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この世界で生き残るために  作者: スタ
四章 ゲームシナリオ編
40/61

出逢いとは驚きと偶然で出来ている(レナルド視点)

 前回の続きとなっております。

 


 出発当日。


 集合場所である城門に集まっていたのはジルベール王子と近衛騎士一人だけだった。

しかもその近衛騎士は女性で余計に驚きである。


「おはようございます。・・・お二人だけですか?」

「ああ、そうだ。俺の護衛はこいつだけだからな。それが如何した?」

「い、いえ。」


 もっと護衛がついて来るのかと思った。

 それにしても、護衛が一人って大丈夫か?


「私一人では不安ですか?」

「え!?あ・・・い、いや。」


 顔に出ていたのだろうか。思っていたことを言われてドキッとする。


「何だ?護衛一人なのが不安なのか?こいつはこう見えて『微笑みの堕天使』なんてふざけたあだ名で呼ばれているんだよな。」

「ジル王子。それは、貶していると捉えても?」

「え!?い、いや・・・・褒めてる!褒めてる!」

「ほう?」

「ははは。」


 二人のやり取りを見つめながら、初めは王子が旅に同行することに不安を覚えていたがこの二人とならうまくやっていけるだろうと思えた。









 城下街で旅の装備を整え、出発して間も無くだった。


 話によれば聖剣は四つの宝玉を集めることによってより強力な力を使えるのだとか。

 その宝玉は東西南北の遺跡に祀られているらしい。

 まず、四つの中でこの王都から近いフリューリング遺跡に在る宝玉を取りに行く為、西へ向かっている途中だった。


 街道沿いで定期的に騎士団が巡回に来ているからと言って、魔物や盗賊が居ない訳ではない。

 別に遭遇しないと高を括っていた訳ではなかった。

 それでも盗賊が商人に変装していたことには正直驚いた。それと同時に油断もしていたのだろう。

 王子達には充分に警戒した方がいいと言われていた。それなのに、俺は街道で困っている商人風の旅人に何の疑問も抱かずに手を貸してしまった。

 背後から気配を感じて咄嗟に商人を庇いながら後ろを振り返る。剣を構えていたことで、背後の攻撃に対応することは出来たが、思わぬところからの攻撃には対応することは出来なかった。


 ヤバイ!!


 後ろを取られたことに気付くも間に合わないと思った。

 しかし、幾ら待っても痛みも無いので不思議に思いかざした腕の間から相手を見ると其処には見知った人物が居た。




「間に合ったな。」



「エリオット!!お前なんで此処に!?」

「話は後。先に此処を片付けよう。」

「あ、あぁ!!」


 背中合わせになった彼は次々と敵を倒していく。

 かく言う俺も後ろを気にする事が無くなったので安心して前に集中出来た。

 盗賊を全員倒して改めてエリオットと向き直る。




「どうして此処に?」


 どうしてエリオットが此処に居るのか見当もつかない。

 そう質問すると淡々とした口調で答えをくれた。


「お前を追って来た。」

「俺を?」


 コクンとエリオットが頷くが、正直に簡潔すぎて意味がよく分からない。


「俺も魔王討伐に同行する。」

「心配して来てくれたのか?嬉しいなぁ!お前が付いて来てくれたら俺も心強いよ!!」


 無口無表情だけど俺のことを心配して来てくれるなんて、やっぱ持つべき者は親友だな!


「・・・まあ、そう言う(思い込みが激しくて騙され易い)とこが心配なんだがな。」

「?どういうとこだ?」


 エリオットの言いたいことがさっぱり分からない。

 首を傾げているとため息を吐かれた。



 ちなみに、王子達には叱られた。

 どうやらあの商人は怪しい行動をとっていた様で二人は疑っていたみたいだ。

 確かに忠告はされたが、そんなに怪しかっただろうか?実際盗賊だったけど。





 そして、エリオットを加えての四人で旅をすることになった。

 途中、布教のため神殿の無い小さな街や集落を転々と渡り歩いていたアルコと出会う。

 彼とも仲間になる時色々とあったけれどこの魔王討伐という殺伐とした旅に同行してくれたことが申し訳ないとともに嬉しかった。


 あ、それとアルコが来てくれて日々の食事がより美味しくなった。

 今までこの四人の中で料理が出来るのは俺だけだったんだけど、いつも微妙な顔をして食べていた皆がアルコの料理を食べて感動していた。

 確かにアルコの料理は美味しいけどそれはちょっと失礼なんじゃないかな?


