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傍にいられたら  作者: 柚子ティー
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江口くん

あの日から1週間ぐらいたって――、

やっぱり恵と柿沢くんは付き合い始めた。


彼女の口からは毎日柿沢くんの話が出てくる。

同じクラスのあたしでも知らないようなこととか。


帰り道は当然、恋人同士の2人が並んで楽しそうに話して……


そんな姿を見るとすこし、すこしだけ胸が苦しくなる。


前は恵より、あたしのほうが彼といる時間が長かったはずなのに今は逆。

2人はデートだってしてるけどあたしは学校でしか会えない。



――苦しいよ……。


せっかく江口くんが話してくれているのに、あたしの耳にはその話は半分も入っていない。


もっと話したい、もっと近くにいたい……その想いが体の中をぐるぐると駆け巡る。

そして親友の喜びを同じように喜べない自分を嫌悪する。





――――目の前の2人ばかりを見ていて江口くんがすこし苦しげな表情であたしを見ていたことに気づかなかった。






「あのさあ」

「え、なに?」


ある日、江口君に声をかけられた。


「……唯って海斗のこと好きなのかよ」

そんな事を聞かれると思ってなくてびっくりした。

……ていうか、あたしはそんなにわかりやすかったの?


「そっそんなことないよ」

急いで否定したけど江口くんは確信したようにうなずいた。


「唯、否定したって無駄。バレバレだし」

もう認めるしかない。


「そうだよ……」

「ふうん」

「なんでそんなこと聞くの?」

「……」

彼はすこし考えてから言う。

「もし辛かったら……話聞いてやろうかなって」

「え……」

「親友と自分の好きな奴が付き合ってるなんて辛いだろ」


すこし目を伏せてそう言った。

「うん、ありがと」

「……おう」

江口くんはいつものように笑った。


「あ、ねえ」

「ん?」

「あたしってそんなわかりやすい?」

「まあ、わかる人にはわかるかな」

「えっじゃあ――」

「いや、あの2人は鈍感だから気づいてねえよ」

よかった……。

「そっか」

そこで彼は友達に呼ばれたらしく、

「じゃあなっ」

とあたしに手を振って走って行った。



ありがとう、江口くん……。


あたしは手を振り返し、もう一度心の中でお礼を言って自分の席に戻った。


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