狐火
ゴロツキに追われどうなったのか、結果を先に述べると…逃げ切ることは出来なかった。
すでに1時間以上捜索に体力を使い疲労困憊だったのだから仕方ない。
ゴロツキたちに捕まった俺がどうなったのかは話すまでもないだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
数分間に渡って俺はゴロツキ共からボコボコにリンチされた。
口や鼻から大量の血がとめどなく溢れ出る。
意識がはっきりとしないのはおそらく軽い脳震盪を起こしているからだろう。
何発も何十発も…数えるのも嫌なぐらい殴られた。
それだけ殴られたのだからそれも仕方ない。
「昼間のあのタマゴは何処だよッ。お前の次はあいつの番だ。昼間は油断したが今度はそうはいかねえ。あの黄ばんだ殻を割って中身をグチャグチャに引き裂いてやる」
もう意識も途切れ途切れな俺をゴロツキの一人が無理やり起こし、首にナイフを当てそう言った。
「し、知らねえ…よッ」
「ああ? 自分の仲間の所在を知らねえこたぁ無いだろ。此の期に及んでも仲間の身の心配か? さっさと吐かねえとうっかり手元が狂って喉元をザックリしちまうかもしれねえぞ」
ふざけんなよコイツ…マジで知らねえのにそんなことされたらたまったもんじゃねえ。
「本当に…知らないん…だよ。むしろ…俺があいつの場所を教えて欲しいぐらいなんだからな」
「そうかい…ならもういいわ。とりあえずお前を殺った後にゆっくり探すとするわ」
とりあえず…だと?
とりあえずで他人の命を奪うとか何処まで腐り切ってやがるコイツら!!
顔面をぶん殴ってやりたい。
あの時のタマゴみたいにここにいる全員を一瞬でフルボッコにしてやりたい…
が、悔しい事にそれが無理なのは分かり切った事だ。
男が手に持ったナイフを振り上げる。
そして俺の首めがけてほぼ垂直に振り下ろし始めた。
振り下ろされ刻一刻と俺の首に近づいてくるナイフはまるでスローモーションのようにゆっくり見えた。
死ぬ間際に見ると言われる走馬灯と同じ原理なのだろう。
俺の命も残り1秒程度か…
せっかく異世界召喚されたのに、結局何もなし得なかったな。
サヨナラ…恥で塗り重ねられた他愛無い我が人生よ………
何故か目の前には紫色の火玉が見えた。
おそらくあの世から迎えが来たのだろう…
『狐火!!』
人生に別れを告げた俺にその声が届いたのは、俺の眼前を“紫色の火玉”が通過したまさにその直後だった。
「ぐわぁぁぁ熱っちい!! なんだこの火!?」
紫色の小さな火玉はナイフを持つ男の腕を直撃し不気味に光る。
「あれ? …俺ってまだ死なないのか」
すっかり思考力の低下仕切った俺は数秒ほど身動いせず座り込んだ後、そんな馬鹿丸出しに声を発っしてしまった。
「悪事はそこまでよゴロツキ共。その人から離れなさい!!」




