ありふれた出来事
夕飯を食べ終えた一服の席にて、俺は思い切ってウタカタさんたちにあの事告げる。
「ウタカタさん…俺は異世界から来た異世界人なんです!!」
異世界召喚もののタブーに触れた気がした。
ただ、ここでこの人たちに打ち明けた事は正しかったと、この先笑って話せる気もした。
晩御飯をご馳走してもらった。
さらに、ウタカタさんは俺に、
「今日はウチに泊まっていけよ」
と言ってくれた。
これ以上甘えても良いものだろうか…と悩んだが、断ったとしても行く宛など微塵もないので泊めてもらう事にした。
そのお礼としては実に些細ではあるが…
じぶんの身に今日起きた出来事を話そう。
いつまでも正体不明の不思議な奴ではいられないからな。
そう思い…俺はこの人たちに打ち明けたのだ。
「飯を食わせてもらって…そして一泊させてやるなんて言ってくれて…ありがとうございます」
深々と頭を下げ、心を込めてお礼を述べさらに話を進める。
「ここからは俺の勝手なお願いですから答えて貰えなくても結構です。ウタカタさんのその優しさにこれ以上漬け込むような形になってしまい心苦しいのですが…」
「俺にこの世界の事を詳しく教えてください!!」
俺が異世界人だという事…
それを信じてもらえるとは思っていない。
信じない方が普通なのだと思う。
これは異世界で頼るものがない俺の勝手な頼みなのだから、笑って聞き流してくれてもよかった。
「へぇーそうなのか。そりゃ大変だったな…お疲れさん。俺の知ってる事ならなんでも話すぜ…“異世界から来たにいちゃん”」
予想もしてなかった。
まさか、こうもあっさりとウタカタさんが俺の言った出来事を飲み込んでくれるなんて…
「信じて…くれるんですか?」
「魔法でなんでもできちゃうこのご時世なんだ…ありえない話じゃないだろ。その程度の事で疑ってたらきりが無い」
………何か寂しいぐらい反応が薄いな。
信じて貰えなかったり驚かれたりした方がまだ新鮮味があったのに…
「それに珍しい話でも無いさ。なあマタタビ」
「そうね…確か三軒となりの家に生まれた赤ちゃんは竜の生まれ変わりだとか言ってたわね。それにこの町内の町長さんも何処かから召喚されたらしいし…」
え!? ちょっと待って!!
これって町内程度の規模で何件もある話なの!?
そんな平然と語れるほどメジャーな話だったの!?
「そんなことよりもにいちゃん…あんたの連れの方がよっぽど謎だ。何でタマゴから手足が生えてんだよ。あとなんでこんなにデカいんだ?」
そんなことより…ですか!?
俺が異世界召喚されたのってそんな程度の出来事なんですか!?
「すみません…俺も謎です。気がついたら荷物の中に入ってました」
「ええ~!! それどういう状況!!!?」
「ああ…これは驚くんですね」
鼓膜が破れるのではと心配になる程大きな声で驚かれた。
どうやらこの世界では、俺の異世界転移の告白なんかより隣の謎タマゴの方が事例が無いらしかった。
てか…謎タマゴこいつに関してはこの世界の人でも謎なんだな…
どうしよう…こいつの存在が謎すぎて困る。




