タマゴ強すぎてワロタ
『マスター…ワタシ……マモルカラ』
タマゴの中、殻に遮られて聞きにくかったがそれでも確実に…
あの中にいる何かが俺に喋りかけてきた。
「お前…今喋ったのか?」
次の瞬間、タマゴが宙を舞った。
バク宙のような動きでクルクルと複数回空中で回転し…
白井健三にも引けを取らないほど見事に体をひねりまくり、ゴロツキ集団の先頭を走る男の顔面に勢いよく着地した。
「プギャッ!!」
着地点にされた男は鼻血を吹き出しながらその場に崩れ落ちた。
「おい大丈夫かよ!? テメェこの…タ、タマゴ…オ、オラァ!!」
ゴロツキの一人がタマゴに対して威嚇するがどうも締まりが無い。
まあ威嚇する相手が手足の生えたタマゴなのだから当然だろう。
俺も同じ状況だったらキレる事が出来るかどうか…
仲間の一人が負傷し怒りのボルテージが急上昇するゴロツキ集団。
一方のタマゴはそんな事には意も介さずに念入りなシャドーボクシングをしている。
タマゴがシャドーボクシングをしている…なんかシュールだな。
シュシュシュっとジャブやらストレートやらアッパーやら何やらを数十発…
シャドーを終えるとブラブラと体をほぐし垂直ジャンプをした後に、タマゴは臨戦態勢に入った。
テレビでみるボクシングのあの構えだ。
左手が右手の少し前に置かれ膝で小刻みに体を揺らしている。
カッコいい…が、見た目がタマゴだから違和感が半端ねぇ!!
「ボクシングガチ勢かよ!!」と思わず突っ込みたくなるのを必死に抑えて俺はタマゴの動向を見守った。
するとタマゴは次の瞬間思わぬ暴挙に出た。
何と、ゴロツキに向けて手を伸ばし中指を立てて挑発し始めたのだ。
何やってんのあのタマゴ!!
バカなの!?
死にたいの!?
ゴロツキ集団からブチブチと頭の血管が切れるような音が聞こえてくる。
みんなゆでダコみたいに真っ赤になって殺意たっぷりにタマゴを睨みつける
「野郎ぶっ殺してやらァ!!」
ゴロツキ達が一斉にタマゴに向かって襲いかかる。
やられる…タマゴォォォォお!!
俺は叫びタマゴを見つめる。
思えば最初から最後まで謎な奴だったなと死んだ後のセリフを頭に浮かべると不覚にもちょっとだけしんみりしてしまった。
それはつまり…タマゴが勝つなんてこれっぽっちも思ってないという事を意味している。
「タマゴ…良い奴だったよ」
タマゴはここで死ぬのだろうと勝手に思い込んで俺はそうセリフを吐いた。
しかし、タマゴの動きを見た瞬間、俺の考えが的外れもいいところなのだと教えられる事になる。
正確に言えば、“見た”瞬間という表現は違うな。
自分可愛さに良いように語っているだけだ。
だって…タマゴの動きは速すぎて俺の目には消えたようにしか見えなかったのだから…
気がついた時にはゴロツキ達は血まみれの状態で気絶していたのだから…
「えーと…うん…あれだね、キミはすっごく強いんだね(苦笑)」