晩飯
これも運命というものなのだろうか。
先ほど偶然再会した半獣人の親子…
「ウチによっていけ」というので、俺はそのご好意に甘えて夕飯をご馳走になっている。
「おお~今日はシチューか!? しかも牛肉!! 何だか食わせるのが勿体無いなぁ…ガハハっ冗談だよたらふく食え!!」
若干笑えない冗談を言った男がこの家の主人のウタカタさん。
満身創痍の俺に手を差し伸べてくれた命の恩人とも言える人だ。
「そうだー冗談だーたらふく食えー!!」
それでその横でシチューを貪っているのが4歳になったばかりだという娘のリュミちゃん。
言葉を覚えたばかりなので基本喋ることはウタカタさんの真似らしい。
「ちょっとウタちゃん冗談にしてもお兄さんの笑顔が引きつってるからやめなさい!! 遠慮なくいっぱいお代わりしてねお兄さんッ」
優しい笑顔で俺の分のシチューをよそってくれたこの人はウタカタさんの奥さんでマタタビさん。
名前から猫の半獣人だと思われがちだが実は“イタチ”の半獣人らしい。
それで…未だに紹介もできない謎生物が俺の隣に。
このタマゴ…死ぬまで俺について来るつもりか?
すっかり懐いてしまった様子のタマゴさんは体を揺らして今か今かと自分の皿にシチューが盛り付けられるのを待っている。
俺はこの時“殻で顔隠れてんだから食べれないじゃん”…と思ったが、テンションの上がっているタマゴちゃんに言うのは可哀想なので黙っている事にした。
「ええ~若干一名がすでに食べ始めていますが、それではみなさん手を合わせて…いただきます!!」
「「「いただきます」」」
タマゴが食卓において“食べる側”に居るという何とも言えない光景…シュールだ。
この後、俺たちが夕飯に舌鼓を打っている間、隣のタマゴがジッと夕飯を睨みつけたまま静止していたのは言うまでもない。




