いびき
「ごがああああああ…ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…ごがあああああ!!」
多分、熊が冬眠している時などはこんな感じの爆音のいびきをかいているんだろうな………
そう思ってしまうほどにうるさいいびきがリビングに響き渡っている。
このいびきの元凶…それが目の前で寝転がるタマゴであるということは言うまでもないか。
タマゴは相変わらず孵化しないままの真ん丸フォルムでリビングのソファに寝っ転がっていた。
何故、いつから、ここにこいつが居るのだろうか…俺の昨日の努力は何だったのだろうか…
と、様々な感情が入り乱れるがとりあえずこいつの事を起こすことにしよう………ただし、
「死ねええええええ!!」
普通に起こす気など俺には毛頭ない。
多少過激なぐらいがちょうどいいだろうと思う。
なので、気持ちよさそうに寝て居るこいつに全力のかかと落としを仕掛けた。
決して、俺の苦労も知らずに爆睡している事に腹が立ったからではない。
そういうわけでは決してないが………
俺が昨日した分の苦労の重み…今この一撃で思い知るがいいわ!!
ズガァァァァァン!!
ヒビの一つぐらいは入るものだろうと思っていた。
あわよくば殻をかち割ってタマゴの中の素顔を拝めるかもと淡い期待をしていた。
………が、現実はそこまで甘くはないらしい。
タマゴはまるで鉄のように硬くてヒビどころか微動だに一つしなかった。
逆に俺のかかと方が今にも悲鳴をあげそうである。
「かっ…………ッ………痛い」
痛みで声も出せずにその場に座り込んだ。
「何やってんだよお前………」
ウタカタさんは哀れなものを見る目で俺を見つめる。
「いえ…昨日色々騒がせてくれたお礼にかかと落としで仕返ししてやろうかと………痛い」
「そうかよかったな(笑)…痛みが引けるまでとりあえずそこに座っとけ」
「…………はい…そうします」
数分ほどで痛みは引けたが、ウタカタさんが哀れそうに俺を見ているため…起き上がるのにはもう数分ほどかけた方がいいだろう。




