驚いて声も出ないよ、、別の意味で」
「何だよテンション低くないかい?
もっと、こーーーー。
あおー異世界大冒険!!だとか
剣と魔法の世界でスリリングに生き抜いてやるぜ!!だとか
海◯◯に◯はなる!!とか無いのかねぇ」
「最後のは異世界関係なく無いかい?」
ゲームといい、アニメといい、元世界と異世界行き来して何の情報を仕入れているのやら。
「まぁとりあえず、俺とお前の身体が上手く分離する方法を見つけるまで強制だなんだけど。」
「やっぱり、そうくるか」
はぁ、、、ため息しかで無い。
確かに異世界、、剣と魔法の世界に興味はなくは無いが、元の世界でも俺の生活は、能力のおかげでなかなかにエキセントリックだったから正直面倒くさいというのが正直な感想だ。
できれば身体が元通りになる間位はゆっくりとスローライフでも楽しみたい気分である。
「お前がそれを求めるのかよ、、かっかっかっかw」
リョーマがドカッと腰を下ろし足をばたつかせながら腹を抱えて妙な感じで笑った。
「無理無理、、1日で退屈過ぎて根を上げるのがオチだって、、、、かっかっかw」
「失礼な、てか、やっぱ俺の心読んでんだろ完全に!」
「いやいや、ははっ、、ふぅーーー失敬失敬、、、。」
リョーマは落ち着いたのか体制を整えると足を床につけて俺の方に向き直る。
「まぁ、真面目な話、こちらもタダで復活させてやる程お人好しじゃないんでね、等価交換って感じで協力してくれよ」
「等価交換って、俺はタダ巻き込まれただけなんだけど」
グッと部屋に圧力がかかった感じがする。
空気が重い。
つーーーーっと背筋に冷や汗が垂れる。
ちょっ!うわっつ!この方のスイッチの入り方わかりませーーーん!!!
「ちょっとこっちも不良物件を抱えちまってさ、困ってたところなんだよ、だからお前さんが協力してくれると正直助かるんだよねぇ」
うわー反社会的な方々の恫喝を受けているようだ、、、てか魔王ってその最たるものだから当然っていえば、当然か。
変なところで納得がいってしまった。
「で、、俺は何をすれば?」
不意に部屋の空気が軽くなるのを感じる。
うわーわかりやすい、、自分の要求は何が何でも通すワンマンタイプの人だよこいつ。
「まぁー伊達に魔王は名乗ってないからねw」
リョーマはそういうとクシャリと少年のような笑みを浮かべる。
「フジムラアキヤにやって欲しいのはズバリ!復讐です!!!」
「ふくしゅう?」
「あーリベンジの方ね」
「あー復讐ね、、、、ん?」
「いやーお前さんの転居先のたっての希望でさ、それがなければ超すげー優良物件だったんだけどさ、まぁ、お前さんも0歳から始める異世界生活てのは面倒だろうから丁度良く無いかい?」
「確かに1からやり直すってのは面倒だけど、備考欄(※印)に要復讐なんてのが記入されていたら遠慮したくなるのは世の常だよね」
「あん?」
だから、、、リョーマさん圧がすごいから、、圧が。
「わかったよ、やるよ、やればいいんだろ復讐!」
「よし!!素直で宜しい!!!かっかっかw」
「ぷはっ、、はぁはぁ」
呼吸ができなかった、、、。
「あんまごねるようならスライムになってもらうとこだったぜw」
「それは全力で遠慮します」
「助かったなw」
スラっととんでもないこと言いますね本当に。
「んで、物件紹介なんだけどさ」
何かちょっと前から不動産屋に来ている客と店員のような会話になってない?
