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この世界で生き残るために  作者: スタ
一章 前世との決別
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新たな日常

 三話連続投稿です。

 


「さやちゃん、あそぼ!」


 私の手を取って前を歩くのは何時だって貴女。

 引っ越したばかりの私に友達なんているはずも無く、親に言われてなのか知らないけれど、貴女はいつも私を誘ってくれた。

 私の新たな日常に、貴女が居ることが当たり前になった。


 だから貴女が私の大切な親友になるのはすぐだった。






 ***



 親友に殺されて、新たな人生を歩むようになって早三年。


 私、正直驚いてます。

 否、目を見開いた時にシャンデリアがあったからそうなんだろうなとは思いましたよ。

 でも着替え一つに何十着とある服から選ぶとか相手は幼児ですよ?って言いたい。

 ベッドも天蓋付のキングサイズだし。

 私そんなに大きくない、まあそういう意味じゃないのは分かるけど。

 使用人が何十人といるし。

 何をするにも使用人にやらせるのにはちょっとドン引きした。


 いやぁ貴族の子供に生まれ変わるとか、私も吃驚ですよ。

 しかも伯爵なんだって。伯爵ってどれくらい上か知らないけどわりと位が高かったよね?

 正直そんなセレブに生まれ変わっても環境の変化についていけないですよ。

 前世庶民ですから。


「おはよう、私のエリーゼ。」


 朝の身支度を終えて食堂へと向かうと、そこにはもう母親であるアンジェリーナ・ファウマン伯爵夫人がいた。


「おはようございます、おかあさま。」


 母に挨拶をし返して、自分も席に着く。

 私が席に着いたタイミングを計ってすぐに食事が目の前に出される。

 色取り取りの豪華な食事。


 おおぅ、今日も豪勢ですね。

 でも正直ちょっと量が多い。

 否でも外国の料理って量が多かった気が。

 日本人が小食なだけなのかな。


 料理が並べ終り、私は早速目の前の食事に舌鼓を打つ。

 朝食を食べ終えて一息ついていると、母が私に笑顔を向けながら話しかけてきた。


「エリーゼももう三歳になるし、そろそろお勉強を始めようと思って家庭教師を雇うことにしたの。」

「かていきょうし、ですか?」

「ええ。」


 三歳で家庭教師って。

 一般的な三歳は物心つく頃ですよ。

 まあ私、すでに人格形成されてますけどね。

 英才教育ってやつですか。


「いつくるのですか?」

「今日の昼よ。」


 早っ!!

 そういうことはもっと早めに言ってくださいよ!!


「今日は顔合わせだけだけど、淑女たるもの人前に出るのですからちゃんとするのよ?」

「はい。」


 そう言って言うことを言って満足したのか、母は笑顔で食堂から出て行った。

 私は突然の母の言葉に唖然とするも、毎日の日課になりつつある散歩に出かけることにした。





 散歩と言っても三歳児なので行動できる範囲は限られてくる。

 危ない場所はもちろん屋敷の外は論外だ。

 それでも家自体が広いので探検するのには困らなかった。

 今日はどんなところを探検してみようかと庭へ出れる渡り廊下を歩いていると、前方の角から人の話し声が聞こえてきた。

 最初は内容も聞き取ることも出来なかった為、そのまま近づいて角を曲がろうとしたけれど段々と会話の内容が分かって来ると私の足はピタリと止まる。

 その内容があまりにも気まずい物だったから。


「ねえ、旦那様っていつお嬢様と会われるのかしら?」

「さあ、奥様ともども毛嫌いされているからねぇ。」


 あぁ、うん、私が生まれて三年間一度も会いに来ることの無かった父親に薄々そんなことじゃないかと気がついてはいましたよ。

 でも忙しくて会えないと言うこともあるかもしれないと、希望を捨てきれなかった。

 それでも希望を打ち捨てるかのように一年前から母の荒れようが激しくなった。

 だから諦めてはいたけれど、それでも父が私を嫌いだと聞いてしまうと胸が痛む。

 たとえ一度もあっていない父親でも。


「旦那様ってホント奥様嫌いよねぇ。」

「まあ、典型的な貴族のご令嬢様だからね。旦那様とは相性が合わないでしょ。」

「よくお嬢様が生まれたわよね。」


 あ、それは私も思うかも。


「貴族の責務とかじゃない?ほら、後継ぎの話があるのだし。」


 なるほど。


「でも、お嬢様は女だから爵位は継げないんじゃ?」

「それが女でも爵位を継げるようになったらしいのよ。ほら、二大公爵の一つ、フロックハート公が今は女公爵って話じゃない。」


 へえ~そうなんだ。


「じゃあお嬢様が爵位を継ぐのかしら?」

「さぁ、旦那様がお嬢様に爵位を継がせるなんて思えないけど。」


 たしかに。


「確かにねぇ。お嬢様もお可哀想に。」

「でも、正直お嬢様って苦手なのよねぇ、私。」


 ・・・・・・。


「あぁ、笑わないものね。奥様とは違って大人しいのはいいんだけれど、笑いも泣きもしないから正直不気味なのよねぇ。」

「そうそう、旦那様も表情の乏しい方だけれど、お嬢様は大人しすぎて何を考えてるのか分からないのよね。ホント人形みたいで気持ちい悪い。」


 き、気持ち悪い!?