 剣士と魔術師、神官というよくある勇者パーティが出来上がりこの五人で旅をすることになった。











 そして、この旅にまた新たな仲間が加わった。



 それはとても偶然で唐突な出会い。


 フィーアと出逢ったのは、ミュールズと言う隣国との貿易が盛んな街に着いて間も無くのことだった。

 大通りを歩いていた時だった。店と店との間の少し狭まった脇道から言い争う声が聞こえてきたのは。

 数人の男達が少女を取り囲んでいた。その一人が嫌がっている少女の腕を掴んだところを見て思わず助け出していた。


 その少女フィーアは遺跡調査に来ていた連れが一先ず報告書を出す為今日は休みということで、街を観光するため散策していた。その途中で先程囲まれていた男達にぶつかってしまいさっきの状況に陥ってしまったのだとか。

 また絡まれても何なので彼女の連れが居ると言う宿屋まで安全のため送る途中に話してくれた。

 その道中に見知った人を見つけたのだが、なんとその人物が彼女に連れだと言うことには驚いてしまった。


 世界というのは以外と狭いものなんだなぁ。




 その人物エルゼリーゼ・ファウマンは、旅の仲間であり親友のエリオットの姉で彼女が卒業してから会う機会が無くご無沙汰だったのだがまさかこんな所で会うとは思っても見なかった。

 どうやら仕事で来ていたようだ。遺跡調査のために各地を旅しているのだとか。

 その途中でフィーアとは知り合い一緒に旅をするようになったみたいだ。


 彼女の連れはもう一人いて、彼はグレン・フィンドレイ。二年前に突然退団してしまった元副団長であり俺が騎士に憧れて目指した人の一人だ。勿論総団長ともう一人の副団長にも憧れている人達だ。

 でも、彼は少し特別で俺が小さい頃魔物に襲われそうになった時に助けてくれた王国騎士の人が、当時まだ新米騎士のグレンだった。

 その日から俺は騎士に憧れたんだがどういう訳か勇者として旅をしているんだよな。

 まあ、旅の道中に憧れの人に剣の稽古を見てもらえるのは嬉しいかぎりなんだけど。


 ミュールズでの騒動の後三人が仲間になった。





 元副団長のグレンは当然魔王討伐の旅ではありがたい戦力だ。

 彼が居なかったらと思う場面も少なからずある訳で仲間になってくれてとても助かっている。

 グレンとは初めはただ単に憧れが強かったけど、彼と接していく内に剣の師としてまた旅の仲間として信頼するようになった。



 エルは遺跡調査のついでと言っていたけれど、フィーアや弟のエリオットを心配して(え?エリオットは心配して無いだろって?イヤイヤ、弟なんだから心配してるって←決め付け)ついて来ているんだろう。

 本当エルって優しいよね。

 学園の時も思ったけど、無表情でつり目がちの目が人を見下しているように見えるから誤解を受け易いけど本当は弟思いの優しい人なんだよね。エルと接すればその誤解も解けると思うのに彼女が怖いからと遠巻きにするらしい。エルはいい人なのに勿体無い話だよね。


 彼女が入って一番喜んだのはアルコだった。と言うのも、このメンバーでまともな料理が出来るのがアルコとエルだけだった。

 今まで料理はアルコが一任していたんだが(本当申し訳ない!)エルが入って二人で分担することになった。

 申し訳ないからとエルに一度、今日は俺が料理をすると代わって貰ったのだけどそれから二度と料理に手を出すなと言い渡されてしまった。俺としては美味く出来たと思ったんだけどなぁ。

 まぁ、彼女の料理は少し変わっているがとっても美味しくていいんだけどね。


 彼女は料理の他に宝玉集めでも助かっている。

 宝玉は古代遺跡の奥にあるため、迷路のように複雑な古代遺跡の中を歩く時に助けられている。戦闘に関しては何とも言えないけど、さすが遺跡の調査員なだけあって古代語が読めるので遺跡で迷うことは無かった。

 と言うよりも彼女は元から遺跡の中を知り尽くしている様に、迷い無く進んで行っている様にも見えるんだよな。行き止まりや罠に嵌る事も無かったし。まあ、気のせいだろうけど。


 エルって不思議な人だよな。

 俺が宝玉を必要としてたことも知っていたみたいだし、遺跡内を初めから知っているみたいに迷わない。不思議な事ではあるけど、でも、何でかそんなエルの行動は信じられるっていう可笑しな話。

 別に疑っている訳ではないよ?寧ろ信頼してる。親友の姉だしね。



 そして最後の一人。

 フィーアは何だか聖剣と宝玉に興味があるみたいでちょっと強引について来た。

 正直彼女がこの魔王討伐の旅について来るのには反対だった。

 戦力としても乏しい彼女を守りながら魔王討伐に向かうのはどうかと思った。

 そして、どういう訳か魔王側から狙われてしまったことも不安が増す要因でもあった。


 でも、彼女と接していく内に精神的に助けられることもあった。俺の不安や葛藤、仲間の皆に言いづらく思い悩んでいた時、フィーアはその純粋な心で励ましてくれた。

 だからかな?勇者としてではなく、彼女を守りたいって思うのは。


 最近不思議とフィーアのことをよく考える。

 普段はいつも通り接することが出来るのに、偶に心臓がドキドキと高鳴ることがある。

 なんだろう。

 よく分からないこの気持ち。

 でも、不思議と嫌じゃない。

 いつかこの気持ちが分かる時が来るのだろうか。










 魔王討伐という大変な旅。

 まだまだ道程は遠く、この先辛いことも悲しいこともあるだろう。

 それでも俺は、この八人でなら成し遂げられると思うんだ。

 だから、今はもうこの旅に不安は無いかな。

 


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