「ズバリ職業、勇者!!16歳!!!魔法、剣技何でもござれ!!!!」
「ゆ・う・しゃ?」
「あ、失礼、正確には魔王、つか俺を討伐してないから勇者というよりは、英雄ってとこか?それとも英雄の方がアレだから勇者でいいのか?」
「そこは別にどうでもいいけど、、勇者が復讐って。」
「あー勇者の奴、俺を討伐する旅に出てたんだけど、志半ばで何者かに呪殺の印を刻まれちゃったみたいでさ、呪いのせいで故郷に戻って最近まで闘呪生活を送ってたみたいだけど、もう長く無いみたいでさ。
俺のところに念を飛ばして来て契約を持ちかけてきたんだよねぇ、、、。
いやぁー笑ったよ、討伐相手と契約をかわそうだなんて、そんな常識ハズレな考え思いつかないもんな普通w」
「国益よりも私怨が勝ったって話か、、、。」
「そうそう、こっちで調べたけど、こっちの勢力が手を出したんじゃ無いのだよ、家は脳筋が多いから来るもの拒ままず正々堂々がモットーだからさ。」
単純そうな魔王が統治するとそうなるのかなやっぱ。
「ん?」
目が笑って無いですよ魔王様。
「で、面白そうだったからその契約に乗ってやった訳さ。」
「はぁ、、そうなんだ」
「いちよ、死んでから俺の眷属としてやってみない?って誘ったんだけど、人間として死にたいって断られちゃったんだよねぇ。残念残念」
「まんまブラック企業に就職する人間はそういないだろ」
「いうねぇ、、フジムラアキヤ君」
「まぁとにかく、お前さんはこっちで自由にできる肉体を手に入れた訳で、勇者は復讐を果たせると。
まさにこれはウィンウィンの関係ではないですか!!!」
パチパチとリョーマは両手を伸ばし拍手をする。
「うまい話には裏があるっていうけど?」
「ないない」
大袈裟に手を振り否定するリョーマさん、胡散臭いなぁ本当に、、。
俺自身がそういう仕草をしてるからさらに胡散臭い。
「復讐だって冒険の傍にやってくれればいいし、あ、そこは先方にも了解とってあるから、期限とか気にしなくていいからね。」
ゆるいな、、復讐心。
「まず第一に冒険を楽しんでってのが大前提だからさ、気楽にやってよ」
「ああ、そうするよ」
気が重いような、、そうでないような。
「あ、言い忘れてたけど向こうでのレベルは1からだからさ、勇者のスキルとか魔法ってのは使えません、てか、魂が別物になるわけだから、そもそも魔法もスキルもあったもんじゃ無いじゃんw」
「え、、、それはどういう?」
「つまりは、こっちの世界で生きていく上で絶対的に必要な能力が備わってないって事?」
あったじゃんデメリット!!!
それに何で疑問系なんだよ魔王!!!!
「だって何分こういったケースは初めてだからさ、こっちも手探りでやってるわけでして、、、。」
「そこは、何とかしてくれよ魔王様!」
「えーめんどくせぇー」
「めんどくせぇーじゃねーし!!鼻ほじってんんじゃねーよ!!!」
そこからゴネゴネゴネ時間にして2、30分程ごねてみた、、。
こっちも死活問題になるんだから当然だよなそれ位。
「わーったよ!!わーーった!!!」
「・・・・・・・ふぅーーー。」
荒くなった息を整える俺。
「フジムラアキヤさんには俺の能力の一端を貸与します、、それでいいか?」
「能力の一端を、、、、貸してくれんの?」
「そうだけど、何か不満でも?」
「いや、こういう場合は何か特別な能力を一つ授けるとかなんじゃないかってさ」
「あーー、、チート能力って事?かっかっかw
抜け目がないねフジムラアキヤ。
でもそんなもん貰ってどーすんのさ、冒険や旅っていうのは1から自分の力で地道に突き進むから面白いんじゃん。
ゲーム定番の雑魚モン、スライム退治からでも始めてみなよ。
こっちのスライムが基準値になるかは別だけどねw
まぁ俺が能力を貸すっていうんだからそこらの生活魔法位は難なくこなせるから心配すんな。」
力を催促したようでバツが悪く、リョーマを正視する事が出来ない。
「かっかっか!!人間、強大な力が目の前にぶら下がってたら永遠に走り続ける事になったとしても使ってみたいてのが本質ってもんだ、気にすんな。」
リョーマは一際大袈裟に笑うと立ち上がり俺の肩をパンパンと叩く。
「さて、じゃあ契約といこうか」
「え、、契約」
「願いには対価が必要だ、お前が俺の能力を望むなら、それ相応の対価を頂く。
それが常識というものだ」
「常識ですか、、、。
で、リョーマは俺に何を望むの?」
「霊能力」
「わかった」
「潔いねフジムラアキヤ」
「今の俺に差し出せるのはそれしかないし、身体はリョーマが使ってるからな」
「それに、こっちの世界で霊能力がどう作用するか解らない以上、不確定要素は排除した方がいいと思ってね。」
「それこそチート能力として重宝したんじゃないか?」
「え、、そうなの?」
「さぁ?」
「あてずっぽうかよ」
「んじゃ諸々の手続きは済んだから早速転生してもらおうかな」
「え?」
「タイムイズマネーだよフジムラアキヤ契約なんてものは気が変わらないうちにちゃっちゃ済ませちゃうのが肝だ・ぜ♡」
だからウインクはやめてくれ、、、。
全然そんな素振りも見せなかったのに契約とやらは完了したらしい。
思い当たる事といえば、、、あの肩を叩かれた時に何かされたのか、、、。
こいつ未来も見えるのか、、。
「それは無理無理。
それができるのは、、、嫌、、。
お前さんがどんな返答をしようが契約はするつもりだっただけの話。」
「そう・・な・・・・・・・・」
リョーマが俺に告げると、俺の意識はゆっくりと遠のいていく。
混濁する意識の中、、、、あいつはまた胡散臭い笑みを浮かべながらコッチに手を振っていた。




