ミツキ
「どうなってんだよ??」
疑問が声となって外へ飛び出た。
まさか…昨日の事は全て“夢”だったのだろうか?
異世界召喚から始まった怒涛の一日に疲れ切った俺がこの家の前で寝落ちしてしまったのだとして…
その夢に出てきたあの完璧萌え少女は、癒しを欲するあまり俺が脳内で作り上げた偶像だったのだろうか?
だとしたら…ちょっと寂しいな。
せっかく仲良くなれそうだったのに…
「ああそうだ…お前の言うような美少女は居なかったが…これ」
そう言ったウタカタさんは自身のポッケから何かを取り出して俺に見せてきた。
「何だコレ………ハンカチ?」
ウタカタさんが見せてくれたのはピンクの生地に花柄の刺繍が施された可愛らしいハンカチだった。
「え? 何ですかこれ…まさかウタカタのハンカチですか!? だとしたらキモいですね」
「ぶち殺されたいのかお前は」
ウタカタさんが鋭い爪を俺の柔肌に突き立ててきた。
「ごめんなさい冗談です」
この反応…どうやらこのハンカチはウタカタさんのものではないらしい。
じゃあ誰のものなのだろうか?
そう思いハンカチの表裏をチェックすると
『ミツキ』
という名前らしき文字が見た事もない文字で書かれてあった。
この文字が何文字なのかもわからないのに何故俺が読む事が出来るか謎である。
多分異世界召喚の特典なのかな?
ミツキ…まさかあの子の名前なのかな?
だとしたらやはりあの子は夢なんかじゃなくて現実だったのか!?
「それ…血まみれのお前の鼻を覆うようにして乗っかってたんだ。誰のものかは知らんが、預かりものは持ち主にしっかり返しておけよ」
俺が血まみれだったという事はゴロツキとの件は現実。
だとすれば…あの狐耳美少女も現実だったんだ!!
ここで俺はそう確信した。
間違いないこれはあの子のだ…となれば一刻も早く返しに行ってあの“ヒロイン候補”の美少女と親交を深めなければ!!
『昨日はありがとう…名前は?』とか、
『君は何処に住んでいるの? 僕は○○○に住んでいるから遊びにおいで』とか、
そんな、たわいない会話に花を咲かせなければ!!
「デュフデュフ…それから俺とあの子の間に色々な感情が芽生えてそれから…………あ!!」
そう色々と今後の事について妄想を膨らませている最中…俺は重要な欠点に気づいた。
そもそも…あの子が何処にいる誰なのかわかんないからこの妄想は実現しないや………てへぺろ(≧∀≦)
どうやら、俺の異世界ハーレムは遠い夢物語のようだ。
「ああそうだ…お前の連れのタマゴ…見つかったから教えておくぞ」
「………え? まじですか!?」
「うんマジ…今はリビングでゴロゴロしてる」
「ゴロゴロしてるってなにッ?」
何処にいやがったあのタマゴ!!
てかゴロゴロしてるとか超ムカつくんだけど!!
なんなの嫌がらせなの!?
取り敢えず、俺は布団から飛び起きてタマゴがいるというリビングに向かうのだった。




