暗く淀んだ瞳の先は(***視点)
早くも一話投稿です。
とは言え、今回はとっても短いです。
前話とつなげても良かったのですが、一応他者視点なので分けてみました。
「失敗か・・・・。」
とある王都を一望できる丘の上。
私の隣にいる男は忌々しげに眼下の先を見下ろしていた。
チラリと男を見遣るが何の感情も浮かびはしない。
私は冷めた目で目の前に広がる光景を見下ろした。
計画は順調だった。
このままいけばあの国は滅びる。
強力な結界術を保有するイスール国を滅ぼせれば、イスールよりも強力な結界を持っていない他は如何とでもなる。
あと少し。
そうあともう少しで・・・・・
それなのに、
ああ、なんて忌々しい。
勇者一行、いや、あの女。
初めて会った時から目障りだった。
あの何もかも見透かすかのような瞳が。
周りなんて何とも思ってはいないかのような感情の見えない顔が。
魔術の才能は、私よりも劣っているというのに。
常に私よりも一歩先を行く。
ああ、忌々しい。
常に私の先を行くあの女。
何故あの女なの?
憎らしい。
ああ、何て憎らしいの!!!
「エルゼリーゼ・ファウマン。必ず地獄に落としてあげるわ。」
女は一人目深に被ったフードの裏で笑う。
暗く歪んだその瞳は、この街に居るであろう人物ただ一人に注がれていた。




