初恋
「何の話?」
どこから来たのか、江口くんと柿沢くんが話に入ってきた。
「好きな人の話だよ」
「えっ、唯って好きなヤツいんの!?」
「あたしじゃなくて恵のこと」
あたしが言うと恵は顔を真っ赤に染めてあわてた。
「ちょっと唯っ何で言っちゃうの」
「あれ、ダメなの?」
「当たり前だよ///」
「高嶋さんの好きな人って?」
「か、海斗くんにも教えられないよっ」
柿沢くんがあたしを見るけど、あたしもよくは知らないからただ首を振る。
江口くん達にもいろいろ聞かれて恥ずかしくなったのかもうこの話は終わり、と恵は無理やり話を終わらせてしまった。
今日もいつもの帰り道を4人でゆっくりと歩く。
あたしたちは全員自転車で学校に通ってるけど4人で帰るから、自転車を引きながら2列になって帰っている。
……他愛もない話をしながら。
そして、恵と2人になった時に言ってみた。
「……恵」
「なあに?」
あたしはすこしためらいながら聞いてみる。
「ボーッとしてる時に」
「うん」
「ついついかっこいいなって思ってる人のことを考えちゃうのって恋かな」
「恋でしょ!」
「……そうなの?」
「気付いたらその人のこと考えてるんでしょ?」
「まあ、そんな感じ」
「ほら!」
恵は楽しそうに笑った。
静かな風が、恵の長い髪を揺らす。
「そっか~唯、好きな人出来たんだ」
そんな風に言われるとなんだか恥ずかしくなってきた。
「それってさっきのかっこいいって言ってた人だよね」
「え?ああ、うん」
そっか、あたし柿沢くんのことが好きなのか……。
今日もずっと柿沢くんのことを考えていたし、柿沢くんと話してる時はなんかいつもより楽しかった気がする。
……恋、なんだ。
「いつから好きになったの?」
恵は続ける。
「どんなところが好きなの?」
今、あたしたちに好きな人のことで質問され続けていた恵の気持がわかった。
これは恥ずかしすぎる。
「あ~もうやめてよ」
「あはは」
まだ恵には言えない。なんか恥ずかしいし。
そう、それにきっともうすこし後でも遅くない......____。