偏頭痛とリア充
偏頭痛持ちだ、だからってなると思うだろうけれど、同じように偏頭痛持ちの人ならばこの辛さ、分かるはず。
分かってほしい、分かってくれ。
薬は使う事にどんどん慣れていくのに、偏頭痛だけは慣れることなく、痛みを押し付けてくる。
私が何をしたと言うんだ。
キリキリ締め付けられるような痛みに、ガンガンと響くような痛み、ガツンッと殴られたような痛み。
終いには目の神経からも痛みが来る。
動けない。
動きたくない。
ベッドの上で、寝返りを打つこともせずに壁を見つめていると、やけに時計の音が大きく感じた。
体が固くなっていくのを感じるが、ここで少しでも頭の位置をずらしたら、更なる痛みが襲いかかってくるのだ。
こういう時は動かないのが一番だと知っている。
出来ることなら薬を飲んで眠ってしまうのがいいのだが、先日病院に行ったら薬の飲み過ぎだなんだと注意された。
そのために薬の量が少なく、飲むに飲めない状況にある。
ズクンズクンと脈打つ痛みに奥歯を噛み締めながら堪えていると、部屋の扉が開く音。
誰かなんて分かっているので、わざわざ寝返りを打って確認することもない。
二回続けて瞬きをして、私は壁を眺め続ける。
「……大丈夫?」
「それ、聞く?」
喋るのも億劫で、返す声がだいぶ小さい。
ぽそぽそと壁に向かって答えれば、背後からは溜息が降って来て、ベッドのスプリングが音を立てる。
「……薬は?」
頭痛に響かないようにという配慮なのか、言葉を紡ぐ際に妙な間がある。
その上、いつもより低くて小さな声。
いい、と呟いた私に再度溜息を落とした彼は、私の髪を梳くように撫でた。
冷えた手が気持ち良くて、サラサラと髪を掻き分けるような撫で方も気持ちいい。
目を細めながら、重くなる瞼を感じる。
瞼と同じくらい頭が重いけれど、ゆっくりと振り返って彼を見上げた。
見上げた先の彼は瞬きをして、寝ないの?と呟くように言う。
寝るよ、寝るけど……。
「……あり、がとう」
重い瞼が落ちていくのを感じながら告げれば、彼は柔らかく口元に笑みを乗せて、頭を撫で続けた。
目が覚めた時には偏頭痛が治っていることを、私はなんとなく感じている。