 確かにこの身体になってから表情筋が壊死したかのように働かなくなったけど、今この状況でも全く表情が動かないけれども!!

 酷くない!?


「お嬢様って旦那様のこと知っても泣かなさそうよねぇ。」


 まぁ、泣かなかったけれども。


「私、お嬢様とはあまり関わりたくないのよね。」

「まぁね。奥様は溺愛されてるけど、旦那様は毛嫌いされてるみたいだし。お嬢様本人は何を考えてるのかさっぱりだしね。正直どう扱っていいのか分からないのよね。」

「これで泣いたり笑ったりする子供ならまだ可愛げがあるんだけどねぇ。」


 可愛げのない子供で悪かったですね。


 それから二人の使用人は他愛もない話をしながら、角を曲がらずにまっすぐ通り過ぎて行った。

 暫くは柱の影に身を潜めて立ち尽くしていたが、今は誰とも会いたくなかった為庭へと出ることにした。

 庭にある薔薇園へと向かう。薔薇は背丈が高いので、子供の私が身を潜めるのには丁度良かった。

 屋敷から隠れる様に身を潜ませると深いため息が出た。どうやら緊張していた様だ。


 まさか使用人に苦手意識を持たれていようとは思わなかったな。

 ちょっと、否、だいぶショックかも。

 笑顔の練習、しようかな?

 動きそうになさそうだけど。


 もう一度ため息を吐いて蹲る。

 そうしてじっとしていると、視界の端にチラチラと映るモノに気が付く。

 それは転生してから常に見える様になったものではあった。

 ただ、今日は何だか此方を心配そうに見ている様にも見えた。


 心配してくれるのね。


 心配して私の周りを漂う彼らに少しほっこりした。

 そして、ふと首を傾げる。


 そういえば彼らは何なのかしら?

 幽霊ではないと思うけど。


 空中を漂う彼らは薄い身体をふわふわと漂わせている。偶に消えてしまいそうなほど薄いモノや他よりも濃い身体のモノ居るけれど。

 彼らは前世で言う幽霊にとても似通っていた。空中をふわふわと漂い、後ろが透けてしまっている身体も。傍を漂っているのに見えていないかのように誰も気にしないその反応も。似てはいるけれど、違うと断定できるものが一つあった。

 それが彼らの色だ。彼らは皆総じて緑や青緑といった色をしている。幽霊がそんな緑一色の色をしているなんて聞いたことがない。だから彼らは幽霊ではない。

 なら彼らは何なのか。

 その事に行きついてまた頭を悩ませる。


 う~ん、誰かに聞いてみようか。

 でも誰に?

 使用人?


 そう思うも先程の事がちらつき、そんなことを言ったら余計に遠巻きにされそうな気がして直ぐに却下する。

 次に思い浮かべたのは母だった。

 しかし、根っからの貴族である母が貴族として必要な知識以外(透ける彼らを貴族として知っていて当然とは思えないし)を知っているかと問えば答えはノーだろう。

 やっぱり母親も却下する。


 あっ!そうだ!!

 今日から家庭教師が来るんだっけ。

 突然だったけど、丁度いいからその人に聞いてみよう。

 どんな人が来るのかなぁ。

 ちょっと楽しみ。





 そしてエルゼリーゼの日常に、貴族然とした家庭教師が加わるのだった。









 後日、魔術の授業に彼らの話が出て来た為それとなく先生に聞いてみた。


 彼ら、精霊なんだって。周りの環境によって生まれる姿に影響が起きるらしく、私が見ている者は人型でした。森や未開の地へ行けば、動物や光の塊など様々な形の精霊が居るそうですよ。


 へぇ・・・・・・・・・


 精霊、魔術・・・・・・・・・・・


 って、此処は異世界だったのか!?


 剣や魔法があるファンタジーな世界だったんですね!!

 通りで、守衛さん物騒なもの持ってるなぁって思ってたんですよね!



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




 三歳の今になって気付くとか、気付くの遅すぎですね、私。





 感想等ありましたら遠慮なくしてくれると嬉しいです。

 次回もなるべく早めに投稿頑張ります。

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