異世界転生だと理解した
「で…でけぇ………」
思はず言葉が漏れてしまった。
ただそれは仕方ない事だと思う。
多分俺以外の誰でも同じ反応をしていたに違いない。
だって…こんなに大きくておまけに金色なタマゴなんて今までに見たことも聞いたこともないのだから。
「なんだよこれ…おもちゃか? いや多分本物のタマゴだな」
タマゴを持つ両手に熱が伝わってくる。
タマゴは人肌よりもあったかくてまるで湯たんぽみたいだ。
その熱がこのタマゴの中の生命を感じさせ、これが本物のタマゴなのだと俺に理解させる。
でもだとしたらだ…これは一体なんのタマゴなんだ?
鳥か…いやいやだとしたらどんだけ大きな鳥だよ。
恐竜のタマゴか?
いやさすがにそれは馬鹿げた話だ。
その可能性は絶対にないだろう。
「だとしたら…本当になんのタマゴなんだよ…」
「おいにいちゃんさっきから道の真ん中で何座ってんだよ。邪魔だから退いた退いたッ!!」
男の声で背後からそうどやされた。
「そうだぞ~どいたどいた~!!」
男の言葉を反復するようにして、今度は小さな子供の無邪気な声が聞こえた。
そういえばここは道のど真ん中だったな…すっかり忘れてた。
「すいませんッ今どきま………す………」
振り返った俺は声の主であろう男とその背におんぶされている子供の姿を見て言葉を失った。
何故か…………
理由は明白でいたってシンプル。
「耳…獣の………耳!?」
振り返った俺が目にしたその2人は、頭に獣のような耳を携えていたのだ。
コスプレ…いやアレは作り物にしてはリアル過ぎるし…何よりパタパタ動いてる!!
「なんだよ人の耳をジロジロ見やがって…“半獣人”がそんなに珍しいのか?」
「珍しいのか~!!」
「ああ…いえ…その…すいません」
急いで地面に広げた物を全てリュックに詰め込んで勢いよくチャックを閉めて背負う。
そして、俺は考えがゴチャゴチャとまとまらないままその場を走り去った。
「お、おいッ……これ忘れ……ぞ!!」
男が何か言っているようだが今の俺には届かない。
息を乱しながら走る。
気持ちを取り乱しながら走る。
そして、先ほどの男が言った“半獣人”という言葉を聞き、尚且つあの獣耳を目の当たりにした俺は自分の身に何が起こっているのかをだいたい理解した。
間違いない…間違いようがない!!
ここは… “異世界”ッ
つまり俺は………
“異世界に召喚されたんだ”!!