表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傍にいられたら  作者: 柚子ティー
9/16

どうして

何ヶ月か経ったとき、いきなり恵に言われた。


「唯!あ、あああのねっ」


恵が顔をリンゴのように赤くしてどもりながら。


「私の、好きな人のことなんだけど」


おお。ずっと秘密にされてきた好きな人を教えてもらえるんだ。

恵が言ってくれるならあたしも教えようかな……。




そのときまで何も考えてなかった、全然気づいてなかったんだ。

まさか――。

「驚かないでね、実は――……




……海斗くんのことが好きなの」



――え……?

今何て言った?恵の好きな人が、柿沢くん?

それを時間をかけて、理解した。


「あ、そう……なんだ」


ようやく絞り出せた言葉がそれ。


「うん///どう思う?」

「……いいと思うよ」


あたしの体の中が、すうっと冷えていく感覚。

恵はあたしの様子に気づかない。

ちゃんと笑えてるか自信がない。でも恵は気づいてないから笑えてるのかも。



どうして。


「告白、してみよっかなあ」

「え」

「フられちゃうかもしれないけどね」

そういって可愛らしく笑う。

……ずるい。あたしはそんな風に笑えない。


親友だけど、そんなことを考えた自分にあきれた。


「そっか」

「上手くいくかな?」

「いくよ、恵なら」

「ありがと。応援してくれる?」

恥ずかしそうに言う。


「……うん」


そう言ったけどがんばってね、とはどうしても言えなかった。






どうして気づかなかったんだろ。恵の近くにいたのに。

恵が柿沢くんを見てたことに、気づかなかった。


……それはきっと、あたしが自分のことしか考えてなかったから。

自分のことしか見てなかったから。

早く気づいていれば柿沢くんと話す機会を減らしていたかもしれない。


……でももう遅い。知ってしまった。柿沢くんの優しさ、不器用さ、……柿沢くんといるときの楽しさ。



恵はきっと柿沢くんに告白するだろう。

恵のことだし、きっと上手くいく。親友の恋だっていうのにあたしは応援できない。

あたしの体は冷えたまま。上手くいかなければいい、なんて最低なことを思っている。


……最悪。


その言葉しか出てこなくて、恵が自分の教室に帰った後もあたしはその場に立ち尽くしたままだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